無口な狼は魔王様の言いなりにならない

にしん

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無口な狼と魔王様との体育祭

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パーン…
朝の7時前。体育祭の開催を告げる花火が上がった。
「ん…体育祭か…」
体育祭を思い出した途端、鼓動が速くなった。
「リレー…」
プルルルル
「なんだ?小梅?」
小梅から電話だ。なにか心配なことでもあるのだろう。
「もしもし?小梅?」
「ももも、もしもし!れ、怜!?あ、あのさ、今日体育祭だよね?」
「そうだけど…緊張してる?」
「うん…クラスでの出し物もだけど、リレー…」
「大丈夫。じゃ、また後で。」
あまり話しすぎるのも良くないだろう。緊張感がほぐれてはいけない。小梅を変えるためのリレーなんだ。

「おはよ、怜。」
「おはよ、小梅。足、震えてるけど…」
「き、気にすんなっ!ほら、ダンスの確認するらしいから行くよ!」
足が震えるほど緊張してんのか…
「小梅!」
「なに?」
「頑張ろうな。」
「っ!当たり前だっつうの!!」
小梅は顔を真っ赤にして歩き出した。そんなに照れなくても。
「あ、きたきた!ダンスの確認するからちょっと待っててねー」
「あ、白崎さん、龍ヶ崎くん、リレーの順番覚えてるわよね?白崎さんは全体練習の時の感じを思い出して。頑張りましょう。」
「はいっ!神田さん、私、頑張ります!」
神田は微笑むと女子グループへ帰っていった。
「龍ヶ崎、白崎さんとのリレー頑張れよー!1番になったらキスしてもらえ!」
「やだよ!そんなの小梅が…」
「小梅!?ついに下の名前で呼ぶようになったの!?やっぱお前ら…」
「まだ付き合ってねぇっつうの!」
「まぁ頑張れよ!」
くそぅ…小梅がご褒美にキスなんてするわけねぇし…
「ねぇ、怜!私が1番になったら…」
「しない。」
「まだ言ってないよ!?」
こいつの方が求めて来やがった…
「確認するから集まってー」
さて、頑張りますか。

こうして体育祭がスタートした。俺たちはしばらく出番がない。1年の徒競走、2年のクラス対抗出し物、その後が俺たち3年の徒競走だ。それが終わると1年のクラス対抗出し物、2年の徒競走、そして3年のクラス対抗出し物。最後がクラス対抗のリレーだ。
しばらくゆっくりしとくか。

「怜、徒競走始まるよ!」
「あ、まじ?今行く。」
徒競走は別に適当に走ればいいし。
「徒競走、心配だな…」
「リレーみたいにやれば大丈夫。」
「うん、頑張る。」
こうして俺たちの徒競走が始まった。
女子が始めだ。小梅は2番目のグループ。
ピストルの音が響いた。
「大丈夫、大丈夫。」
小梅の足の震えはさっきの5倍増しになっていた。
小梅たちの番だ。
「よーい…スタート!」
出だしは3番。巻き返せる。
「1人抜いた!」
行ける。これなら…

「はぁ、はぁ…」
結果は2番。最後に抜くことはできなかった。
「小梅、頑張ったな。」
「ダメ。これじゃあリレーも…」
「リレーは1人じゃない。だから大丈夫だ。」
「うん…」
相当ショックだったのだろう。リレーへの不安がつのる。
ついに俺の番が来た。
「よーい…スタート!」
後ろからの声援に押されるように俺は前に出た。でもなぜだろう。誰かに抜かれてしまった。

悪夢のような一瞬の後、俺は倒れた。
「はぁ、はぁ…」
「大丈夫?龍ヶ崎くん!」
俺の前から人が戻ってきた。うっすらとしか見えなかったが、それは世田のような気がした。

