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プロポーズは突然に

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「この前のドラマに出てた…誰だっけ。
浜栗旬!かっこよくない!?」
「なに言ってんの、私は紙木くん一筋なんだって!」
25歳彼氏無しでミーハー女の私、川谷紗綾(かわたにさや)と、親友と言うべきか、腐れ縁というか…仲の良い田島香苗(たじまかなえ)は、今日もこんな話で呑んでいた。
好きな俳優の話とか、どんな顔が好きかとか、バカみたいにおんなじ話を延々と続けられる自分達は凄いと思う。うん。

正直、恋愛なんて興味無かった。
カッコいいと思っても、それが恋愛に発展することは無かったし、通っていたのは中学からずっと女子高。まず出会いがなかった。
そんな私の人生観が変わったのは、あの日のプロポーズがあったから。
これからする話は、決して私の妄想の世界ではなく、事実なのである。






香苗と別れた後、私は渋谷のセンター街をうろうろしていた。
さっきの話もあって、どこかにイケメン落ちてないかなーとか、テレビの取材で芸能人いないかなーとか、そんなことを必死に考えていた。
若干酔っていて、足取りがフラフラしていた。
もう早く帰ろう。お風呂入って寝よう。

その時だ。私が向こうから走ってくる、どストライクのイケメンを見つけたのは!!!
私は妄想を現実にする不思議な力があるのかとまで思った。
そのイケメンは、走ってくるなり私の前で止まり、ひざまづいて、私の手を取った。
そして、彼は言った。

『初めまして、一般女性。結婚してください!!!』

私は一瞬心臓が止まった。初対面でプロポーズ?しかも理想通りのイケメン?
ありえない。
あのとき、私は何を考えていたのだろうか。
とっさのことに驚いたのか、私の口からは
「はい…」という言葉が、はっきりと出ていた。
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