神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu

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第183話 自己嫌悪

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「我らは貴方様を救世主と崇める赤龍教で御座います。先程の御技!流石でございます。是非!我らの隠れ家においでください!」

「な、何?赤龍教?何だそれは・・・?」

「はい!龍峰山におられる赤龍様を崇める者達で御座います!!」

「ん?・・・もしかして・・炎帝龍アグニシアの事か?」

「・・え、炎帝龍・・・アグニシア・・はっ!そ、それが赤龍様の本当の名で御座いますか?!」

「そうだ。龍峰山に住む世界の守り手の一角炎帝龍アグニシアだ!・・・ん?まさか・・お前等がアグニシアを起こそうとしてるのか?!」

「ううっ・・・」

(・・む、むう・・・こ、この力・・・)

ドルゲルが魔力を滲ませながら一歩前に出るとレオガルド達はドルゲルの威圧を受けて息が詰まり汗が吹き出す。

そしてもう一歩前に出ようとした時、背後から何者かが近付いて来る気配がした。

「ん?」

振り向けば人間の男が女性の獣人を二人引き連れ駆け寄って来た。

「お、おい!あんた!!待ってくれ!!少し話がしたいんだ!」

「ちっ!次から次へと・・・面倒な奴等だな・・・だがその前にお前等・・・」

ドルゲルがレオガルド達に振り向くと既にそこに姿は無かった・・・

「ちっ!逃げたか・・・ん?これは・・・」

地面を見ると一枚の紙の上に石が置かれていた。石を退けて紙を拾い上げて見ると地図のようだった。

(ふん・・逃げた訳じゃないのか・・・まぁいい・・もし罠であっても受けて立つぞ・・)

ドルゲルが地図を懐に入れると目の前に先程の人間の男が視界に入った。

「今度はなんだ?!俺は忙しいんだ!」

ドルゲルは吐き捨てる。

「ま、まあ、そう言わずに!俺はこのガーゼイドのギルドマスターのジルバだ!取り敢えず礼を言わせてくれ!!」

ジルバは改めて服装を整え背筋を伸ばすと綺麗に腰を90°に曲げて頭を下げる。

「エビル・ヘルスパイダーの討伐、並びに住人の救助を感謝する!!君はこの街の恩人だ!!」

「お、おふう・・・」

(うーん・・そんなに感謝されてもな・・・俺が撃ち漏らした奴が街の壁を破壊して、更に倒したのは良いがその結果街を一部破壊したんだからな・・・ここは直ぐにでも退散した方が・・・)

「なあ!あんた!名を教えてくれないか?」

「んあっ?」

「名前だよ!あんたの名前を教えてくれないか?」

「あ・・あぁ。俺は暗黒神ドルゲルだ。お前はジルバと言ったな?俺は忙しいんだ!それじゃあな!!」

(んん?!あ、暗黒・・神?ドルゲル・・・あっ・・・)

ジルバは何とか話を繋ぎ打ち解けようとするがドルゲルは背を向けて立ち去ろうとする。

「ド、ドルゲル殿!ま、待ってくれ!・・・そ、そうだ!!あんたも疲れただろう?飯でも食べながら話を聞かしてくれないか?」

ドルゲルは自己嫌悪に思いを馳せながらも急に立ち止まり素早く首だけ振り向き目を輝かせる。

「っ?!・・・め、飯・・?!」

ジルバの一言で目を輝かせるドルゲルを受付嬢のナーガは見逃さなかった。ナーガはジルバの背後に近づき耳打ちする。

(ギルマス・・・あの方はお腹が空いているようです。ここは食事で釣った方が良いですね。)

(お、おう。そのようだな・・よし!それなら・・・)

ジルバは口元を緩めこれでもかと目を見開き眉を上げる。

「そ、そうだ!飯だ!飯を奢ろうじゃないか!何でも好きな物を食っていいぞ!!その代わり少しだけ話を聞かせて欲しいんだ。俺も領主様に報告しなくてはならないんだ。良いだろうか?」

ぐぅぅぅぅぅ・・・

(・・・うっ・・こ、こいつ俺の心を読めるのか?!ちっ・・たかが獣人と侮ったか・・ま、まあいいだろう。話ぐらいしてやっても良いか・・・)

ドルゲルは仕方なさそうな素振りでゆっくりとジルバに身体を向けると口元が緩み涎が垂れていた・・

「・・・じゅる・・ごくっ・・い、良いだろう・・お、お前がそこまで言うなら少しだけ付き合ってやろうじゃないか・・・さあ行こう!直ぐ行ってやろう!」

ジルバと受付嬢2人はドルゲルの変わりように笑いを堪えて頬を膨らませていた。

(ぷぷっ・・・わ、分かりやすい奴だ・・・まあ、悪い奴では無さそうだな・・・)

「おい!お前ら早く行くぞ!!」

ドルゲルはジルバ達を置き去りにしてズンズンと歩いて行く。

「お、おい待て!!お前が先に行ってどうするんだよ?!場所を知らないだろう?!」

「あっ・・それもそうだな・・・早く案内しろ!・・・って・・しまった・・忘れる所だった・・・お前ら!ちょっと待ってろ!!」

立ち止まったドルゲルが何かを思い出し破壊された外壁へと向かう。

「お、おい!何処へ行く・・・」

(あいつが見たらまた五月蝿いからな・・・)

ドルゲルはジルバの声を無視すると大きく破壊された外壁に手をかざし魔力で崩れた外壁部分を包み込んだ。するとまるで時が戻って行くかのように瓦礫が外壁に吸い込まれ何事も無かったように外壁が元通りに復元された。