「っ!痛ったぁ…」
「龍ヶ崎くん、大丈夫?」
「世田…?」
なんで世田がいるんだろう。俺は…
「油断したね。」
「どういう意味だ?」
「君は白崎さんの練習に力を入れた。そのせいで自分の管理はできなかったよね?だからさ。」
そうか。俺を抜かしたのはこいつだったんだ。うっすらと見えた人影。あれは、やっぱり世田だったんだ。
「僕はその間に練習を続けた。君との差は0.5秒しかなかった。だから簡単だったさ。」
小梅に見せてやりたかった。俺が1番でゴールするところを。結局、小梅と同じ結果に敗れた。
「元気になったみたいだし、行くね。3年の出し物はまだだから、ゆっくり休むといいよ。」
世田は微笑むと保健室を出て行った。
「リレー…1番になれるかな…」
急に怖くなって俺は保健室を飛び出した。

「怜!心配したのよ!?倒れるから…もう、怖かったのよ…?」
「ごめんな、心配しなくても大丈夫だから。もう元気。」
「良かった。リレーまでに体調整えてね!」
小梅に頷いた後、俺は世田のところへ行った。
「世田。」
「なに?」
「リレー、繋げろよ。」
「もちろんさ。1番になれよ。」
世田に負けた。だから1番になれるか分からなかった。あいまいに頷いて俺は世田から目をそらしてしまった。
「龍ヶ崎、キスどうなった?」
「しないから。」
「世田に負けたからって弱気になるなよ、お前凄いんだから。リレー頑張れよ!次は1番だ!」
弱気になったのが伝わったのだろうか。少し恥ずかしくなって俺はその場を離れた。

「3年生のクラス対抗出し物です。」
アナウンスとともに1組のやつらの入場が始まった。俺は2組。この次だ。
「1組の出し物は組体操だそうです。それではお願いします。」
弱気にならないよう、そっと出し物から目をそらした。

俺たちの番が来た。
俺たちは入場じゃなくて立ち位置に全力ダッシュ。曲が始まる前に行かなければならない。
「ダンスなんてメンドくさい。」

終わった…疲れた…
「怜、疲れたねぇ…」
小梅も疲れたんだな。
「白崎さん、ちょっとこれ…」
「え、私ですか?…分かりました。」
雑用を押し付けられる白崎って一体…
ボールだけだし、大丈夫だろう。

「遅っせえな…」
いくらなんでもボールを運ぶだけにこんなにかからないだろ。
「ん?小梅…?なに持って…マット!?」
しかも1人で。あれ?
「足怪我してるなら言えよ。困ってるなら誰かに言えよ。」
「怜…!足…なんで…」
「歩き方変。さっさと運んで湿布貼ろ。」
「うん…ありがと…」

「リレー、大丈夫?」
「うん、頑張る…」
「無理すんな。」
「してないよ、大丈夫だもん。」
「そっか…」
ほんとに大丈夫か?心配だな。

「さぁ、盛り上がりを見せる会場ですが、最後は…クラス対抗リレー!!」
盛り上がり過ぎだろ。どうなってんだよ。
「小梅…」
「大丈夫だから!心配しないで!」
「うん…」


「レディ…セット!!」
始まった。始めは世田だ。
「はい!白崎に伝えて、大丈夫!」
次は金田。
「はいっ!白崎さんに伝えて、大丈夫、みんな一緒。」
そして神田。
「白崎、大丈夫、みんな一緒、頑張れ!」
小梅の番だ。速い、速くなってる。
「怜っ!みんなの想い、ゴールにっ!」
小梅、いや、みんなから貰ったバトン。背後で小梅が倒れた気がした。今の順位は2位。アンカーはトラック1周半。鬼畜すぎんだろっ!
でもそれなら巻き返せる!
「龍ヶ崎!」
「龍ヶ崎くん!」
「龍ヶ崎くん!」
「怜っ!!」
いっけぇ!!

終わった…俺何番だ?1番になったかな…
「怜ー!!」
「うわっ!小梅!」
「怜ー!怜怜怜ー!!」
小梅…
「やったぞ!龍ヶ崎!1番だぁぁ!」
やった…
「小梅、やったぁぁ!!」
「怜ぃぃぃ!!」
こうして俺たちは自分を超えた。
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