14 / 30
穏やかな休日
しおりを挟む
一週間の休暇を終えると、ドロシーの心身の疲れはだいぶ抜けていた。
数日前、食器や家具等の傷や汚れを消したりする以外の、光沢や色彩を蘇らせたりする【修復魔術】を無事に習得できたので、気持ちに晴れやかになったようだ。
そして、精肉店からの依頼も、ドロシーは要領良くテキパキとこなすことができたのだった。彼女は、穴の開いたボロボロのエプロンだけでなく、汚れたまな板や錆び付いた包丁まで、あっという間に綺麗な状態に戻す業務を終えた。
さらに、〈宿屋オーロラ〉でご馳走になった時には、茶渋が付いた食器やシミ付きのテーブルクロスやカーテンの修復を素早く済ました。
ドロシーに修復してもらえる物が増えたことを、クック家の人たちは精肉店の主人以上に、とても喜んでくれたようだ。
それから、ドロシーは修復できるものが多くなっただけではなく、修復の質と言うか【修復魔術】の腕もグンと上がったようなので、受け取る報酬の額も増えたようだった。
公国の季節は初夏に近づき、春が過ぎ去ろうとしていた。
朝と夕方は、冬のように寒いと感じることも無くなり、コートの出番も一気に減るくらいの温かい日が多くなってきたようだ。
山の新緑が眩しい頃、清々しい快晴だ。
〈修復屋〉の休みに、ドロシーは友人のアネットと一緒に、セイホク村の方へピクニックに行った。
ドロシーの相棒であるルルは、〈宿屋オーロラ〉に遊びに行っているらしい。
彼女たちは、公国の極北にあるマッシロ山の麓、ホッポウ魔術学院の近くにある入り江が見える、低い山の山頂に辿り着いたのだった。その入り江は海に繋がっている。
彼女たちがホッポウ魔術学院の初等部に居た時、遠足で名も無い低くて小さな山に行ったようだ。思い出の場所である。
山頂からは美しいフィヨルドを見渡すことができる。山々が連なる間にある緩やかに湾曲している入り江は、まさに絶景だ。
入り江のほとりには、あちらこちらで可愛らしい野花が咲いている。
ドロシーとアネットは、草の上に敷物を置いて座ったようだ。
そして、遠くまで続く壮大なフィヨルドを眺めながら、彼女たちは持ってきたサンドイッチを食べ始めた。
「……懐かしいなぁ」
「うん……、そうね」
ホッポウ魔術学院に通っていた時期は、必死で魔術を習得しようと藻掻いていた故、ドロシーには良い思い出は少なかったらしい。
だが、学院時代の楽しかった記憶も全く無い訳ではないのだ。
彼女たちが居る山頂では、時々心地良い風が吹き、程良く温かい日光が降り注いでいる。
ドロシーもアネットも、とてものんびりとした時間を過ごすことができたようだ。
「ドロシー。しばらく仕事を休んでいたって聞いたけど、今日は無理してない??」
「うん、大丈夫。今は元気だよ~。……あっ、仕事も少しずつだけど、やっと軌道に乗り始めてきたしね」
ドロシーの穏やかな表情とハキハキとした話し方を見聞きして、アネットは「なら、良かった!」と言った。
「貴女ね……、だいぶ落ち込んでいたみたいだったから、すごく心配していたの。仕事も順調そうで、安心したっ」
「アネット、いろいろ気にしてくれて本当にありがとね! ……あっ、そっちの仕事はどう?」
「毎日忙しいけど、何とか乗り切っている感じね。とりあえずっ、まずはできるだけ長く続けていきたい、って思っているわ」
「そっか。相変わらずハードそうだけど、元気に働き続けられているみたいで良かった~」
心が癒やされるような景色を見ながら、ゆっくりと食事ができたので、ドロシーもアネットも良い気分転換ができたようだ。
また、念願だった【修復魔術】の全習得に加えて、久しぶりの余暇を過ごしたことで、心機一転……〈修復屋〉の仕事をより頑張ろうと、ドロシーは強く思ったのだった。
数日前、食器や家具等の傷や汚れを消したりする以外の、光沢や色彩を蘇らせたりする【修復魔術】を無事に習得できたので、気持ちに晴れやかになったようだ。
