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第80話 また貴族か・・・

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ハヤト達はファイデル王国にたどり着いて門を潜ると、いつもの見慣れた風景が広がっていた。

ハヤトは腕を上げて伸びをする。
『んっ!んー!やっと帰って来たな!
早く屋敷に帰ってゆっくりしたいな。』

『私も疲れたぁぁー・・・。』
『豪華な馬車だけどお尻が・・・』
エルはうつら、うつらと居眠り中だ。

段々、屋敷が見えてくるが何か揉めているようだ。
『師匠!屋敷の前で騒いでる奴らがいるぞ!』
ギエンが指を差す。

馬車の窓から首を出すと3人の男達が揉めているようだ。

『そうだな・・・ちょっと行ってくる。』
よっこらしょと立ち上がり馬車から飛び降りて走り出す。

屋敷に近づくとメル達が気付いた。

『あっ!ハヤト様!お帰りなさい!!』
メル・マリ・エリ・が笑顔で出迎える。

『あぁ、ただいま!一体どうした?』
男達を睨みながら聞く。

3人の男達は少し怯んで大人しくなる。

『この方達がポーションを寄越せとしつこいんです。
再三お断りしているのですが・・・。』
彼女達が男達を睨む。

ポーション・・・エリか!成る程、なんとなく分かってきた。

『エリ!お前だな?何か成功したのか?』
エリが笑顔になる。
『はい!!遂に、成功したんです!!
あ、えっと・・・ここでは言えないので後で・・・』

成る程・・・余程の物が出来たか・・・。
さてこいつらをどうするかな。

『おい!お前ら!ポーションはやらん!大人しく帰れ!以上だ!』

すると身なりの良い男が声を上げる。

『なんだと?!なんだその口の聞き方は?!
俺は、レイド・メーランド公爵様の使いだぞ?!』

また貴族か・・・何故貴族は自分の思い通りにならないと癇癪を起こすんだ?!

『貴族だからなんだ!!!嫌がる民から奪うのが貴族か?!
俺はそんな奴らが大嫌いなんだよ!!!』
もう一度言うぞ?!帰れ!!!これが最後のチャンスだ!』

刀に手を掛けて威嚇する。

近づいて来たギエン達が立ち止まり後ずさる。
(まずい!!師匠が怒ってる!!あの刀だけは距離を置かないと!下がれ!!)
ギエンが指示を出す。

使いの男は嫌な汗を垂らし後ずさる。
『きょ、今日の所は引き上げてやる!
後で吠え面かくなよ!!』

男達は慌てて帰って行った。

『ふん!次来たらバラバラにしてやる!』
男達を一瞥する。

『さあ、エリ!何が出来たんだ?』
俺は興味津々でエリに近づく。

エリは顔を紅くして
『ひぁい!!遂に、エリクサーが出来たんです!!
3日に1本しか出来ないんですが・・・。』

俺は寒気がした。エリクサー・・・効果は未知数・・・イメージではどんな怪我や病気も治す。さらに追加効果・・・とんでもない物が作れる様になったのだ。

俺は思わずエリを抱きしめる。
『凄いぞエリ!!伝説級のポーションなんだろう?!』

エリはハヤトに抱きしめられ嬉し過ぎて涙目になっている。

そしてエリを離して頭を撫でながら
『エリクサーは誰かを助ける為に使ってしまったんだな?』

エリはびっくりして涙目のまま頷く。
そして何があったのかハヤトに説明した。

ハヤトは再びエリを抱きしめる。
『はうっ!!』
エリが笑顔で泣いている。

『エリのお陰で若者の命が助かったんだな!良くやってくれた!俺は誇らしく思うよ!!』

エリの頭を撫でやる。
エリは感無量で呆けていた。

(エリ良かったわね!いっぱい褒めてもらえて!)
メルが背中を突く。
(羨ましい・・・私も・・・)

エリは自分の身体を抱きしめるように触っている。
(わ、私しばらく身体洗わない・・・・)

((洗って!!!!))


『オンバー!どうだ?ポーションは手に入ったのか?!』

『レイド様、、、申し訳ございません!
門前払いでした。』
深々と頭を下げる。

『なんだと?!門前払い?!
・・・まさか・・お前達・・・英雄ハヤトを怒らせたのかぁぁぁぁ?!』

オンバー達は音速で土下座をして頭を床に付ける。

『も、申し訳ありません!!あまりにも生意気だったのでつい・・・貴族だからと・・・』

レイドは部下の不甲斐なさに怒りを爆発させる。
『馬鹿者がぁぁぁぁぁ!!あれほど礼を尽くせと言っただろうがぁぁぁぁ!!
英雄ハヤトを敵に回すなと言っただろうがぁぁぁぁ!!!』

頭を抱えて椅子に身体を沈める。

『しかしレイド様!あんなガキ共に何が出来ると言うのですか?!』

レイドは机を拳で殴る!
ドゴォォォン!!

『馬鹿者がぁぁぁ!!俺は、王宮で彼奴らの力をまざまざと見せつけられたのだ!!
少女が小枝で騎士団長全員纏めて3秒で再起不能にしたんだ!
王都のスタンビートではたった7人で魔物を蹴散らしたんだぞ!!
数万の魔物を7人だぞ!!
俺はそれを、この目で見たんだ!!
奴らが本気になったら・・・王都は5分かからず壊滅だ・・・』

オンバーは項垂れ呟く
『そ、そんな化け物達が何故王都で大人しくしているんだ・・・・。』

レイドが落ち着きため息をつく。
『奴らは言っていた。
貴族や王族だろうが力無き者に理不尽を振り撒く者をぶっ飛ばす為に力を使うと。
だからちょっかいを掛けなければ普通に生活しているだけだ。
それなのに・・・お前らは・・・』

もう俺が直接行くしか無いな・・・。
そのポーションがあれば・・・
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