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第102話 長い一日
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「よお!言われた通りロディアス商会の娘は掻っ攫って来たぜ!予定通りあんたの所の倉庫に連れて行ったぞ!報酬は弾んでくれるんだろうな?」
「ふん。私は商人だぞ?金の約束と金勘定を違える訳がなかろう。そらっ・・・」
倉庫跡地にある小屋の中に入って来た男にアーガンがずっしりと重い袋を投げ渡す。男が袋を受け取ると満足そうに袋の重さを手で計り、いやらしい笑みを浮かべる。
「くくっ・・・確かに。珍しく気前の良い事で・・・まあ、エナハーブが手に入る事を思えばこんな端金すぐチャラになるわな。」
「ふっ・・・そういう事だ。」
(くっくっくっ・・・見ていろよアルバン・ロディアス・・・綺麗事だけでは商売は出来ぬ事を教えてやるぞ。商売人の仕入れは執念だ!貴重な品物を仕入れる為ならどれだけ汚いと言われようが手段を選ばんのだ。ふふっ・・・これでリザルド商会での私の地位は更に上がるだろう・・・そうなれば将来は・・・)
どおぉぉぉぉん!!!
突然衝撃が走り小屋が大きく揺れる。
「な、なんだ?!地震か?!」
「むっ!こ、この揺れは・・・まずいぞ!ここから出るぞ!!」
「賛成だ!!」
小屋の壁板が激しく震え崩壊の危機を感じたアーガンと男は慌てて外に出る。しかし外に出た瞬間、吹き荒れる風に煽られアーガンと男が敷地の壁に張り付けになった。
「うっ、うがぁぁぁぁぁ・・・な、な、なんだ!?こ、このあ、あ、嵐のような強風は!?」
「・・・うぐっ・・・なっ?!な、な、何だあれはぁぁぁぁぁ!!」
男が顔を上げると唸りを上げる巨大な竜巻が瓦礫を巻き上げ空を貫いていた。
「・・・なっ!?ま、待て!!あ、あそこは・・・リザルド商会の倉庫の方角じゃないか!?ま、まさか・・・奴等・・・い、いや・・・や、奴等は娘の居場所までは分からない筈だ・・・」
アーガンは壁に張り付いたまま最悪の事態を否定しながら捲き上る瓦礫を見上げるしかなかった。
「デグリー!手を貸しなさい!このままでは付近の建物が崩壊します!この通りの両側に魔力障壁を張りますわ!」
「は、はい!?こ、この広い街の通り全体に魔力障壁を?!」
「時間がありません!!考える前に行動しなさい!!貴方には左側を任せますわ!!」
「は、はいっ!」
(・・・ひ、左側だけと言っても、こ、この広さに魔力障壁を・・・我に出来るのか・・・くっ!もうやるしかない!!)
フェルネスとデグリーが魔力を集中し手を翳すと魔力が壁が広がる。そして今にも倒壊しそうに軋んでいた建物が次々と静かに佇んで行く。
「なっ?!わ、我にこんな力が・・・し、信じられん・・・魔力操作も驚く程に楽に出来た・・・こ、これが主様の従魔となった力・・・」
デグリー自身が自分の力に驚いていた。
「ふっ・・・私は出来ない事は言いませんわ。主様の従魔ならばこの程度の事出来て当たり前ですわ。さあ、このまま行きますわよ。」
「ふっ・・承知した。」
デグリーの表情が心なしか緊張が解け緩んだように見えた。それを見たフェルネスもまた口元が緩む。主であるゼノアを始めフェルネスやルナレーンに囲まれてデグリーは劣等感を感じていた。自分自身の力を過小評価していたのだ。しかしフェルネスに諭され自らの可能性に自信を持った瞬間であった。
フェルネスとデグリーが街の通りに魔力障壁を全開に張りながら巨大な竜巻の近くまで来ていた。
「フェルネス殿!心なしか竜巻の勢いが収まって来たように思えるが。」
「そのようですわね。ですが急ぎますわよ!あの竜巻の中心部からロディアス様の娘の臭いがしますわ!!」
フェルネスとデグリーが竜巻の発生源に辿り着く。竜巻は既に消え先程とは打って変わり静寂が訪れていた。見ればそこは巨大な倉庫があったとは思えないほど綺麗な更地が広がっていた。
