冴えない経理オッサン、異世界で帳簿を握れば最強だった~俺はただの経理なんだけどな~

中岡 始

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モルディとの会話/新たな旅立ち

王都の夜は静かだった。

戦争が終わり、街には穏やかな空気が流れている。

瓦礫は片付き、焼け跡には新しい建材が積まれ、職人たちが昼間のうちに作業していた跡が残っていた。

商人たちの声が聞こえる。

「これからの王都は、商人の時代だ」

「そうだな。貴族の干渉も減ったし、自由に商売ができる」

「葛城様のおかげだな」

酒場の扉が開き、笑い声がこぼれる。

彼らの会話に耳を傾けながら、葛城は静かに街を歩いた。

「ここも、ようやくまともな国になりそうだな」

モルディが肩の上で尻尾を揺らしながら応じる。

「随分と変わったよな。オッサンが来た頃と比べたら」

「そうだな」

初めてこの街に来た時、葛城は宿代すら払えなかった。

それが今では、王国の財政を立て直し、戦争を終わらせることにまで関わることになった。

思えば随分と遠くまで来たものだと、改めて実感する。

◇◇◇

城門が見えてきた。

もうすぐ、王都を出る。

「それで、オッサン」

モルディがふいに口を開いた。

「結局どこに行くつもりなんだ?」

葛城は歩みを止め、夜空を見上げる。

澄んだ空に、星が瞬いていた。

「さあな」

「おいおい、まだ決めてなかったのかよ」

モルディが呆れたように言う。

「まあ、俺のやることは決まってる」

葛城は軽く笑った。

「経理の力が必要な場所は、どこにでもある」

モルディが溜息をつく。

「結局どこ行ってもやること変わらねえじゃねえか」

「そういう仕事だからな」

葛城は歩を進め、王都の門をくぐる。

「まあ、そろそろ次の数字でも見に行くか」

モルディがしっぽを揺らしながら、その後をついていった。
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