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第10話 どこにでもある身近な死
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「アタシの顔のタトゥーって…。なんなの?」
見目麗しい女騎士の首元に奪った短刀を押し付け、甘く冷淡に質問を投げる。
実戦経験が少ないからか、クエーリ表情が恐怖で歪む。だが、それはほんの一瞬の事であり、すぐに敵意を秘めた騎士の顔に戻る。当然ながらこの時点で利夫に殺意はない。
意味のない殺人は無法者のする事であり、法の名のもとに悪を裁いてきた利夫の流儀に合わないからだ。
(…この子、なかなかやるじゃない)
絶対絶命の女が死への恐怖に打ち勝ち、感心してしまう。職業柄、どんな人間なのかを知る為に一通り眺めるとクエーリの年齢が20未満ぐらいな事がすぐに分かった。
肌もきめ細やかで、何より白い。女性らしさを保つために入念に手入れされたであろう髪も短いが眩しいぐらい輝き、大きく見える鎧の下はかなり華奢な体つきをしている。純粋に羨ましくなる女らしい体つきだ。
「…ふざけた質問だな。お前は、意味も知らずに顔にタトゥーを彫ったのか?。だとしたら傑作だ」
「どういう意味かしら?」
嫌な予感を感じさせる不敵な物言いに力が籠る。嘲笑を含んだ女騎士から帰ってきた答えは、想像を絶する物だった。
「【顔にタトゥーを彫る】。それは即ち、貴様が【魔女】である事の証明だ。かつて英雄大戦で天使と袂を分けたとされる魔女の証明が、顔にタトゥーを彫る事だった。知っているだろう?。意味も分からず顔に彫る馬鹿なんて見た事も無い」
魔女。その単語を聞いた瞬間、利夫の心に大きな動揺の波が生まれる。だが表には出さず、あくまで余裕な態度で思考にふける。この世界には魔女と呼ばれる存在がいる。しかし偶然だろうか。生前、魔女の肩書を持っていた利夫は女騎士の口から魔女という単語が出るとは思わなかった。魔女呼ばわりに懐かしさを感じながら、再び同じ質問をする。
「アタシが、魔女である証拠がこの顔のタトゥーなのね?」
「さっきから何を言っている?。貴様は図書館から魔女の歴史を盗み、人の住めないこの森に逃げた。ただの悍ましい犯罪者で怪物だっ!?」
罵倒が言い終わると同時にクエーリの口の中に鋭い指がサッと侵入し、舌を強く掴みあげた。クエーリの身体に電流が流れるような痛みが走り、今度は苦痛で顔を歪める。振り払おうとしても痛みが増すだけであり、利夫は感動で震えた声を垂れ流した。
「教えてくれてありがとう。クエーリちゃん。アタシは、魔女として生きるのね」
「はぐっ!?」
クエーリの舌を掴んだまま、にっこりと微笑みかける。リブラスの顔を潰そうとした時と同じ笑顔で。悪魔とも、天使とも言える笑みは人間でも非人間でも感じるのは同じらしく、クエーリは背筋に走る悪寒と未知の恐怖に体を強張らせる。そして利夫は理解した。自分がどんな特典で、どんな職業で生きていくのかを。湧き上がるのは恐怖でも、生前の怒りでも無い。魔女にしか知り得ない知識と能力を活かした、異世界生活の始まりを告げる歓喜だ。
「じゃあもう一つ教えて頂戴な。あのリーチ隊長って、何者?」
「あ、あにっ?」
「あの隊長サンすっごいアタシ好みなんだけど、あんたもしかして彼女さんだったりする?。しちゃう?」
「あ、あはなころひふな」
舌を掴まれ喋れないクエーリが必死に否定する。利夫はその様子を見つめて無言で手を離すと、クエーリは勢いよく咳き込み睨み返した。くっ殺フェイスで睨まれた所で、海千山千の修羅場を潜り抜けて来たオカマには意味を成さない。
「いいこと?。アタシは殺しは嫌いよ。本を盗んだのは事実だけど、わざとじゃないの。それでもアタシを追いかけるのなら、今ここであなたの頸動脈を離婚させるわ。どうする?」
