BLオカマの異世界『推し事』日記~推しを成り上がらせる魔女の物語~

指圧童子

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第24話 ゴブリン砦のママ爆誕

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 翌朝、目覚めたリオは仲間になったアーチャーゴブリンのロージーと共に部隊を作り上げることにした。人に使っても害しかない違法薬物が魔物の知能を上げ、支配下に置ける最強のアイテムだと判明したおかげでやりたい事がたくさんできた。

「ここだ、ママ。腕利きの連中が群がってんぜ」
「あらぁ、すっごく不衛生な場所ね。保健所の職員が監査に来たら悲鳴上げて逃げちゃいそう」

 大量のオロスコの粉をリュックに敷き詰めてやってきたのは、森の南方に位置する通称『ゴブリン砦』。視界の悪い森林を歩き、湿地帯の奥を抜けた先にある宗教戦争時の砦跡地をゴブリン達が占領して作られた住み処だ。30匹近いゴブリンの群れが役割分担を決めて生活しているらしく、森に迷い込んで捕まった冒険者や人間はここに運ばれ、男は残虐な遊戯の玩具にされて最後は肉を貪られる。女はゴブリンを生むための肉袋として長い時間をかけて凌辱され、抵抗すれば火で炙られたり耳を削がれたりし、ロージーはここの砦の一員だという。

「んねぇ、あの壁にぶら下がってるのって何?」
「オイラ達に捕まった人間の死体さ。助けに来た奴も、襲われた奴らもいるけどな。ギハハ!」
 
 砦自体は人の気配が全くしない。代わりにロージーと同じ血や獣臭を身に纏った嫌な空気が集まり、砦の周りの空気が歪んで見える。等間隔に設置された弓矢避けの柵には十字に縛られた惨たらしい人間の死体と手つかずで放置された装備品が散らかり、砦の顔であるヴィアンネ教の紋章が掲げられた巨大な旗はへし折られ、折れた先端には人々の信仰をあざ笑うかのように鎧を着た人間が貫かれている。

「てかこんな堂々と真正面から来ちゃっても良いの?。がっつり監視塔から狙われてる気がするんだけど」
「あぁ。でもオイラがいるから安心さ。おーい!」

 砦の門前まで来ると、ロージーは大声を挙げて手を振った。監視塔でボウガンを構えていたゴブリンは不思議そうに首を傾げ、下にいるゴブリンに何かを伝えた。しばらくすると砦の重厚な金属の門がギギギと音を立てて開き、ぞろぞろと武装したゴブリン達が姿を現す。数は15体ほど。全員剣と盾。メイスと長槍を装備しており、先頭を歩くのはリオよりも遥かに巨体なずんぐり体形のゴブリン。

「ゲギャア、グルル」
「怪しむなよ、ハイゴブリン。このニンゲンはオイラ達に良いものを持って来てくれたぞ!」

 ハイゴブリン。通常のゴブリンの上位種。純粋な戦闘力の高いゴブリンが成長した形で、肉弾戦がかなり強いと凌辱系ラノベで読んだことがある。ここに来るまでのロージーの話いわく、ゴブリンの世界はとにかく実力主義の弱肉強食社会。強い個体が群れの中でも権力を握り、なんでも好き放題出来るらしい。ハイゴブリンはゴブリン達より上位の存在で、逆らえば群れを追放されたり暴力を振るって同族を殺しても許される。死体は加工されて道具や武器になるか、食事用の肉にされるとか。

「グルァ、ゲギャルゥ?」
「ニンゲンよりももっと美味いモンさ。ほら、ママ。粉を出してくれよ」
「おっけぇ~♪」

 現代社会では考えられない恐怖政治で統率されている。しかしロージーは知能を得てオロスコの魅力とリオへの信頼を知り、オロスコで支配下に置くための営業と通訳を買って出てくれた。夜明けまで単独で乗り込んで殲滅させても良いと企んでいたが、絶対に間違いだった。