そして、精肉店からの依頼も、ドロシーは要領良くテキパキとこなすことができたのだった。彼女は、穴の開いたボロボロのエプロンだけでなく、汚れたまな板や錆び付いた包丁まで、あっという間に綺麗な状態に戻す業務を終えた。
さらに、〈宿屋オーロラ〉でご馳走になった時には、茶渋が付いた食器やシミ付きのテーブルクロスやカーテンの修復を素早く済ました。
ドロシーに修復してもらえる物が増えたことを、クック家の人たちは精肉店の主人以上に、とても喜んでくれたようだ。
それから、ドロシーは修復できるものが多くなっただけではなく、修復の質と言うか【修復魔術】の腕もグンと上がったようなので、受け取る報酬の額も増えたようだった。
公国の季節は初夏に近づき、春が過ぎ去ろうとしていた。
朝と夕方は、冬のように寒いと感じることも無くなり、コートの出番も一気に減るくらいの温かい日が多くなってきたようだ。
山の新緑が眩しい頃、清々しい快晴だ。
〈修復屋〉の休みに、ドロシーは友人のアネットと一緒に、セイホク村の方へピクニックに行った。
ドロシーの相棒であるルルは、〈宿屋オーロラ〉に遊びに行っているらしい。
彼女たちは、公国の極北にあるマッシロ山の麓、ホッポウ魔術学院の近くにある入り江が見える、低い山の山頂に辿り着いたのだった。その入り江は海に繋がっている。
彼女たちがホッポウ魔術学院の初等部に居た時、遠足で名も無い低くて小さな山に行ったようだ。思い出の場所である。
山頂からは美しいフィヨルドを見渡すことができる。山々が連なる間にある緩やかに湾曲している入り江は、まさに絶景だ。
入り江のほとりには、あちらこちらで可愛らしい野花が咲いている。
ドロシーとアネットは、草の上に敷物を置いて座ったようだ。
そして、遠くまで続く壮大なフィヨルドを眺めながら、彼女たちは持ってきたサンドイッチを食べ始めた。
「……懐かしいなぁ」
「うん……、そうね」
ホッポウ魔術学院に通っていた時期は、必死で魔術を習得しようと藻掻いていた故、ドロシーには良い思い出は少なかったらしい。
だが、学院時代の楽しかった記憶も全く無い訳ではないのだ。
彼女たちが居る山頂では、時々心地良い風が吹き、程良く温かい日光が降り注いでいる。
ドロシーもアネットも、とてものんびりとした時間を過ごすことができたようだ。
「ドロシー。しばらく仕事を休んでいたって聞いたけど、今日は無理してない??」
「うん、大丈夫。今は元気だよ~。……あっ、仕事も少しずつだけど、やっと軌道に乗り始めてきたしね」
ドロシーの穏やかな表情とハキハキとした話し方を見聞きして、アネットは「なら、良かった!」と言った。
「貴女ね……、だいぶ落ち込んでいたみたいだったから、すごく心配していたの。仕事も順調そうで、安心したっ」
「アネット、いろいろ気にしてくれて本当にありがとね! ……あっ、そっちの仕事はどう?」
「毎日忙しいけど、何とか乗り切っている感じね。とりあえずっ、まずはできるだけ長く続けていきたい、って思っているわ」
「そっか。相変わらずハードそうだけど、元気に働き続けられているみたいで良かった~」
心が癒やされるような景色を見ながら、ゆっくりと食事ができたので、ドロシーもアネットも良い気分転換ができたようだ。
また、念願だった【修復魔術】の全習得に加えて、久しぶりの余暇を過ごしたことで、心機一転……〈修復屋〉の仕事をより頑張ろうと、ドロシーは強く思ったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
百門一新
恋愛
男装の獣師ラビィは『黒大狼のノエル』と暮らしている。彼は、普通の人間には見えない『妖獣』というモノだった。動物と話せる能力を持っている彼女は、幼馴染で副隊長セドリックの兄、総隊長のせいで第三騎士団の専属獣師になることに…!?
