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2・花坂愛美(はなさか・まなみ)
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「王子さまじゃないと、ここからあなたを連れ出せないんですね?」
「わかってるじゃない?モネちゃん」
ふふ、と笑いながら涙を拭いた。この件についてはもう、モネには手を出せない。
あとは運に頼むしか。
なんてわがままな人。
でも彼女はとても幸せそうで、大画面で見た数倍も美しく見えた。
モネは河合氏に向かって手短かに告げる。
「二十階まで上がったら一番東寄りのA階段を上がって二十四階まで来て下さい。それがこの部屋に一番近くて火が遠いです」
「わかった、ありがとう」
スマホを愛美に返すとドアを開けた。
炎の熱で多少館内の温度も上がっていたが、まだ廊下を移動することはできた。
「さあ、王子が迎えにくるんだから、姫も自分から少しは出て行かないと」
愛美を促す。
「随分とトウの立った姫と王子だけど。ねえ、ここ二十四階じゃなくて二十七階よ。何で二十四階?」
「火が逆の廊下から廻って、階段上部が熱で溶け落ちます。旦那さんがたどり着くまでには間に合うか怪しい。だからそこまで自力で行かないと、二人ともあの世行きですよ」
「二人一緒ならそれもいいかな」
「またひどいこと言って。さっきまで泣いてたのはどこへ?」
「ふふ。ありがと。モネちゃんも元気でね」
大女優として、ではなく一人の女として美しい笑顔を見せた。
「どうぞお幸せに」
モネは丁寧に頭を下げると指で円を描き、カノンと離脱した。
再びモネの部屋。
相変わらず薄暗く、蛍光灯がぼんやりと部屋を照らしている。
ここは本当に静かだ。
時の流れから隔絶されているから。
そしてモネとカノンだけが普通に過ごし、生活している。
その表現は少しちがう。どちらも生き物ではないから。
「かえってきたね」
「俺らは無傷だ。人間はすぐケガするけどな」ふんふん、と尾を振って見せる。
サイレンの音と煙の匂いがしばらく頭に響いたが、そのうち収まった。
「モネ、お前結局何も手出ししなかったのか」
「だって結び目がちょうど目の前にできたんだもの。彼女は仕事も愛も失いたくなかった。だから三つ目しか選びようもなかったのよ」
「どうなったかなあの夫婦。どっちも死んでんじゃねー?」
ファイルが更新されたのか、一瞬光って見えた。
更新後の成り行きは、ファイルを見ればすぐ明らかにはなるが。
「なあ、更新したのに見ないのか?」
「すぐ見るの嫌なんだもん。またいつかね。どうせ見なきゃいけない時はくるし」
「それでもいいけどな。今回俺がわかったのはな。女の誕生日を忘れるとどえらいことになる、ってこと」
「ああ、言ってたね。だからどうしてもその日に来て欲しかったんだね」
「あー怖い怖い」
「私寝るね。疲れたわ」
カノンを無視してモネはソファに横たわる。
すぐに安らかな寝息が聞こえ始めた。
「わかってるじゃない?モネちゃん」
ふふ、と笑いながら涙を拭いた。この件についてはもう、モネには手を出せない。
あとは運に頼むしか。
なんてわがままな人。
でも彼女はとても幸せそうで、大画面で見た数倍も美しく見えた。
モネは河合氏に向かって手短かに告げる。
「二十階まで上がったら一番東寄りのA階段を上がって二十四階まで来て下さい。それがこの部屋に一番近くて火が遠いです」
「わかった、ありがとう」
スマホを愛美に返すとドアを開けた。
炎の熱で多少館内の温度も上がっていたが、まだ廊下を移動することはできた。
「さあ、王子が迎えにくるんだから、姫も自分から少しは出て行かないと」
愛美を促す。
「随分とトウの立った姫と王子だけど。ねえ、ここ二十四階じゃなくて二十七階よ。何で二十四階?」
「火が逆の廊下から廻って、階段上部が熱で溶け落ちます。旦那さんがたどり着くまでには間に合うか怪しい。だからそこまで自力で行かないと、二人ともあの世行きですよ」
「二人一緒ならそれもいいかな」
「またひどいこと言って。さっきまで泣いてたのはどこへ?」
「ふふ。ありがと。モネちゃんも元気でね」
大女優として、ではなく一人の女として美しい笑顔を見せた。
「どうぞお幸せに」
モネは丁寧に頭を下げると指で円を描き、カノンと離脱した。
再びモネの部屋。
相変わらず薄暗く、蛍光灯がぼんやりと部屋を照らしている。
ここは本当に静かだ。
時の流れから隔絶されているから。
そしてモネとカノンだけが普通に過ごし、生活している。
その表現は少しちがう。どちらも生き物ではないから。
「かえってきたね」
「俺らは無傷だ。人間はすぐケガするけどな」ふんふん、と尾を振って見せる。
サイレンの音と煙の匂いがしばらく頭に響いたが、そのうち収まった。
「モネ、お前結局何も手出ししなかったのか」
「だって結び目がちょうど目の前にできたんだもの。彼女は仕事も愛も失いたくなかった。だから三つ目しか選びようもなかったのよ」
「どうなったかなあの夫婦。どっちも死んでんじゃねー?」
ファイルが更新されたのか、一瞬光って見えた。
更新後の成り行きは、ファイルを見ればすぐ明らかにはなるが。
「なあ、更新したのに見ないのか?」
「すぐ見るの嫌なんだもん。またいつかね。どうせ見なきゃいけない時はくるし」
「それでもいいけどな。今回俺がわかったのはな。女の誕生日を忘れるとどえらいことになる、ってこと」
「ああ、言ってたね。だからどうしてもその日に来て欲しかったんだね」
「あー怖い怖い」
「私寝るね。疲れたわ」
カノンを無視してモネはソファに横たわる。
すぐに安らかな寝息が聞こえ始めた。
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