「こ、これは・・・気持ち良い程に何も無くなっていますわね・・・はっ!そういえばロディアス様は・・・」
フェルネスはアルバンを連れて来た事を思い出し見るとデグリーの背中で白目を向いて仰け反り気を失っているアルバンがいた。
「ロディアス様!?大丈夫ですか?!気を確かに!!」
焦るフェルネスがアルバンの首を起こして声を掛ける。激しい嵐の中を猛スピードで駆け抜けた衝撃でアルバンは気を失っていた。そして薄らと目を開けたアルバンは笑みを溢し虚な眼差しでフェルネスの顔を眺めていた。
「・・・うっ、うむぅ・・・あ、貴女は・・め、女神様か・・・わ、私は・・天に召されたのか・・・」
「ふう・・・寝惚けてますが大丈夫のようですね。ロディアス様。到着しましたわ。」
「はっ!!イリア!イリアは!?」
アルバンはデグリーの背中から慌てて飛び降りリザルド商会の倉庫があった場所の前に立った。
「・・・な、何があった・・・ここにはリザルド商会の立派な倉庫があった筈だが・・・ん?」
唖然として立ち尽くすアルバンの目が更地の真ん中でへたり込む人影を捉えた。
「・・・あ、あれは・・・イリア!!大丈夫かイリア!!!」
「んあっ!お、お父さん!!」
駆け寄るアルバンに気付いたイリアも立ち上がり駆け出す。
「だ、大丈夫なのか?!怪我は無いか?!」
アルバンはイリアと目線を合わせて腰を落とす。
「う、うん。だ、大丈夫。す、少し怖かっただけ・・・」
(私を攫ったあいつらよりゼノア君のマジックポーションの方が怖かったんだけどね・・・お着替えしたのに少し出てしまったわ・・・)
「・・・なるほど。そのマジックポーションを使ったのですね。」
いつの間にかアルバンの背後に来たフェルネスがイリアの手に握られた小瓶に気付いた。
「・・・う、うん。だ、だって”ふつう”って書いてあったから・・・それに、あいつらの思い通りにさせたくなかったの・・・」
「ふふっ・・・良いではありませんか。主様のご友人を攫ったのですから、これぐらいの代償は当然ですわ。」
フェルネスは更地になった敷地を満足気に見回す。
「な、な、ななっ!!!な、なんですかこれはぁぁぁぁぁぁ!!!」
「んっ?」
突然聞こえた悲鳴にも似た叫び声に振り向くと両手で頭を抱えたアーガン・ベーニンが敷地の入口で立ち尽くしていた。
「・・・あいつはアーガン・ベーニン・・・ふんっ!のこのこと出て来たな。」
「お、おぉ、おま、おま、お前等ぁぁぁぁ!!!!いっ、一体何をしたんだぁぁぁぁぁぁ!!!」
アルバン達を見つけたアーガン・ベーニンが顔を真っ赤にして大股でこっちに向かって来る。それと同時に怒りを露わにしたアルバンもアーガン・ベーニンに向かって行く。
「五月蝿い!!このクズが!!よくも私の娘を危険に晒してしてくれたな!!貴様はもう終わりだ!!」
アルバンとアーガン・ベーニンが鼻が触れる程近付き睨み合う。
「そこまでだ!!」
「むっ?!」
「何だ?!」
突然、敷地内に響く声に皆が声の主に注目する。すると敷地の入口には整列した兵士の前に銀と青を基調とした鎧を着て眼光鋭く仁王立ちでこちらを見据える男がいた。
「私は陛下直属の近衛兵団団長ベリオール・リバンドだ!!この騒ぎの関係者は大人しく付いて来い!!陛下が直々に取り調べを行うとの事だ!!」
(なっ!?へ、陛下直々に?!な、何故だ・・・)
ベリオールが手を翳すと背後にいた兵士が問答無用でアルバンと明らかに顔色が変わったアーガン・ベーニンを取り押える。しかしこの時フェルネスとデグリーの姿はなく二人は建物の屋根の上から様子を眺めていた。
「ふっ。これでこの件は片付くでしょう。私達は早く主様の元へ戻りましょうか。」
「了解した。」
フェルネスとデグリーが戻り事の顛末を聞いたキメルが胸を撫で下ろしていた。
「そうですか!イリアお嬢様が無事で良かったです。またゼノア殿に救われましたな。しかしそう言う事ならば、もうそろそろ・・・」
ガチャン・・・
キメルが言い終わる前に店の扉が開き文官らしき男と鎧を着た男達が数人入って来た。
(やはりか・・・)
見越していたかのようにキメルは肩をすくめて警戒するフェルネスに軽く頷く。
「私は王国情報管轄責任者クロード・ミラゼールである!ゼノア殿は何処に居られるか!」
クロードが声を上げて店を見渡していると奥の出入口からゼノアと黒と紫でデザインされたリボンドレス姿のルナレーンが笑顔で出て来た。
「ご主人様ありがとう!凄く気に入ったの!」
「うん。それなら良かった。凄く似合ってるよ。」
「ゼ、ゼノア殿!!こちらに居られましたか!!」
(あれ?あの人は・・・確か・・・ゲイブルの街に来た・・・)
クロードがツカツカと急ぎ足でゼノアに向かって来る。するとゼノアを庇うようにルナレーンが魔力を滲ませてクロードの前に立ちはだかる。
「止まって!!ご主人様においたする人は私が許さないんだから!!」
「ぬぐっ・・・」
ルナレーンが咄嗟に滲ませた軽い殺気にクロードは足を止めて額に汗を滲ませる。
(・・・こ、この女は何者?・・・それにこの魔力は・・・)
「あっ・・・ルナレーン!良いんだよ!この人は悪い人じゃないよ!」
ゼノアがドレスの裾を軽く引っ張る。
「えっ?!あっ・・・そ、そうなの?!あ、あうっ・・・ご、ごめんなさい・・」
張り切って前に出たルナレーンだったが申し訳なさそうに小さくなってゼノアの後ろへと戻る。
「あ・・・で、何か僕に用ですか?」
ゼノアが訳が分からず首を傾げる。
「そ、そうだった!陛下が緊急で聞きたい事があるとの事です!至急王城まで来て頂きたいのです!!」
「えっ・・陛下が緊急で?」
(・・・う、うーん。な、何かやらかしたのかな・・・僕。)
「と、とにかく一緒に来て欲しい!さあ!早く!!」
クロードは逸る気持ちを全面に出してゼノアの手を掴み早足で歩き出す。
「あっ・・ク、クロードさん!い、行きますから!そんなに引っ張らないで!!」
((・・主様に無礼な・・・))
フェルネスとデグリーは目を細め軽く殺気を滲ませる。
「むっ・・す、すまない。それでは行こうか。」
(・・・な、何だったんだ今の重い空気は・・・)
クロードは額に汗を滲ませ店を出ると停めてある馬車の扉を開ける。するとゼノアに続き当然のようにフェルネス、デグリー、ルナレーンが乗り込んで来る。
「むっ?!そ、その者達は?!」
「ん?あぁ・・・僕の仲間です。何か問題でも?」
「うっ・・・陛下の命令ではゼノア殿との事・・・」
クロードが難色を示す。
「・・・ふっ。私達は主様の従魔ですわ。主様と共にある者。それにこの度の顛末を知りたいのでしょう?それならば私達がいた方が報告が早いですわ。」
「むっ・・・むう・・」
「それにフェルネスは陛下と面識があるから僕が居れば大丈夫だと思うよ。」
ゼノアの言葉にクロード目が大きく開く。
「そ、その者が陛下と面識が?!な、なるほどそれならば・・・良いだろう。それでは出発だ。」
日が傾き夕陽が照らす街並みを馬車が駆けて行く。フェルネスの膝の上に座るゼノアは家にも帰れずまだまだ長い一日を覚悟しながら車窓から沈みゆく夕陽を眺めるのであった。
「ふん。私は商人だぞ?金の約束と金勘定を違える訳がなかろう。そらっ・・・」
倉庫跡地にある小屋の中に入って来た男にアーガンがずっしりと重い袋を投げ渡す。男が袋を受け取ると満足そうに袋の重さを手で計り、いやらしい笑みを浮かべる。
「くくっ・・・確かに。珍しく気前の良い事で・・・まあ、エナハーブが手に入る事を思えばこんな端金すぐチャラになるわな。」
「ふっ・・・そういう事だ。」
(くっくっくっ・・・見ていろよアルバン・ロディアス・・・綺麗事だけでは商売は出来ぬ事を教えてやるぞ。商売人の仕入れは執念だ!貴重な品物を仕入れる為ならどれだけ汚いと言われようが手段を選ばんのだ。ふふっ・・・これでリザルド商会での私の地位は更に上がるだろう・・・そうなれば将来は・・・)
どおぉぉぉぉん!!!
突然衝撃が走り小屋が大きく揺れる。
「な、なんだ?!地震か?!」
「むっ!こ、この揺れは・・・まずいぞ!ここから出るぞ!!」
「賛成だ!!」
小屋の壁板が激しく震え崩壊の危機を感じたアーガンと男は慌てて外に出る。しかし外に出た瞬間、吹き荒れる風に煽られアーガンと男が敷地の壁に張り付けになった。
「うっ、うがぁぁぁぁぁ・・・な、な、なんだ!?こ、このあ、あ、嵐のような強風は!?」
「・・・うぐっ・・・なっ?!な、な、何だあれはぁぁぁぁぁ!!」
男が顔を上げると唸りを上げる巨大な竜巻が瓦礫を巻き上げ空を貫いていた。
「・・・なっ!?ま、待て!!あ、あそこは・・・リザルド商会の倉庫の方角じゃないか!?ま、まさか・・・奴等・・・い、いや・・・や、奴等は娘の居場所までは分からない筈だ・・・」
アーガンは壁に張り付いたまま最悪の事態を否定しながら捲き上る瓦礫を見上げるしかなかった。
「デグリー!手を貸しなさい!このままでは付近の建物が崩壊します!この通りの両側に魔力障壁を張りますわ!」
「は、はい!?こ、この広い街の通り全体に魔力障壁を?!」
「時間がありません!!考える前に行動しなさい!!貴方には左側を任せますわ!!」
「は、はいっ!」
(・・・ひ、左側だけと言っても、こ、この広さに魔力障壁を・・・我に出来るのか・・・くっ!もうやるしかない!!)
フェルネスとデグリーが魔力を集中し手を翳すと魔力が壁が広がる。そして今にも倒壊しそうに軋んでいた建物が次々と静かに佇んで行く。
「なっ?!わ、我にこんな力が・・・し、信じられん・・・魔力操作も驚く程に楽に出来た・・・こ、これが主様の従魔となった力・・・」
デグリー自身が自分の力に驚いていた。
「ふっ・・・私は出来ない事は言いませんわ。主様の従魔ならばこの程度の事出来て当たり前ですわ。さあ、このまま行きますわよ。」
「ふっ・・承知した。」
デグリーの表情が心なしか緊張が解け緩んだように見えた。それを見たフェルネスもまた口元が緩む。主であるゼノアを始めフェルネスやルナレーンに囲まれてデグリーは劣等感を感じていた。自分自身の力を過小評価していたのだ。しかしフェルネスに諭され自らの可能性に自信を持った瞬間であった。
フェルネスとデグリーが街の通りに魔力障壁を全開に張りながら巨大な竜巻の近くまで来ていた。
「フェルネス殿!心なしか竜巻の勢いが収まって来たように思えるが。」
「そのようですわね。ですが急ぎますわよ!あの竜巻の中心部からロディアス様の娘の臭いがしますわ!!」
フェルネスとデグリーが竜巻の発生源に辿り着く。竜巻は既に消え先程とは打って変わり静寂が訪れていた。見ればそこは巨大な倉庫があったとは思えないほど綺麗な更地が広がっていた。
「こ、これは・・・気持ち良い程に何も無くなっていますわね・・・はっ!そういえばロディアス様は・・・」
フェルネスはアルバンを連れて来た事を思い出し見るとデグリーの背中で白目を向いて仰け反り気を失っているアルバンがいた。
「ロディアス様!?大丈夫ですか?!気を確かに!!」
焦るフェルネスがアルバンの首を起こして声を掛ける。激しい嵐の中を猛スピードで駆け抜けた衝撃でアルバンは気を失っていた。そして薄らと目を開けたアルバンは笑みを溢し虚な眼差しでフェルネスの顔を眺めていた。
「・・・うっ、うむぅ・・・あ、貴女は・・め、女神様か・・・わ、私は・・天に召されたのか・・・」
「ふう・・・寝惚けてますが大丈夫のようですね。ロディアス様。到着しましたわ。」
「はっ!!イリア!イリアは!?」
アルバンはデグリーの背中から慌てて飛び降りリザルド商会の倉庫があった場所の前に立った。
「・・・な、何があった・・・ここにはリザルド商会の立派な倉庫があった筈だが・・・ん?」
唖然として立ち尽くすアルバンの目が更地の真ん中でへたり込む人影を捉えた。
「・・・あ、あれは・・・イリア!!大丈夫かイリア!!!」
「んあっ!お、お父さん!!」
駆け寄るアルバンに気付いたイリアも立ち上がり駆け出す。
「だ、大丈夫なのか?!怪我は無いか?!」
アルバンはイリアと目線を合わせて腰を落とす。
「う、うん。だ、大丈夫。す、少し怖かっただけ・・・」
(私を攫ったあいつらよりゼノア君のマジックポーションの方が怖かったんだけどね・・・お着替えしたのに少し出てしまったわ・・・)
「・・・なるほど。そのマジックポーションを使ったのですね。」
いつの間にかアルバンの背後に来たフェルネスがイリアの手に握られた小瓶に気付いた。
「・・・う、うん。だ、だって”ふつう”って書いてあったから・・・それに、あいつらの思い通りにさせたくなかったの・・・」
「ふふっ・・・良いではありませんか。主様のご友人を攫ったのですから、これぐらいの代償は当然ですわ。」
フェルネスは更地になった敷地を満足気に見回す。
「な、な、ななっ!!!な、なんですかこれはぁぁぁぁぁぁ!!!」
「んっ?」
突然聞こえた悲鳴にも似た叫び声に振り向くと両手で頭を抱えたアーガン・ベーニンが敷地の入口で立ち尽くしていた。
「・・・あいつはアーガン・ベーニン・・・ふんっ!のこのこと出て来たな。」
「お、おぉ、おま、おま、お前等ぁぁぁぁ!!!!いっ、一体何をしたんだぁぁぁぁぁぁ!!!」
アルバン達を見つけたアーガン・ベーニンが顔を真っ赤にして大股でこっちに向かって来る。それと同時に怒りを露わにしたアルバンもアーガン・ベーニンに向かって行く。
「五月蝿い!!このクズが!!よくも私の娘を危険に晒してしてくれたな!!貴様はもう終わりだ!!」
アルバンとアーガン・ベーニンが鼻が触れる程近付き睨み合う。
「そこまでだ!!」
「むっ?!」
「何だ?!」
突然、敷地内に響く声に皆が声の主に注目する。すると敷地の入口には整列した兵士の前に銀と青を基調とした鎧を着て眼光鋭く仁王立ちでこちらを見据える男がいた。
「私は陛下直属の近衛兵団団長ベリオール・リバンドだ!!この騒ぎの関係者は大人しく付いて来い!!陛下が直々に取り調べを行うとの事だ!!」
(なっ!?へ、陛下直々に?!な、何故だ・・・)
ベリオールが手を翳すと背後にいた兵士が問答無用でアルバンと明らかに顔色が変わったアーガン・ベーニンを取り押える。しかしこの時フェルネスとデグリーの姿はなく二人は建物の屋根の上から様子を眺めていた。
「ふっ。これでこの件は片付くでしょう。私達は早く主様の元へ戻りましょうか。」
「了解した。」
フェルネスとデグリーが戻り事の顛末を聞いたキメルが胸を撫で下ろしていた。
「そうですか!イリアお嬢様が無事で良かったです。またゼノア殿に救われましたな。しかしそう言う事ならば、もうそろそろ・・・」
ガチャン・・・
キメルが言い終わる前に店の扉が開き文官らしき男と鎧を着た男達が数人入って来た。
(やはりか・・・)
見越していたかのようにキメルは肩をすくめて警戒するフェルネスに軽く頷く。
「私は王国情報管轄責任者クロード・ミラゼールである!ゼノア殿は何処に居られるか!」
クロードが声を上げて店を見渡していると奥の出入口からゼノアと黒と紫でデザインされたリボンドレス姿のルナレーンが笑顔で出て来た。
「ご主人様ありがとう!凄く気に入ったの!」
「うん。それなら良かった。凄く似合ってるよ。」
「ゼ、ゼノア殿!!こちらに居られましたか!!」