「ノエルが他の人にも見えるようになる……?」
総隊長の話を聞いて行動を開始したところ、新たな妖獣との出会いも!
そろそろ我慢もぷっつんしそうな幼馴染の副隊長と、じゃじゃ馬でやんちゃすぎるチビ獣師のラブ。
※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ」「カクヨム」にも掲載しています。
聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し
gari@七柚カリン
ファンタジー
突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。
知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。
正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。
過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。
一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。
父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!
地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……
ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!
どうする? どうなる? 召喚勇者。
※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。
ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません
下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。
旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。
ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも?
小説家になろう様でも投稿しています。
旦那様は魔王様!
狭山ひびき
恋愛
十七歳の誕生日――
誰からも愛されずに生きてきた沙良の目の前に、シヴァと名乗る男があらわれる。
お前は生贄だと告げられ、異界に連れてこられた沙良は、シヴァの正体が魔王だと教えられて……。
じれったい二人と、二人を引っ掻き回す周囲との、どたばたラブコメディ!
【作品一覧】
1、イケニエになりました!?
2、ミリアムのドキドキ大作戦☆
3、放蕩王弟帰城する!
4、離宮の夜は大混乱!?
5、旦那様は魔王様
外伝【魔界でいちばん大嫌い~絶対に好きになんて、ならないんだから!~】※こちらの作品内ではなく別掲載です。
【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?
きゅちゃん
恋愛
残業続きのOL・佐藤美月(22歳)が突然異世界アルカディア王国に転移。彼女が持つ稀少な「癒しの魔力」により「聖女」として迎えられる。優しく知的な宮廷魔術師アルト、粗野だが誠実な護衛騎士カイル、クールな王子レオン、最初は敵視する女騎士エリアらが、美月の純粋さと癒しの力に次々と心を奪われていく。王国の危機を救いながら、美月は想像を絶する溺愛を受けることに。果たして美月は元の世界に帰るのか、それとも新たな愛を見つけるのか――。
王女様は聖女様?おてんば姫の大冒険~ペットのドラゴンが迷子なので冒険者になって探しに行きます!~
しましまにゃんこ
ファンタジー
アリシア王国の第3王女ティアラ姫には誰にも言えない秘密があった。
それは自分が全属性の魔力を持ち、最強のチート能力を持っていた「建国の賢者アリシア」の生まれ変わりであること!
8才の誕生日を境に前世の記憶を取り戻したものの、500年後に転生したことを知って慌てる。なぜなら死の直前、パートナーのドラゴンに必ず生まれ変わって会いにいくと約束したから。
どこにいてもきっとわかる!と豪語したものの、肝心のドラゴンの気配を感じることができない。全属性の魔力は受け継いだものの、かつての力に比べて圧倒的に弱くなっていたのだ!
「500年……長い。いや、でも、ドラゴンだし。きっと生きてる、よね?待ってて。約束通りきっと会いにいくから!」
かつての力を取り戻しつつ、チートな魔法で大活躍!愛する家族と優しい婚約者候補、可愛い獣人たちに囲まれた穏やかで平和な日々。
しかし、かつての母国が各国に向けて宣戦布告したことにより、少しずつ世界の平和が脅かされていく。
「今度こそ、私が世界を救って見せる!」
失われたドラゴンと世界の破滅を防ぐため、ティアラ姫の冒険の旅が今、始まる!
剣と魔法が織りなすファンタジーの世界で、アリシア王国第3王女として生まれ変わったかつての賢者が巻き起こす、愛と成長と冒険の物語です。
イケメン王子たちとの甘い恋の行方もお見逃しなく。
小説家になろう、カクヨムさま他サイトでも投稿しています。
竜帝と番ではない妃
ひとみん
恋愛
水野江里は異世界の二柱の神様に魂を創られた、神の愛し子だった。
別の世界に産まれ、死ぬはずだった江里は本来生まれる世界へ転移される。
そこで出会う獣人や竜人達との縁を結びながらも、スローライフを満喫する予定が・・・
ほのぼの日常系なお話です。設定ゆるゆるですので、許せる方のみどうぞ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる