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第二章

見ている分には羨ましいだろうけど、ハーレムって結構大変。――4

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 観客たちがざわめき立つ。

 ブラックスライムが、レベル差もある格上のモンスターを下したのだから、当然だろう。

「さあ、次はどう来る?」
「ぐぅ……っ」

 エッジが険しい顔付きでうめいた。

 いま、ステージ上には、クロと、分身2体がいる。

 分身はサクリファイスボム要員。しかも、サクリファイスボムのチャージタイムは0秒。

 つまりエッジは、即発動するサクリファイスボムを、2回しのがないといけない。

 しかし、エッジの従魔は残り2体。次の従魔が2発のサクリファイスボムを対処できなければ、高確率でストレート負けだ。

 圧倒的に不利な状況。ランスが動けないあいだにクロの分身を増やしたのは、この状況を狙ってのものだ。

 エッジが唇を引き結び、黙考もっこうする。

『残り時間は10秒です』

 次の従魔を選ぶまでの制限時間が20秒を過ぎたとき、エッジが覚悟を決めた目付きで魔石を放った。

「行け、ルード!」
『ルォ』

 現れたのは、岩石の甲羅こうらを持つ、1メートル半ほどの体長をした亀だ。

「なるほど、そいつがいたか……厄介だな」



 ロックタートル:90レベル



 土と水の属性を持つ『ロックタートル』は、VIT、MND、HPがいずれも高い、耐久性に優れたモンスターだ。

 だが、ステータスだけを見れば、サクリファイスボムには到底とうてい耐えられない。

 では、なにが厄介かと言うと、固有アビリティだ。

 ロックタートルの固有アビリティは『強固きょうこ』。その効果は、『最初に受けるダメージで戦闘不能にならず、HPが1残る』。

 つまり、どれだけサクリファイスボムの威力が高くとも、一撃では沈められないということだ。

 加えて、スキル構成にが含まれている可能性も考慮こうりょしないとな。

 頭脳をフル回転させ、俺は1秒で次の行動を決めた。

「サクリファイスボム!」
『ピィィィィ……』

 2体目の分身に、自爆攻撃の指示を出す。

 ここでクロを引っ込めたら、2体の分身は消滅する。それならば、多少の危険があろうとも、ロックタートルを仕留めるべきだろう。

『ピィ――――――ッ!!』

 轟音を響かせて、分身が爆発する。

 ロックタートルのHPバーがもの凄い勢いで削れ、1になった。

「もういっちょう!」
『ピィィィィ……』

 一拍のも置かず、最後の分身を特攻させる。

「いまだ、ルード! 『シェルバースト』!」
『ルォォォ!』

 瞬時、エッジも指示を出した。

 ロックタートル、ルードの甲羅がブクゥっと膨れ上がり、

『ルォォォォォォッ!!』

 ボンッ! と爆散した。

 甲羅の欠片が、岩の砲弾と化し、四方八方に発射される。

 その様相ようそうは、まるで噴火で生じた火山弾だ。

『ピッ!?』
『ピゥッ!』

 甲羅の砲弾を食らい分身が消滅。クロ本体も多大なダメージを負った。

 クロのざんHPは1/8。『分裂』が使えなくなったため、これ以上、クロが戦闘を続けることは不可能だ。
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