騎士とお嬢様。

奏 -sou-

文字の大きさ
28 / 58
第三章

06

しおりを挟む
「エドウィー王子、庭を案内する前に1度着替えて参りますわ。よければ庭へ続く鍛錬場付近でお待ち頂けませんか?」

席を立ち、出入口付近で待機していたメイドに声をかける。

「エドウィー王子を案内して欲しいの。」
「かしこまりました。」

エドウィー王子も席を立ち、メイドと共に先に部屋を出ていく。私は軽く会釈をし微笑む。

「サファリーアさん、お待ちしています。」
「えぇ、少しの間お時間を下さい。」

エドウィー王子が出ていったのを確認してから、1度部屋に戻ろうと動けば騎士に腰を抱かれ、来た時と同様の姿で部屋に戻ることになった。

大人しくクローゼット近くにあった椅子に座って騎士の行動をみる。

「庭を歩くのであれば、そっちよりこっちのドレスの方が動きやすそうだ。」

勝手を知っている騎士はクローゼットを開けて先程は違う紺色の足元がスッキリしたドレスを選んでくれた。そのドレスに着替える前に先程洗えなかった手のひらを洗おうと1度椅子から立ち、部屋の一角に置いてあるボウルにポットから水を注ぎ手を洗う。

急ぐと水が飛び散るからと、あまり周りに飛び散らない程度のスピードで手を洗っていたら、上から影が差しふわりと温かみを感じ見知った大きな角張った手が私の手と重なる。

私の指先を撫でるように触れたかと思えば、指の間に指を入れてギュッと握ってみたり、軽く手を洗うはずが水中で水の流れに反した動きをしているため、水がボウルの壁にあたり、ちゃぷん、ちゃぷんと小さく波打つ音を出しながら跳ね返る。

何を考えているのか、手遊びだけでは飽き足らず騎士は腰を屈めて私の右首筋根に顔を押し当てる。

もう手を十分に洗えたので、ボウルから出したいと思うが騎士に握られてたら出すに出せない。

「騎士、手を拭きたいの」
「………」

おかしい、こんな近距離で聞こえてないわけが無い

「ねぇ騎士、手を離して」
「………」

人の首元に顔を埋めて、もしかして寝てしまったの?

「ユーグスさーん、起きてますかー?」

手を揺らしてみる。

「…起きてる。」
 
『起きてるなら返事返して頂戴よ!』
と少しムッとしたが、要件を伝える。

「騎士、手を拭きたいから離して欲しいの。」
「あぁ、分かった。」

そう言ってポット付近に置いてあったタオルを手に取り、水から出した手を包んで拭いてくれる。

「…ありがとう騎士」

さて、着替えなきゃと顔を上げれば

「サフィ」

耳の横で甘く囁くかのように名を呼ばれる

「騎士、着替えたいわ」

拭き終わったタオルをボウルの横に置いて、私の指の形をなぞるかのように触れる騎士に次の行動に移りたいことを伝える。

「あぁ」

そのまま手を握られてそんな遠くもないクローゼット前まで連れていかれる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

幼馴染の許嫁

山見月 あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...