(あれ?あの人は・・・確か・・・ゲイブルの街に来た・・・)
クロードがツカツカと急ぎ足でゼノアに向かって来る。するとゼノアを庇うようにルナレーンが魔力を滲ませてクロードの前に立ちはだかる。
「止まって!!ご主人様においたする人は私が許さないんだから!!」
「ぬぐっ・・・」
ルナレーンが咄嗟に滲ませた軽い殺気にクロードは足を止めて額に汗を滲ませる。
(・・・こ、この女は何者?・・・それにこの魔力は・・・)
「あっ・・・ルナレーン!良いんだよ!この人は悪い人じゃないよ!」
ゼノアがドレスの裾を軽く引っ張る。
「えっ?!あっ・・・そ、そうなの?!あ、あうっ・・・ご、ごめんなさい・・」
張り切って前に出たルナレーンだったが申し訳なさそうに小さくなってゼノアの後ろへと戻る。
「あ・・・で、何か僕に用ですか?」
ゼノアが訳が分からず首を傾げる。
「そ、そうだった!陛下が緊急で聞きたい事があるとの事です!至急王城まで来て頂きたいのです!!」
「えっ・・陛下が緊急で?」
(・・・う、うーん。な、何かやらかしたのかな・・・僕。)
「と、とにかく一緒に来て欲しい!さあ!早く!!」
クロードは逸る気持ちを全面に出してゼノアの手を掴み早足で歩き出す。
「あっ・・ク、クロードさん!い、行きますから!そんなに引っ張らないで!!」
((・・主様に無礼な・・・))
フェルネスとデグリーは目を細め軽く殺気を滲ませる。
「むっ・・す、すまない。それでは行こうか。」
(・・・な、何だったんだ今の重い空気は・・・)
クロードは額に汗を滲ませ店を出ると停めてある馬車の扉を開ける。するとゼノアに続き当然のようにフェルネス、デグリー、ルナレーンが乗り込んで来る。
「むっ?!そ、その者達は?!」
「ん?あぁ・・・僕の仲間です。何か問題でも?」
「うっ・・・陛下の命令ではゼノア殿との事・・・」
クロードが難色を示す。
「・・・ふっ。私達は主様の従魔ですわ。主様と共にある者。それにこの度の顛末を知りたいのでしょう?それならば私達がいた方が報告が早いですわ。」
「むっ・・・むう・・」
「それにフェルネスは陛下と面識があるから僕が居れば大丈夫だと思うよ。」
ゼノアの言葉にクロード目が大きく開く。
「そ、その者が陛下と面識が?!な、なるほどそれならば・・・良いだろう。それでは出発だ。」
日が傾き夕陽が照らす街並みを馬車が駆けて行く。フェルネスの膝の上に座るゼノアは家にも帰れずまだまだ長い一日を覚悟しながら車窓から沈みゆく夕陽を眺めるのであった。
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光悦(こうえつ)って人物名しか出てこんかたった
光栄(こうえい)かな?
ご指摘ありがとございます。
”恍惚”の変化間違いです。
最近読み始めました。
面白いですねー、もし現実世界にスキルというものが存在したら、神級スキルが使えずにどれだけ苦しんでる人がいるかと思うと…🥶
でもなんか、チートなのに最初はいきなりは?🫣みたいな展開でしたけどちゃんと無双できてよかった😌
それにしても最近更新されてないですけど大丈夫ですか?おこがましいですが更新宜しくお願いしますね🫡
僕もファンタジー小説大賞応募してますけど最強のライバルに期待してますので(とか言って自分は全く大したことない…😅)
感想ありがとうございます😊
中々更新出来ていないですが少しずつは進めております。お互い楽しく進めていきましょう😄
退会済ユーザのコメントです
貴重なご意見ありがとうございます。色々な作家さんの想いがありますので何とも言えませんが私は私なりの武闘大会にして行こうと思います。