(この砦のゴブリン達…。装備の質も数も、初日と昨日の連中とは大違いね。大勢で群れるだけあって、統率もされているわ)

 こちらは2人。向こうは狙撃兵を含めて20近く。砦の前は開けた湿地帯で、遮蔽物は少ない。知能が低く、本能のまま生きるゴブリンの群れが襲ってきたら無事では済まない。穏便に話が進みそうなのはロージーの干渉とハイゴブリンが指示を出していないおかげ。ロージーがいきなり裏切り、襲ってくることがあっても対策はしてきている。昨日使った閃光手榴弾を錬金し忍ばせて、視界を遮る煙玉と大きな音を出す爆音玉も手首辺りに仕込んである。

「はい。どぉぞ♪」
「……?」
「中身を出して舐めてみな。さいっこうにクルぜ?」

 ハイゴブリンは小瓶を受け取り、中身を口に含んだ。途端に目を細め、舌鼓を打つ。後ろで眺めていたゴブリン達も警戒していたが、ボス的存在のハイゴブリンが美味しそうに粉を口にするのを見て羨ましそうな眼差しを向ける。

「ちゃんと皆の分はあるから安心してねー♪」
「グルル、グゲギャア!」
「ギゲゲゲゲ!」
「グボっ、グヒヒっ♪」
「はいはい、一列に並んでね~」

 ロージーの営業トークと、ハイゴブリンの幸せそうな顔には抜群の影響力がある。ゴブリン達は指示通り一列で並び、小瓶を受け取ると熱心に粉を食べていく。見張り台のゴブリンも上から降りてきて、中にいる残党もわらわらと釣られて出て来た。

「あら、結構集まってくれたわねぇ~♪」
「ウキャッ!?」
「ウゲェ、ウゲゲ!」
「ギィ、ガァ!ギィ!!」
「はいはい、落ち着いて。慌てなくてもまだまだいっぱいあるからぁ~」

 ロージーも一緒に配り、大量の粉を捌いていく。十分足らずで砦のゴブリン達は全員眠りに落ち、幸せそうな表情を浮かべて寝転がる。ロージーの話ではハイゴブリンでも酒や睡眠薬は効くらしい。ゴブリンを纏め上げる存在なので耐性でもあるのかと思っていたが、どうやら単純に個体差の問題だったようだ。そして起き上がれば、あとはロージーと同じ方法でスカウトをする。
 
 もちろん、全員の答えはイエス。

「オイラ達はあんたに着いていくぜ、ママ!」
「やっぱりあんたもオイラなのね」
「当り前さ。ゴブリンでオイラじゃない奴なんて、村八分にされても文句言えねぇよ。なぁお前ら!」
「そーだそーだ!」
「オイラ達はオイラ達だ!」
「オイラこそオイラ達がゴブリンである証明だ!」
「オイラ!オイラ!オイラ!」
「まぁ頭がおかしくなりそ♪」

 こうしてリオは30前後のゴブリン部隊を配下に置くことに成功し、拠点も手に入れた。

(出だしとしては順調ね。ただヒビキちゃんと逃げたメギナちゃんについては不安が残るわ…。兵力を確保しても街中でゴブリンがいれば怪しまれちゃうし)

 懸念事項は多くあるが、生存率を上げる為の手段の多くはここにある。砦の中は調理場や鍛冶場。射撃場に食糧庫まであり、中途半端に耕された田園まで残っていた。

「それじゃあみんな~、オカマのお話聞いてくれるかしら~?」

 ゴブリン達を招集し、リオは当面この砦を拠点に活動する事。畑を耕し、食物を作ること。そして清掃作業を全員で分担する旨を伝えた。

「いいこと?。清潔さは“信頼”に繋がるのよ。アタシ達がどれだけ強かろうが、汚ければ信用されない。街でウンコ臭い軍団が歩いてたらどう思う?」
「う、うんこはやべぇな…」
「ワンチャンくっさい魔物だと思われて狩られるわよ?」
「ひぇえ…!」