「だ、誰が魔女なんかに屈するかっ…!」
「そう。ちなみに聞きたいんだけど、魔女ってそんなに悪い存在なの?」
これは聞いておかなければならない質問だ。生前の利夫は、【魔女】として国家を守る精鋭として身を粉にして働いてきた。今更誰かに自慢したいとは思わないが、すくなくとも薬は誰かの役に立つ代物だった。0課の同僚にも緊急対応時の薬を常備させておいたおかげで危機を脱した事は何度もあったし、悪であろうと善であろうと、薬を扱える人材は一概に悪とは言えない筈だ。だが…。
「バカを言うな。魔女は権能を行使し、人間の心を惑わし、揺さぶり、悪に堕とさせる。魔女は欲望を司る悪魔信奉であり、故に悪魔の囁きの象徴としてお伽噺で語られる様になったのだ!」
お世辞にも、利夫が知る魔女の肩書きはプラスなイメージを持たれる物ではなかった。魔女を語るクエーリの瞳に宿るのは嫌悪と侮蔑であり、死への恐怖は消え去っている。
(悪堕ち…。悪魔信奉…。ダメね、情報が少なすぎるわ)
話した内容はどれもこれもピンと来ない単語ばかり。とにかく善か悪かで決めるのならば、利夫は間違いなく【悪寄り】の存在として転生した事になるだろう。
「答えは、この本に載ってそうね」
「くだばれ、魔女めっ…!」
「アタシのディープキスで黙らせてほしくないのなら黙ってて頂戴」
「…っ!!」
クエーリは、魔女にキスされそうという事実だけで吐き気を催すほどの屈辱を感じたが、同時に得体の知れない不安感を感じ取った。魔女は一体何者なのか。この魔女はどこまで知っているのか。そもそもこの魔女は何を目的にしているのか。何もかもが分からない。理由も、動機も、目的が不明なのはお互い様。利夫に至っては転生初日の数時間未満で窃盗と殺人未遂を犯してしまっている上に、判明したのは転生特典で魔女になったくらい。
天国に行く為には善行を積む必要がある。しかし、この状況はどう考えても悪手にしかならない。
静寂の中。思考を巡らせる利夫と、万力の様な膂力で抑えつけられて身動きの取れないクエーリ。一見すると利夫の方が有利に思えるが、実際は一進一退の攻防を繰り広げてている。騒ぎを起こさず、なんとか場を収めたいオカマと、この状況を打開したい女騎士。魔女の方が自分より強いと本能で確信したクエーリの次一手は、この世界が優しくない現実を突きつける非情な物だった。
「仲間の情報を吐いて魔女の手にかかるぐらいなら、私は死を選ぶ」
「随分軽率に死を語るのね。死んだら何も残らないわよ。誰かの記憶には残るけど」
「そうだな。だが、純潔を奪われるよりマシだ」
「だったらどうなさる気なのかしら?。アタシは人様の死に興奮する変態じゃないんだけど」
「言っていろ。仲間が私の仇を打つ」
ゴリッと何かを噛んだ音がした。音の出所はクエーリは口内。この流れで、くっ殺女騎士が噛むのは一つしかない。
「あんたっ、まさか…!?」
ほんの数秒だった。異変はすぐに起き、口の端から一筋の鮮血を流しガタガタと痙攣し始めたクエーリの姿。ここで初めて明確な焦りを覚えた利夫が行動を起こした時点で、もう手遅れだった。
「このおバカっ!。なんて事をッ!!」
他の騎士団に聞かれてしまうかも知れないが、反射的に利夫は叫んでいた。苦しそうに痙攣しながらも、勝ち逃げするクエーリは笑っていた。薄気味悪い笑みで尋問していた魔女の表情が一気に青ざめ、困惑する姿が滑稽に見えたのだろう。
「ふふ…。なんだ、魔女にしては、ずいぶん…にんげん、く、さ、いな…っ」
「いやん!臭くないわよアタシ!!」
それを最期に、クエーリはがくりと脱力し二度と動かなくなった。首筋に指を当てて生死を確認したが、脈は完全に止まっていた。女騎士の自決である。
(なんてこと…。この世界にも青酸カリがあると言うの?)
