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出来損ないなりの見栄

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主様と出会った日の話

色んな種族が次期王位継承者として
顔見せをする特別な日、がある。

毎年、長い冬が終わったと知らせる
暖かい風がふいた月に開催されているんだ。

勿論この日に、守護頭からの卒業生の上位5人までがその年に参加する、あるじ様の人数名選ばれて顔見せ式に連れていかれるん、だ。

運良く継承者が多ければ上位5人全員が連れて行ってもらえるけど種族が多いからといっても、一度王位継承してしまうと何十年って変わらないから開催されない年もある。

もし開催されない年があったとして、卒業生トップ上位たちは守護頭の教える側になるための道に進むか色んな選択肢を学園が用意してくれるんだ。

上位じゃなくても、それなり選べる道があるみたいだけどドベと呼ばれるワースト3人は選べる道なんて用意されてないし、実家に帰っても身を潜めるかのように過ごすか、守護頭に入った事実を無くして新しい道に進む物も多くはないみたいだ。

何より開催される年で参加する種族が違うから、僕達守護神には会場であるじ様たちを目にするまで何処の種族が今回の王位継承者なのかもわからない。

勿論、権限は全てあるじ様たち側にあって僕たちはあるじ様を選べない。

だけど、みんなは自分に似合ったあるじ様に選ばれるんだって言葉にしなくても見に纏うオーラがキラキラ輝いてる。

そんな中で卒業前の試験でトップ5にギリギリ入った僕は運良く参加できたけど皆みたいに、自分を美しく着飾るためにお披露目会専門の美容室に行くお金が無くて今まで学んだ教科書やノートを見直しながら足に目が行かないように僕を選んで貰えるように出来る限りのことをした。

王位継承者の顔見せ式開催当日

この会場がどんな所で、あるじ様って言われる人達がどんな人達なのかこんな僕でも選んで貰えるんだろうか。

そんな不安しかなくて、みんなは胸張って前を見てるのに僕は今にもここから立ち去りたくて心臓がドキドキと周りに聴こえてるんじゃないか ってくらい自分の中で大きく響いてた。

会場に入ってからあるじ様たちにすぐに会えると思ってたら違うくてバックヤードと言われる場所で静かにあるじ様たちに会える時間までただひたすら息をのんで、待ってた。

チリチリンって鈴がなったと思ったら
「それでは今から守護神を選んでいただく」

司会のその言葉を合図に、閉じてたカーテンが開かれて促されるようにあるじ様たちの前に1人ずつ名前と種族が伝えられると同時にカーテンの向こうに出ていくんだ。

上位1位からあるじ様たちの前に堂々と自信に満ち溢れた顔で出ていくのをみていて、何だか泣きたくなった。

こんなんじゃ、選んでもらえない。って

ふと、先生も言っていた「第一印象で全て判断されます。自分なら相手の期待に想像以上に応えれるというそんなら気持ちにさせるように見せるのです。それが唯一この人生を生き残っていく術です。」って言葉を僕の番が来る前に思い出していた。

その言葉を胸にそして今回人間のままの姿であるじ様たちに見てもらえる。これなら、大丈夫。

「では、最後にナンバー5.種族は狐一族」

ここで足を引きずるなんて絶対にやっはいけない、そんな緊張の中足を引きずらないこと胸を張って歩くことに意識をして、あるじ様たちの前にでた。

前を向いたら目の前にいるあるじ様と言われる方たちはとてつもなく今まで感じたことのない強いオーラを身にまとっていて、まるで別世界のような人たちが座ってこっちを見ていた。

ドックン、ドックン、さっきよりも喉のところまで来てるんじゃないか ってくらいに心臓を吐き出しそうになっている僕の目に見えたのは一人分の空いた席。

そこには4人しかいなくて5人いないことに僕は頭が真っ白になりそうになった。

きっとトイレとか何か急用で少し出て行ってるだけなのかもしれ、ない 

じゃないと、こんなの、、


「それでは、これからナンバー1から特技披露を」

特技披露なんてきいてない。
立ってるだけでいいんじゃなかったの。

みんなで一度端によってナンバー1と言われた犬神家の一族である彼から順番に披露することになった。

僕は得意なことなんてなくて唯一できるのが狐火を灯すことだった。

そこから自己アピールをするためのお題がいくつか出されて少しずつ露になる僕のチカラ。

ここまでなんだって思って欲しくなくっても、あるじ様たちを見ていられなくなるくらいにくすりと鼻で笑われたりため息が僕の出番の時だけ聞こえてくる。

こんな所僕には場違いだという気持ちが強くなる、でも、ずっと何言われても何されても頑張って学園を辞めずに今まで来れた気持ちは、僕を選んでくれたあるじ様に憑いて一生お護りして行くってまだ見ぬ今日を夢見てたから、な、のに

………もう、消えたい。

ここから消えてしまいたいと思ってる僕に追い打ちをかけるかのように司会者が

「では、最後に本来の姿をナンバー1よりお披露目してください。また、そのまま横にずれてその場待機でよろしくお願いします。」

絶望的だ

本来の姿になんてなってしまったら、片足や成長が遅れてることだけではなく毛並みが良くないこと見た目評価だけでも良く保ちたかったのに、全てバレてしまう。

「おい、ドベ。これでわかっただろ?素が出来損ないじゃあな、今後見栄なんて張るなよ。」

ナンバー4の蛇神が、舌先を少しだして嫌味ったらしく笑いながら僕の目を見ていい、なんなら肩をポンって叩いて皆が並ぶあるじ様たちの前に行った。

その言葉が聞こえたのか、あるじ様たちの方からくすくすと笑い声が聞こえてきた。

なんとも言えない背筋が凍りそうな気持ちになる。

冷や汗が止まらない。

ここは、僕のいる場所なんかじゃないんだ。

あるじ様たち5人いれば誰かには憑くことが貰って貰えるんじゃないかって思ってたけど一人いないし、もう結果なんてみえてる。

「それではナンバー5、前に」
「はい」

重くなる足を前に一歩、一歩、ナンバー4の横に立ちこれが最後だからと、震える手をおさえながら、あるじ様たちの顔を見ようと頭を上げる直前、頬を撫でる優しい風が吹いた。
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