【完結】天使のスプライン

ひなこ

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モノローグその三・カノン

モノローグその三・カノン

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 我が輩はカノンである。

 見た人間からは七色オウムとか極楽鳥ごくらくちょうとか言われるが、地上の生き物とは違うのだ。似ていても鳥とか呼ばないように。どうせそんな事言っても、俺を見たらソッコーそう呼ぶんだろうけどな。

 モネは美保の一件からまだふて寝し続けている。
 熱は下がったが、かなりこたえたようだ。それもそうだろう、クライアントにしてやられたのだから天使の名が泣くというものだ。

 ここは地上とは次元が違うから、何時間とか何日かは測れないがとにかくずっと起きない。初仕事の時は、間に合わないんじゃないかと冷や冷やした。
 何件か経験を積んで、最近ようやく軌道きどうに乗ったかとほっとしたところだったんだが。

 モネはこの部屋で目覚めてすぐに、自分の役割を自覚していた。
 俺のこともどういう位置なのかを漠然ばくぜんと把握していて、今まで困るような質問をされたことはない。俺が名づけたモネと言う名も、疑問なく受け入れた。

 素直で清らかな性質、異様なまでの正義感と人の誇りを守ろうとする頑なさ。
 彼女はまさに天使と呼ばせるにふさわしい。外見も中身も。時々とぼけたこともやらかすが、実にクライアントの生育、心情をやわらかに受け止める。
 過去の結び目時刻へ誘導ゆうどうするまでのやりとりは、演劇を見ているようなたくみさだ。……ってめすぎか?二十歳ほどの小娘がなぜ、人間の機微きびに詳しいかはこの後を読み進めてもらえばわかるだろう。

 ファイルはなぜ、不十分な記述しかされていないのかって?

 それはこの役をモネに与えた時から決まっている。すべてを書くにはクライアントの多さから言って非効率だし、彼女が自分で探り当てるべき事項だからだ。
 クライアントの選出は赤く光るファイルの中からモネの手によって行っている。それでも膨大ぼうだいな量だ、どの順で選んでいるのかを聞いたら「気分で」と言っていたので、作為性はないようだが。

 清廉潔白せいれんけっぱくなモネからすれば、ただ一度の失敗でもう立ち直れないのだろう。この作業に疑問も感じている。が、こちらとしてはそろそろ復帰してもらわねば困る。
 それくらいで折れてしまうような、軟弱な根性では天使なぞつとまらない。

「おし、ちょっくらやってみっか」
 いつもの口調に戻り、カノンはファイルの群れに近づいた。
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