死体に慣れている利夫は彼女の口元を広げ、死に至らしめた薬物の匂いを確認する。だが青酸カリ特有のアーモンド臭は無く、むしろ砂糖の様な甘みを含んだ匂いがした。それは青酸カリではなく、未知の薬品である可能性が高い。
(恐らくこの世界特有の毒ね…。情報漏洩を防ぐ為の自決用に配備されてたのかしら)
死ぬ必要は絶対に無かったはずだ。利夫は事実を確認し、必要な情報を教えてくれれば気絶させて森の奥へと身を隠し、やり過ごすつもりだった。だがそれでも、彼女は忌々しい魔女へ仲間の情報を漏らす事なく命を絶つ道を選んだのだ。見事な騎士道だ。もっと早くに事情を説明していれば、死ぬ必要は無かった。そう思えば、心に残るのは後悔だけ。
「いけないわね。死んだら終わりだなんて、言われたばかりなのに」
クエーリの魂がどこに行くのかは分からないが、弔わなければならない。助かったかも知れない命を、目の前で終わらせてしまった。それが利夫の心に重くのしかかっていた。
「おやすみなさい、クエーリちゃん。タイプじゃないけど、嫌いじゃ無かったわ」
胸の上で手を組ませ、綺麗な体勢まま地面に寝かせた。彼女を探す青年騎士ジャンが遺体を見つけ、きっと名誉の死を遂げたとして丁重に弔ってくれるだろう。弔いの意志は向けるが、利夫には彼女を最期まで弔う資格が無い。
今するべきなのは、魔女が一体どんな存在であるのか。どう生きていくべきなのかを知る事だ。霧の深くなる道を進みながらも、利夫は森の奥へと姿を消していく。完全に姿が見えなくなる寸前で青年騎士の悲鳴にも似た声が聞こえた気がしたが、魔女と呼ばれた転生者は振り返らなかった。
見目麗しい女騎士の首元に奪った短刀を押し付け、甘く冷淡に質問を投げる。
実戦経験が少ないからか、クエーリ表情が恐怖で歪む。だが、それはほんの一瞬の事であり、すぐに敵意を秘めた騎士の顔に戻る。当然ながらこの時点で利夫に殺意はない。
意味のない殺人は無法者のする事であり、法の名のもとに悪を裁いてきた利夫の流儀に合わないからだ。
(…この子、なかなかやるじゃない)
絶対絶命の女が死への恐怖に打ち勝ち、感心してしまう。職業柄、どんな人間なのかを知る為に一通り眺めるとクエーリの年齢が20未満ぐらいな事がすぐに分かった。
肌もきめ細やかで、何より白い。女性らしさを保つために入念に手入れされたであろう髪も短いが眩しいぐらい輝き、大きく見える鎧の下はかなり華奢な体つきをしている。純粋に羨ましくなる女らしい体つきだ。
「…ふざけた質問だな。お前は、意味も知らずに顔にタトゥーを彫ったのか?。だとしたら傑作だ」
「どういう意味かしら?」
嫌な予感を感じさせる不敵な物言いに力が籠る。嘲笑を含んだ女騎士から帰ってきた答えは、想像を絶する物だった。
「【顔にタトゥーを彫る】。それは即ち、貴様が【魔女】である事の証明だ。かつて英雄大戦で天使と袂を分けたとされる魔女の証明が、顔にタトゥーを彫る事だった。知っているだろう?。意味も分からず顔に彫る馬鹿なんて見た事も無い」
魔女。その単語を聞いた瞬間、利夫の心に大きな動揺の波が生まれる。だが表には出さず、あくまで余裕な態度で思考にふける。この世界には魔女と呼ばれる存在がいる。しかし偶然だろうか。生前、魔女の肩書を持っていた利夫は女騎士の口から魔女という単語が出るとは思わなかった。魔女呼ばわりに懐かしさを感じながら、再び同じ質問をする。
「アタシが、魔女である証拠がこの顔のタトゥーなのね?」
「さっきから何を言っている?。貴様は図書館から魔女の歴史を盗み、人の住めないこの森に逃げた。ただの悍ましい犯罪者で怪物だっ!?」