ジルバ達はあっという間に復元された外壁を口をポカンと開けて見上げていた。

「・・う、嘘・・・あ、あんな魔法・・・見た事ないわ・・」

「そ、そんな・・・あんなに破壊されていたのに・・・一瞬で・・」

「・・こ、こいつは・・た、たまげたぜ・・・あれは俺達が使っている魔法とは違う・・・魔力自体を操作しているんだ・・まさか人間でここまでの魔力操作ができる奴がいるとはな・・・」

ジルバは過去に同じ魔力操作の使い手を知っていた。ジルバが獣王国バルバードのギルドマスターをしていた頃に未開の森の調査中に迷い込んだエルフの集落の長であった。

(そう言えばエルフの長が言っていたな・・・元来魔法とは魔力操作であると・・)

エルフは長命であり長ともなれば歳は1000歳を越えている。その1000年前の魔法技術を目の前の人間がいとも簡単に使っているのだ。興味を惹かない訳はなかった。

(・・・そう言えば・・こいつ暗黒神とか言っていたな・・・ふふっ・・これは面白い事になって来たぞ・・・)



「・・・こ、これ・・・全部食べて良いのか?」

ギルドに併設された食堂で目の前に並べられたテーブルいっぱいの料理にドルゲルが涎を垂らしていた。

「あぁ!遠慮せずに好きなだけ食っていいぞ!何せこのガーゼイドの街の英雄だからな!」

「おう!!分かった!!」

ジルバが大袈裟な笑顔で両手を広げるとドルゲルが目の前の料理に襲いかかった!

「ふん!ふん!ふん!ふん!ふん!ふん!!う、うまい!!ずびっ!むぐっ!ずずっ!もぐっ!ずびびっ!むぐもぐっ!!」

ドルゲルは両手にスプーンとフォークを持ち次から次へと口の中へスープと肉を交互に送り込む。

(・・・ははっ・・どれだけ腹減ってたんだよ・・・こうして見てるとあんな凄え事できる奴には見えないな・・・)

ジルバがジョッキを煽りながら眺めていると騒ぎが収まりギルドに帰って来た冒険者達も何事かと目を向ける。

「何だあの野獣みたいに飯食ってる奴は?見ねえ顔だな?」

「確かに見ない顔だな・・・ん?一緒にいるのはギルマスだよな?」

「何か今回の事と関係あるんじゃねーか?」

冒険者達がジルバとドルゲルの方へ足を向けたその時!ギルドの扉が勢いよく開かれた!

ばぁぁぁん!!

そして勢いそのままに飛び込んで来たのはバルバード騎士団副団長マーベリアであった。

「な、なんだ?!」

「だ、誰だ?!」

「お、おい・・あれは騎士団の副団長様じゃねーか?!」

騒然とするギルドの中でマーベリアは誰かを探すようにギルド内を見渡し無心に料理を口に運ドルゲルの姿を捉えると足早に部下を率いてテーブルへと近づいて行く。

「ドルゲル・・・殿・・・うえっ?!」

(ジ、ジルバ様!?こ、こんな埃っぽい姿で・・・)

料理を貪るドルゲルに声を掛けようとしたその時、一緒に座っているジルバが視界に入るとマーベリアは立ち止まり服装を整え手櫛で髪を整えて出した・・・

ドルゲルが肉を頬張りながらマーベリアに気付き首を傾げる。

(ん?あいつもう来たのか・・・それにしても何をしているんだ?)

「ジルバ殿♡ご機嫌よう♡うふっ♡」

「ぶふぉっ!!げほっ!げほっ!!」

マーベリアは精一杯の笑顔と可愛らしい声を絞り出してジルバに声を掛けた。ドルゲルはマーベリアの声と態度の変わり様に思わず噴き出した。

「げほっ!ごほっ・・・お、お前どっから声を出してるんだ?!会った時と全然違うじゃないか!!」

「ド、ドルゲル殿!だ、大丈夫か?!・・・って・・君はマーベリア殿か!!」

「はい♡ジルバ殿が無事で良かったですぅ♡」

くねくねと近寄るマーベリアからジルバは少し距離を取る。

「お、おう・・・と、というかマーベリア殿はドルゲル殿を知っているのか?」

「はい♡この方は暗黒神ドルゲル様!神界からこの地上に降りて来た神なのです♡」

マーベリアが胸の前で手を組みニッコリと笑顔で首を傾ける。

「えっ・・?」
「はぁ?」
「・・何言ってんだ?」

マーベリアの言葉にギルド内が静けさに包まれジルバを始め冒険者達が憐れみの目を向けるのであった・・・



レオガルド達はアジトへ戻り長机を囲み意気消沈していた。ドルゲルから受けた威圧が未だに身体に残っており手脚の震えが止まらないのだ。

「レ、レオガルド様・・・あ、あの者は本当に赤龍様の化身なのでしょうか・・・?」

ミラジリアはドルゲルの言葉を何度も思い出し疑念を抱いていた。

「う、うむ・・・あの口振りでは・・分からん・・・だ、だが・・あ、あの力・・そして赤龍様の名を知っていたのだ・・・どちらにせよアグニシア様と縁のある者である事には間違いない。もう一度会って話をするのだ!何か分かるかも知れん!!お前達!直ぐに出発するぞ!!」

「「「はい・・・」」」

ミラジリア達は一抹の不安を感じながら席を立ち部屋から出て行くのであった。
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