騎士とお嬢様。

奏 -sou-

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第四章

09

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「サフィ、戻るか?」

私は満足だけれど騎士は私の口に運ぶだけでちゃんと食事をとっていない

「ねぇ、騎士は食べないの?」
「あぁ」

テーブルの上を見ても、一人分の食事しか乗っておらず二人分あれば勧められるけど迷った挙句食べないよりマシよねと、

「…騎士、嫌でなければ私の食べて」

恐る恐る顔を覗き込む

「嫌ではない。…サフィが食べさせてくれるなら食べよう。」

否定はすぐに返ってきたが、少し考えて私と目を合わす。

その言葉に、もしかして
「…お腹空いていないの?」と聞けば

「空いている」

間も無く直ぐに返答が返ってきた。

「手にあまり力が入らないの。」
「それでもいい」

食事はしっかり摂ることは大事だと父から教わった私としては見過ごせない、特に朝食となれば。

「…分かったわ。何が食べたいの?」

本当は私を膝から下ろして、ゆっくり食事をして欲しいのが本音だけれど、この調子ではきっと受け入れてくれないだろう。

私がもう少し渋るとでも思っていたのか、少し驚きの目をしていたがすぐに蕩けたような優しい瞳が私を覗き込み

「サフィ、ありがとう。」

騎士が御礼を言う。

今、なんて言ったのかしら?そう問わずにはいられない。いえ、心の中で問いただけで声にはだしていないけど、今日の騎士の表情豊かなことも含めて、こんなこと産まれて初めてくらいに珍しいことが立て続けていて槍でも降る日なの!?と一瞬固まるのも無理はないわ。

だけれど不自然に思った騎士に問い詰められるなんて、面倒臭いし墓穴を掘るのが目に見えているので何もかなったかのように取り繕い、騎士が注文する品を口へと落とさないようにスプーンを持ってない片手で自分の手首をしっかり固定しながら運ぶ

私が食べれなかったスープやパンは完食してもらい、フルーツも私が手をつけたマスカットを食べてもらった。

会話という会話なんてないまま朝食が済み、片腕で私を抱き上げた騎士に寝室へと連れていかれる。

それにしてもおかしい、おかしいわ。

働く人々を見ないどころか、まるで私たちしかこの城には居ないんじゃないのかと、思えるぐらいに静かで人の気配が感じれない。

「ねぇ、騎士」
「なんだ?」

落ち着いた足取りに揺られながら疑問を聞く

「誰もいないの?」
「…いや、いる。」

その間は一体何?

「何故、姿を表さないの?」
「俺が姿を表すなと伝えているからな。」
「…どうして?」
「お前の姿を見せたくない。…俺だけがお前の存在に幸福を感じれればいい。」

聞くんじゃ無かったわ。

「彼らの仕事に支障が出るのなら困るわ」
「サフィ、お前は本当に優しい心の持ち主だ。安心しろ、お前の前に現れないだけでしっかりそれぞれの仕事をこなさせている。」

「そう…それならいいわ」
いや、きっと良くないわよね。

部屋についたら、眠っている間のことと今後について騎士と話さなくては、まずはバルコニーから外の状態を見て言葉を選ぶべきよね。

悶々としながらも、それ以上この状態で話すことも無く黙って早く着かないかと、前を見つめていた。
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