罵倒が言い終わると同時にクエーリの口の中に鋭い指がサッと侵入し、舌を強く掴みあげた。クエーリの身体に電流が流れるような痛みが走り、今度は苦痛で顔を歪める。振り払おうとしても痛みが増すだけであり、利夫は感動で震えた声を垂れ流した。
「教えてくれてありがとう。クエーリちゃん。アタシは、魔女として生きるのね」
「はぐっ!?」
クエーリの舌を掴んだまま、にっこりと微笑みかける。リブラスの顔を潰そうとした時と同じ笑顔で。悪魔とも、天使とも言える笑みは人間でも非人間でも感じるのは同じらしく、クエーリは背筋に走る悪寒と未知の恐怖に体を強張らせる。そして利夫は理解した。自分がどんな特典で、どんな職業で生きていくのかを。湧き上がるのは恐怖でも、生前の怒りでも無い。魔女にしか知り得ない知識と能力を活かした、異世界生活の始まりを告げる歓喜だ。
「じゃあもう一つ教えて頂戴な。あのリーチ隊長って、何者?」
「あ、あにっ?」
「あの隊長サンすっごいアタシ好みなんだけど、あんたもしかして彼女さんだったりする?。しちゃう?」
「あ、あはなころひふな」
舌を掴まれ喋れないクエーリが必死に否定する。利夫はその様子を見つめて無言で手を離すと、クエーリは勢いよく咳き込み睨み返した。くっ殺フェイスで睨まれた所で、海千山千の修羅場を潜り抜けて来たオカマには意味を成さない。
「いいこと?。アタシは殺しは嫌いよ。本を盗んだのは事実だけど、わざとじゃないの。それでもアタシを追いかけるのなら、今ここであなたの頸動脈を離婚させるわ。どうする?」
「だ、誰が魔女なんかに屈するかっ…!」
「そう。ちなみに聞きたいんだけど、魔女ってそんなに悪い存在なの?」
これは聞いておかなければならない質問だ。生前の利夫は、【魔女】として国家を守る精鋭として身を粉にして働いてきた。今更誰かに自慢したいとは思わないが、すくなくとも薬は誰かの役に立つ代物だった。0課の同僚にも緊急対応時の薬を常備させておいたおかげで危機を脱した事は何度もあったし、悪であろうと善であろうと、薬を扱える人材は一概に悪とは言えない筈だ。だが…。
「バカを言うな。魔女は権能を行使し、人間の心を惑わし、揺さぶり、悪に堕とさせる。魔女は欲望を司る悪魔信奉であり、故に悪魔の囁きの象徴としてお伽噺で語られる様になったのだ!」
お世辞にも、利夫が知る魔女の肩書きはプラスなイメージを持たれる物ではなかった。魔女を語るクエーリの瞳に宿るのは嫌悪と侮蔑であり、死への恐怖は消え去っている。
(悪堕ち…。悪魔信奉…。ダメね、情報が少なすぎるわ)
話した内容はどれもこれもピンと来ない単語ばかり。とにかく善か悪かで決めるのならば、利夫は間違いなく【悪寄り】の存在として転生した事になるだろう。
「答えは、この本に載ってそうね」
「くだばれ、魔女めっ…!」
「アタシのディープキスで黙らせてほしくないのなら黙ってて頂戴」
「…っ!!」
クエーリは、魔女にキスされそうという事実だけで吐き気を催すほどの屈辱を感じたが、同時に得体の知れない不安感を感じ取った。魔女は一体何者なのか。この魔女はどこまで知っているのか。そもそもこの魔女は何を目的にしているのか。何もかもが分からない。理由も、動機も、目的が不明なのはお互い様。利夫に至っては転生初日の数時間未満で窃盗と殺人未遂を犯してしまっている上に、判明したのは転生特典で魔女になったくらい。
天国に行く為には善行を積む必要がある。しかし、この状況はどう考えても悪手にしかならない。
