エレベーター

依東茜

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エレベーター

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静かなオフィスビルの一室で、山本と佐藤は、深夜まで仕事に追われていました。片付けを終えた山本が、溜息をついて立ち上がる。
「今日はもう帰ろう。さすがに疲れた…」
佐藤も同意し、彼らはエレベーターに向かった。
エレベーターのドアが閉まると、山本は突然、奇妙な表情を見せた。

「このエレベーター、変じゃない?」

佐藤は首を傾げました。
その瞬間、エレベーターの動きが止まり、彼らは驚く。
エレベーターのボタンを押しても、反応がない。
「どうしたんだ、これ。故障か?」
そんな山本の発言と同時に、エレベーターの内部が変わり始めた。
壁が透明になり、外が見えるようになった。
しかも、何もない空間を漂っているような感覚に襲われた。。
「な、何だこれは…?」
佐藤の驚きの声に、山本も同じように声を上げる。
すると、エレベーターの扉が開き、そこには見知らぬ男が立っていた。

「ようこそ、タイムエレベーターへ。」
男はそう言うと、彼らに未来の日付を示した。驚く二人に、男は笑いながら話し始める。
「このエレベーターは、時間を移動することができる。あなたたちは、一日未来に来たのだ。」
男の言葉を信じられない山本と佐藤がオフィスに戻ると、自分たちが翌日の仕事をこなしている姿がそこにあった。

その後エレベーターは再び動き、今度は未来ではなく過去に戻りました。そしてエレベーターの扉が開くと、そこには若い頃の自分たちがいた。
彼らは、自分たちが初めてこの仕事に就いた日、そして自分たちが何も知らない純粋な頃の自分自身を見つめ、涙を流しました。

その後、エレベーターは現在に戻り、二人は目の前の現実を受け入れました。
しかし、驚きの結末が待っていました。エレベーターの扉が開くと、そこには未来の自分たちがいました。しかし、その二人は、今の山本と佐藤とは全く違う表情をしていました。

「あの日、エレベーターに乗らなければ…」
未来の二人がそう言った瞬間、現在の二人はエレベーターから転落し、目の前が真っ暗になった。

目が覚めると、二人はまたオフィスの中で、仕事をしていました。エレベーターのことは全て夢だったのか、それとも…?


一週間後、山本と佐藤が再びエレベーターに乗った時、瞬間的に体が軽くなる感覚に襲われた。
エレベーターの扉が開き、そこには再び見知らぬ男が立っていました。

「また来たか。次はどの時間に行く?」
その後、エレベーターは再び動き出し、山本と佐藤は時間を超える旅を続けることになった。

二人は理解した。
これは夢でも幻でもなく、現実だ。
彼らはこのエレベーターを使い、過去と未来を行き来し、自分たちの人生を見つめ直すことができた。

ある日、エレベーターの扉が開くと、そこには老いた自分たちがいました。

「あの日、エレベーターに乗らなければ…」
老いた自分たちがそう言った瞬間、現在の二人はエレベーターから転落し、目の前が真っ暗になった。

目が覚めると、二人はまたオフィスの中で、仕事をしていました。
しかし、体の節々から痛みがこみ上げてきました。そして、鏡を見ると、自分たちが老いていたのです。

エレベーターは時間を超えるだけでなく、その経過もリアルに体験させるのだと二人は理解しました。

それから、山本と佐藤はエレベーターを使わないようにしました。しかし、一度時間を超えたことで、彼らの体は加速度的に老化していきました。そして、彼らはエレベーターの恐ろしさを知り、後悔した。


「あの日、エレベーターに乗らなければ…」
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