Aegis~裏切りに報いる影の正義

中岡 始

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第6幕

大谷の決断

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ラウンジの静かなBGMの中、涼の落ち着いた声が大谷の心をじわりと揺さぶっていた。彼が提案した投資案件の話が、次第に大谷の心に入り込み、強い関心を引き起こしているのが見て取れた。テーブルに手を置き、身を乗り出した大谷の目は、今や真剣そのものだった。

涼が資料に目をやりながら説明を続ける中、大谷は突然、決意に満ちた表情で涼の目をまっすぐに見据えた。そして、少し力を込めた声で言った。

「もしこの投資に3000万円を注ぎ込んだら…リターンはどのくらい期待できますか?」

その言葉に、怜が一瞬だけ驚いた表情を見せたのを大谷は見逃さなかった。涼も一呼吸置き、冷静さを保ちながらもわずかに驚いた風を装って、彼の言葉を受け止めた。

「3000万円ですか…」

涼は、まるで大谷の提案に驚きと尊敬を抱いているかのようにゆっくりと相手を見つめ、ふと口元に冷静な微笑みを浮かべた。そして、声に慎重さをにじませながら、答えた。

「確かに3000万円の投資となると、見込まれるリターンも相当なものになります。過去の実績から言えば、この規模の投資であれば、約6か月後に2倍以上のリターンが得られる可能性が高いと考えています」

涼は数字に具体性を持たせすぎないよう、曖昧さを残しながらも、信憑性が高く聞こえる説明を慎重に行った。その言葉に、大谷の表情が輝き、目の奥には希望と期待がみなぎり始めていた。

「2倍…つまり、3000万円が6か月後には6000万円に…!」

大谷の中で、今まさに大きな夢が形を持っていくような感覚が膨れ上がっていた。怜もそんな大谷を見つめ、にこやかな微笑みを浮かべてうなずいた。

「私も…こうして工藤さんの話を聞けば聞くほど、これがすごい機会なんだって思います」

怜が静かにそう言うと、大谷はその一言に背中を押されるように、さらに涼の言葉に対する信頼を深めた。

ラウンジの静寂が、大谷の決意を包み込んでいた。彼の表情は期待と希望に満ち、目の前に座る涼と怜に対する信頼感が漂っていた。そして、大谷は意を決したように深く息を吸い込み、口を開いた。

「3000万円でお願いします」

はっきりとした声が響き、怜が微笑みながらうなずく。涼も穏やかに大谷を見つめ、「ありがとうございます、大谷さん」と丁寧に礼を述べた。

涼はタブレットに契約書を表示させると、大谷の前にそっと置いた。大谷は一瞬だけ目を輝かせ、その契約書に視線を落とす。涼は大谷が読み進めやすいよう、各項目を丁寧に説明していった。特にリスクに関する部分については慎重に言葉を選びながら、説明を続けた。

「この案件は、これまでの投資よりもリターンが見込める分、多少のリスクも伴います。私どもは最大限のリスク管理をしていますが、念のため、この点もご理解いただきたいのです」

涼の冷静な説明に、大谷は一瞬だけ表情を引き締めたが、すぐに頷いて理解を示した。怜が心配そうに「大谷さん、大丈夫ですか?」と優しく問いかけると、大谷は笑顔を浮かべて答えた。

「もちろんです。怜さんが信頼している工藤さんがここまで説明してくださっているのだから、安心しています」

涼は微笑みを浮かべ、大谷に

「それでは、契約の手続きをお願いいたします」

とタッチペンを差し出した。大谷はペンを受け取り、契約書に目を落としながら、署名欄を確認した。そして、何の迷いもなく自分の名前を記した。その瞬間、大谷の胸には確信が湧き上がり、「この投資が自分の未来を大きく変える」との期待に心が満ちていた。

大谷はペンを置き、涼と怜に向かって深々と頭を下げた。

「本当に、ありがとうございます。このような機会に巡り会えたのも、すべて怜さんのおかげです」

怜は微笑みながら彼の言葉を受け取り、「大谷さんが信じてくださっているからこそ、工藤さんもこの特別な案件を提案してくれたんですよ」と言い添えた。彼女のその一言が、大谷の胸に温かく響き、自己価値をさらに感じさせるものとなった。

契約手続きが完了した後、大谷は涼に翌日の入金手続きについて相談を持ちかけた。

「明日中には入金を完了させるつもりです。手続きについても、不安な点があればご連絡いたします」

涼はうなずき、「ご連絡をいただき次第、すぐに確認を進めますのでご安心ください」と返した。大谷の信頼が揺らがないよう、丁寧で誠実な対応を心がけていた。

会合が終わりに近づくにつれ、怜が微笑みながら「本当におめでとうございます、大谷さん。私もこの投資が大谷さんに素晴らしい未来をもたらしてくれると信じています」と声をかけた。その言葉に、大谷の顔には感謝と喜びがにじみ出ていた。

ラウンジの出口まで見送りに来た涼は、最後に大谷の肩を軽く叩きながら、優しく言った。

「あとはしっかりと見守りますので、何か不安なことがあればいつでもご連絡ください」

大谷は感謝の表情を浮かべ、深々と頭を下げてラウンジを後にした。彼の背中がドアの向こうに消えると、涼と怜は静かに見つめ合い、互いにうなずいて意を通わせた。

次回への準備が整い、彼らは静かにその場を後にした。
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