静寂の中。思考を巡らせる利夫と、万力の様な膂力で抑えつけられて身動きの取れないクエーリ。一見すると利夫の方が有利に思えるが、実際は一進一退の攻防を繰り広げてている。騒ぎを起こさず、なんとか場を収めたいオカマと、この状況を打開したい女騎士。魔女の方が自分より強いと本能で確信したクエーリの次一手は、この世界が優しくない現実を突きつける非情な物だった。
「仲間の情報を吐いて魔女の手にかかるぐらいなら、私は死を選ぶ」
「随分軽率に死を語るのね。死んだら何も残らないわよ。誰かの記憶には残るけど」
「そうだな。だが、純潔を奪われるよりマシだ」
「だったらどうなさる気なのかしら?。アタシは人様の死に興奮する変態じゃないんだけど」
「言っていろ。仲間が私の仇を打つ」
ゴリッと何かを噛んだ音がした。音の出所はクエーリは口内。この流れで、くっ殺女騎士が噛むのは一つしかない。
「あんたっ、まさか…!?」
ほんの数秒だった。異変はすぐに起き、口の端から一筋の鮮血を流しガタガタと痙攣し始めたクエーリの姿。ここで初めて明確な焦りを覚えた利夫が行動を起こした時点で、もう手遅れだった。
「このおバカっ!。なんて事をッ!!」
他の騎士団に聞かれてしまうかも知れないが、反射的に利夫は叫んでいた。苦しそうに痙攣しながらも、勝ち逃げするクエーリは笑っていた。薄気味悪い笑みで尋問していた魔女の表情が一気に青ざめ、困惑する姿が滑稽に見えたのだろう。
「ふふ…。なんだ、魔女にしては、ずいぶん…にんげん、く、さ、いな…っ」
「いやん!臭くないわよアタシ!!」
それを最期に、クエーリはがくりと脱力し二度と動かなくなった。首筋に指を当てて生死を確認したが、脈は完全に止まっていた。女騎士の自決である。
(なんてこと…。この世界にも青酸カリがあると言うの?)
死体に慣れている利夫は彼女の口元を広げ、死に至らしめた薬物の匂いを確認する。だが青酸カリ特有のアーモンド臭は無く、むしろ砂糖の様な甘みを含んだ匂いがした。それは青酸カリではなく、未知の薬品である可能性が高い。
(恐らくこの世界特有の毒ね…。情報漏洩を防ぐ為の自決用に配備されてたのかしら)
死ぬ必要は絶対に無かったはずだ。利夫は事実を確認し、必要な情報を教えてくれれば気絶させて森の奥へと身を隠し、やり過ごすつもりだった。だがそれでも、彼女は忌々しい魔女へ仲間の情報を漏らす事なく命を絶つ道を選んだのだ。見事な騎士道だ。もっと早くに事情を説明していれば、死ぬ必要は無かった。そう思えば、心に残るのは後悔だけ。
「いけないわね。死んだら終わりだなんて、言われたばかりなのに」
クエーリの魂がどこに行くのかは分からないが、弔わなければならない。助かったかも知れない命を、目の前で終わらせてしまった。それが利夫の心に重くのしかかっていた。
「おやすみなさい、クエーリちゃん。タイプじゃないけど、嫌いじゃ無かったわ」
胸の上で手を組ませ、綺麗な体勢まま地面に寝かせた。彼女を探す青年騎士ジャンが遺体を見つけ、きっと名誉の死を遂げたとして丁重に弔ってくれるだろう。弔いの意志は向けるが、利夫には彼女を最期まで弔う資格が無い。
今するべきなのは、魔女が一体どんな存在であるのか。どう生きていくべきなのかを知る事だ。霧の深くなる道を進みながらも、利夫は森の奥へと姿を消していく。完全に姿が見えなくなる寸前で青年騎士の悲鳴にも似た声が聞こえた気がしたが、魔女と呼ばれた転生者は振り返らなかった。
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