 ざわつくゴブリンたちを手で制しながら、リオは仮面越しに笑みを見せた。

「という訳で、今日からここは清潔の砦にします。さぁて、お掃除タイムよッ!」

 リオがファージャケットの内側から取り出したのは、どろりとした半透明の液体が入った小瓶。ほんのりと薄荷の香りが漂うそれは、洗剤……というにはあまりにも不気味な色をしていた。

「これがアタシの錬金調合で生まれた“泡立つお薬”──異世界の油汚れも、血汚れも、残虐な歴史もキレイサッパリ落としちゃうスグレモノよッ!」
「お、薬……!? 飲むのか!?」
「違うわよおバカ! 飲んだら泡吹いてメシアになるわ!」

 リオは近くにあった木製の桶を引っ張り、汲ませた井戸水に洗剤を数滴。ぐるぐると木の棒でかき混ぜると──

「うわぁぁっ! 泡がぁぁぁぁ!」

 白い泡がぶくぶくと膨れ上がり、モコモコと溢れていく。リオは近くに転がっていた古びたモップを取り上げ、豪快に泡へ突っ込んだ。そしてギュイィッと力強くモップを押しつけ、木目の小屋の壁に滑らせる。こびりついた黒い血痕が瞬く間に剥がれ、板張りの壁が本来の色を取り戻していく。

「見なさい。これが文明の。そして漢女の力よ」
「ひょええええ! すげぇ! 壁が光ってるゥ!」
「ちょ、これマジ!? あの血、ずっと取れなかったやつだろ!?」

 泡が汚れを包み込み、モップがそれを拭い去る。目に見えて変わる床の色。立ち上がる清涼な香り。ゴブリンたちは息を呑み、洗剤に神々しさすら感じていた。

「まずはモップを作るわよ! 木の枝と布をありったけ持ってきてちょうだい!」
「「「アイアイサー!」」」

 キビキビと指示を出すリオの声にゴブリンたちは動き出し、すぐに調合の素材が集まってくる。まだ魔女としてのレベルは低いが、掃除に使う生活用品ぐらいなら簡単に作れるだろう。砦に放置されていたモップを手に、形と質感。それに使われている素材を認識し、頭の中で入念なイメージを作る。

「レッツ・オカマジック!」

 【調合】スキルは任意で発動できるので叫び声は必要ないのだが、リオは調合するたびに何故かいちいちこのフレーズを口にする。漢女マジックの掛け声と共に手にした木の枝と布は掌に吸い込まれるように混ざり合い、ボフン!と白い煙を出して細長いモップとなって生まれ変わる。

「すげーー!ママすげーーー!」
「お世辞は嬉しくなくってよ。さぁどんどん生み出すわよ! モップに雑巾と箒! それとありったけの洗剤を作るからこの砦をピカピカにしておやり!」

 リオは調合スキルを駆使し、次々とモップ・雑巾・ホウキを量産していく。ひとつひとつにリボンをつけたり、持ち手を細工して握りやすくしたりと、どこか妙なこだわりが光っていた。調合しながらもロージーに役割分担を指示し、掃き部隊。雑巾部隊。モップ部隊。そして果実収集部隊に分けて作業を効率化していく。汚れと同居していたゴブリンたちは知性が芽生えたことで清潔感を求めるようになったのか、気づけば「ここも拭いてやるぜ!」「モップって楽器みてぇだな!」と楽しみながら作業をしている。どんどん泡塗れになって綺麗になっていく歴戦の砦。壁も、小屋も、訓練道具も、門も、調理場も綺麗になっていく。洗剤の爽やかな匂いと、ゴブリンの汗と体臭が混ざり合う。リオはこの匂いを嫌いではなかった。

「ママ、とりあえず言われた通り持ってきたけどよ。これどうすんだ?」

 ロージーの指示で近場の果実を採取し、ゴロゴロに入れたバスケットを抱えてやってくる数匹のゴブリンたち。中にはミカンやレモンを彷彿とさせる異世界の果実が入っており、手に取ってとりあえず嗅いでみた。『アイテム鑑定』を使用すると、どうやら日本の果物と同じ柑橘系の果実であると判明し、ナイフで皮を剥いて網目の籠に放り込む。そこにクコの実の殻を混ぜ込んで『調合』を発動すると、オレンジ色と黄色の柑橘系芳香玉が出来上がった。転がる芳香玉を一つ拾い上げると、リオは腰に手を当ててぐるりと周囲を見渡した。

「これをね、あそこ、寝床の近くに一個。あとはトイレと、門の内側にも一個ずつ。匂いは癒し、清潔は秩序、いいわね?」
「ママ、それってどういう意味だ?」
「綺麗な場所じゃないと心が腐るのよ。腐った心で強くなっても、それはただの獣と一緒よ」

 小さく呟くように言ったリオの言葉に、なぜかロージーはまっすぐ頷いていた。たぶん、意味は分かってない。しかしリオの言葉には、妙に説得力があった。

「じゃ、設置しちゃってちょうだい! ついでに寝床はちょっとフカフカにしておくのよ。干し草もあるでしょ?」
「おうっ!」

 慌ただしく走り回るゴブリンたちを横目に、リオはそっと腰を下ろす。そこはかつて大勢の人が死に、拷問され、死体を弄ばれた惨劇の砦だった。しかし今では床も壁もすっかり綺麗になり、獣臭も死臭もしない爽やかな匂いに包まれていく。桶に溜めた水をぶっかけて汚れを落とし、武器や設備に油を差し、下劣で野蛮なゴブリンたちが共同作業で拠点の掃除をする姿は誰に言っても信じないだろう。

「アタシの異世界転生、まずまずの出だしねぇ」

 仮面を外し、頬を指で拭う。

「アダルス、見てる? あんたを殺したゴブリンたちの砦が、スラムの格安物件ぐらいにはマシなおウチになったわよ」

 淡く笑って目を閉じる。砦の空気が変わったのは、日が傾き始めた頃だった。

 床に染み込んでいた血痕は、もう跡形もない。石畳は泡で磨かれ、くすんだ灰色から鈍く光る青灰色に変わっていた。かつて拷問に使われた部屋は壁を洗い、床を張り直し、武具の研磨所に様変わりした。拷問椅子の残骸は薪にされ、今や調理場で肉と果実のスープを煮ている。

 何より違うのは──「匂い」だった。いつも鼻にまとわりついていた腐臭と獣臭は消え、柑橘と草木の芳香が代わりに漂う。砦の奥では、洗った布団を干した寝床が整えられ、干し草の上に並べられた丸太ベッドは、素足でも横になれるほど清潔だ。小屋の窓から差し込む陽の光が、洗いたての床をきらりと照らす。まるで人の温もりが戻ってきたようだった。
 門の裏手には、新たに立て直されたゴミ捨て場と物資倉庫。監視塔には見張り用のゴブリンが配置され、手製の旗がはためいている。かつて人が血を流し、絶望が染み込んだ砦は、今──リオの手で再び「生きる場所」として目を覚ました。

「エクセレンツッ! よくやったわねみんな!」

 仮面越しに笑うリオの声に、汗だくのゴブリンたちが「ママすげぇ!」と歓声を上げる。砦の“再生”は、ただの掃除ではない。それは、人間と恋人・家族関係になってはいけないという寂しい掟から始まる希望の始まりでもあった。

「ここからアタシ達の物語はスタートするのよ! みんな今日は宴をしましょう。アタシ達の物語に乾杯よーーーん!」
「「「「「「ウオオオオオオオオオ!!!」」」」」」

 日が完全に落ち、精霊王の霧が夜気にゆらぐ頃、砦にはかつてないほどの明かりと喧騒が満ちていた。焚き火を囲み、洗い立ての布で作られた即席の旗が風に揺れる。果実スープの香りが砦中に漂い、どこか陽気な空気が流れていた。

「ママー! 歌うぞー!!」
「踊るぞー!!」
「今夜は夜通しバカになろーーー!!」

 その掛け声で、地獄の舞台が始まった。ひとりのゴブリンがモップを逆さに構え、まるでバイオリンのように構えると別のゴブリンがモップの先を火に近づけ燃やし、下手くそなファイヤーダンスを披露する。リズムは完全に狂っていたが、砦のノリは最高だった。

「ギャギャ! オイラは風! 踊るぜぇ!」
「フロアを磨いたモップで、魂を燃やせぇぇぇッ!」

 彼らは本当にモップで踊っていた。頭に布を巻き、体中に泡の残った洗剤を塗りたくりながら、床で回転する。なぜか片足立ちでポーズを決めるゴブリンもいた。掃除道具が、武器から楽器、そして表現の手段になった。リオはその光景を椅子代わりの丸太に座って見下ろしながら、鼻の奥で笑った。

「……フフッ。なんなのこの光景」

 グラス代わりの空き瓶に果実酒を注ぎ、くいっとあおる。甘く、アルコールの強い、喉に刺さるような一杯だった。

「人生で一度も見たことないタイプのカーニバルだわ。ママたちが見たらなんて言うかしら」

 その時、ロージーが現れた。頭には即席の葉っぱの王冠。手にはリオの作った芳香玉に木の枝を差してマイク代わりに握っている。

「ママー! 最後はこのオイラ様のターンだ! 聞いてくれ! オイラの歌を!」
「やめなさいよ。ゴブリンの歌はは時代遅れって言われてるのよ」
「ちげぇよ! ラップってのは心のリズムなんだよ!」

 酒の代わりにオロスコの粉を食べまくったロージーはハイテンションでリズムも曲調も無いゴブリンの音痴な叫びを披露した。

「オイラ! ママ! オイラ! ママァァァ!!」

 何が良いのか全然分からないが、ゴブリンたちは大盛り上がりでロージーを盛り上げている。リオは空の瓶を見つめながら、笑った。

「……まったく、どうしてアタシはこんな連中のママなんかやってるのかしらねぇ」

 それでも、この宴の中心に立っているのは自分だった。誰もが笑い、汗をかき、砦は夜の静寂と死臭の代わりに、命の音で満ちていた。そして楽しいのはリオも同じだった。だからこそ、オカマバーで働いていた血が騒ぐ。

「おどきロージー! 漢女の歌を聞かせてあげるわ!」
「おーーー!!ママが歌うぞお前らぁぁぁ!」
「「「「「ヒャッホーーーーー!!」」」」」

 リオは歌った。魂を込めて、百鬼夜行で歌っていたあの十八番の曲を全力でシャウトした。楽器も演奏も無いが、魂だけは伝わった。人間の音楽にゴブリンがどう感化されたのか分からないが、それでも彼らは笑って、はしゃいで、とにかく盛り上がった。こうしてリオと愉快な怪物たちの初めての宴会の夜は明けていく。歌い終わったリオは、ひと呼吸置いて空を見上げる。砦の屋根越しに、満天の星が瞬いていた。

「──いい夜じゃない。地獄の亡者にしちゃ、上出来よ」

 踊り疲れて寝息を立てるゴブリンたちの中、リオはひとり、仮面を外し、星空に一言つぶやいた。

「ねぇ、アダルス。あんたが死んで、私はここに流れ着いた。なのにさ……不思議ね。生きてる気がするのよ。あの店でも、ステージでもなくて。こんな、血と骨と、バカばっかの場所でさ」

 風が吹いた。洗いたての布がひらひらと舞う。リオはその布をそっと拾い、寝転ぶロージーにかけてやる。

「どいつもこいつも、お子様みたいに手がかかる。でもまあ……仕方ないわよね。だってアタシ、ママだもの」

 静かな笑み。そうして、星空の下、再生された砦の夜は静かに、幸せに更けていった。
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