15 / 42
休日にて
しおりを挟む
八月も終わりに近付いていた頃。トーコの休日、ちょうどオズワルドも仕事が休みだった時のことだ。
昼前に、ケヤキ村の市場で魚を買ってきた後、トーコとエドガーは家に帰ってきた。
トーコは玄関の鍵を開けて、家の中に入った。その後、買ってきた魚を冷暗所に置き、台所で手を洗った。
「ちょっと待っててね、エドガー」
エドガーの寝室に直結する裏口を、トーコは開けようとしていた。
裏口と言っても、エドガー専用が故、城門くらい巨大な横開きの扉である。部屋の端の装置、回転式の取っ手を動かさなければならない。
うっかり力み過ぎて、手のひらに取っ手の跡が付きそうな程、重くて動かしにくいようだ。
裏口の開け締めが終わると、エドガーはゆっくりと自分専用の休憩場所に入った。
すると、台所のテーブルの上に、使用済みらしきカップが一つ置いてあるのに、エドガーだけではなくトーコも気が付いた。
「ったく! いつの間にアヤツめ、合鍵で入りおってっ!」
「……て言いつつ、エドガーは、すんなり許可してくれた、じゃん……?」
「そっ……。それは、だな。お前が、尋常無いくらい切なそうにっ、聞いてきたから仕方無くだっ! 仕方無くぅ……」
「そ、そっか? ありがとう。……て、あれっ? もしかして寝室、開いてる?」
トーコが言っていた『寝室』というのは、もちろん自分の寝室である。
台所の真横の、締めてきた自分の寝室のドアが、なぜか全開していたので、トーコは恐る恐る寝室の中を確認した。
と、その時っ!
「キキアァァァァァァァァーッ!」
「どうしたっ、トーコォォ!?」
トーコの悲鳴を聞いて、エドガーはその場で、精一杯の大声を発した。
「オズワルドさんっ!! ベッドを使うのはいーけど、せめて下着だけはっ、履いてくださいっ!」
顔を真っ赤にしたトーコは、勢いよく台所の方を向いた。
「……ん? 帰って、きた、か……」
オズワルドが目を覚まして、起き上がる気配を察すると、トーコは再び声を出した。
トーコのベッドで、彼は全裸で昼寝していたようだ。
「しっ、下着……、もう履いた?」
「シーツで隠している」
「そっ、そんな話じゃ無いからっ……」
(てかっ! 何で、このヒト、さっきからずーっと冷静なのおぉ!!)
そう心の中で独り言を言いながら、トーコは深呼吸を試みた。
「ひゃっ――」
と、いきなりオズワルドに後ろから抱き締められ、トーコはものすごく硬直した。下着以外の、引き締まったオズワルドの肌が触れているのに気付くと、トーコは恥ずかしさがさらに増した。
「汗臭いかもだし、エドガーも見てるしっ! それと、やっぱ服も着てくださいっ。お願いします……」
「さっき浴室も借りた、すまんな」
「話っ、聞いていますかっ!?」
台所の奥に居たエドガーはと言うと、全ての歯を剥き出しにし、今にもオズワルドに向かおうとする体勢だった。
「……おのれ。この儂に対して、随分と強気だな?」
「まっ、待ってエドガーッ! 暴れて炎を吹くと、家が壊れちゃうからっ!!」
まあ、一度だけだが、ルークと生活していた頃、夜中に盗人が入った時に、エドガーが家を半壊させたことがあったそうだ。
トーコの言葉を聞くと、エドガーは渋々口を閉じて、深い溜め息をついた。
「あああぁ~、分かっておるっ!! 痴話喧嘩は竜でも喰えんわっ。ギザギザ山まで散歩してくるぞっ!」
と言うと、エドガーは口を使って、とっても器用に、自分専用の裏口の取っ手を回し始めた。
「散歩の後、リズの家で昼を食ってくるっ」
エドガーは普段、ヒノキ村で商品にならない生の食材を無償で貰い、その場で三食の食事を取っている。
裕福な国民以外は、村が経営する施設か個人宅で、自給自足の生活をしているそうだ。
あっという間に裏口を開けたエドガーは、そのまま高速で空へと飛び去った。
その後、いつの間にか服を着ていたオズワルドが「閉めねーとな」と呟きながら、横開きの装置を閉めたのだった。
「ありがとう」
「……で。魚は、どーするんだ?」
「えっと。あ、ムニエルにしようかな?」
昼前に、ケヤキ村の市場で魚を買ってきた後、トーコとエドガーは家に帰ってきた。
トーコは玄関の鍵を開けて、家の中に入った。その後、買ってきた魚を冷暗所に置き、台所で手を洗った。
「ちょっと待っててね、エドガー」
エドガーの寝室に直結する裏口を、トーコは開けようとしていた。
裏口と言っても、エドガー専用が故、城門くらい巨大な横開きの扉である。部屋の端の装置、回転式の取っ手を動かさなければならない。
うっかり力み過ぎて、手のひらに取っ手の跡が付きそうな程、重くて動かしにくいようだ。
裏口の開け締めが終わると、エドガーはゆっくりと自分専用の休憩場所に入った。
すると、台所のテーブルの上に、使用済みらしきカップが一つ置いてあるのに、エドガーだけではなくトーコも気が付いた。
「ったく! いつの間にアヤツめ、合鍵で入りおってっ!」
「……て言いつつ、エドガーは、すんなり許可してくれた、じゃん……?」
「そっ……。それは、だな。お前が、尋常無いくらい切なそうにっ、聞いてきたから仕方無くだっ! 仕方無くぅ……」
「そ、そっか? ありがとう。……て、あれっ? もしかして寝室、開いてる?」
トーコが言っていた『寝室』というのは、もちろん自分の寝室である。
台所の真横の、締めてきた自分の寝室のドアが、なぜか全開していたので、トーコは恐る恐る寝室の中を確認した。
と、その時っ!
「キキアァァァァァァァァーッ!」
「どうしたっ、トーコォォ!?」
トーコの悲鳴を聞いて、エドガーはその場で、精一杯の大声を発した。
「オズワルドさんっ!! ベッドを使うのはいーけど、せめて下着だけはっ、履いてくださいっ!」
顔を真っ赤にしたトーコは、勢いよく台所の方を向いた。
「……ん? 帰って、きた、か……」
オズワルドが目を覚まして、起き上がる気配を察すると、トーコは再び声を出した。
トーコのベッドで、彼は全裸で昼寝していたようだ。
「しっ、下着……、もう履いた?」
「シーツで隠している」
「そっ、そんな話じゃ無いからっ……」
(てかっ! 何で、このヒト、さっきからずーっと冷静なのおぉ!!)
そう心の中で独り言を言いながら、トーコは深呼吸を試みた。
「ひゃっ――」
と、いきなりオズワルドに後ろから抱き締められ、トーコはものすごく硬直した。下着以外の、引き締まったオズワルドの肌が触れているのに気付くと、トーコは恥ずかしさがさらに増した。
「汗臭いかもだし、エドガーも見てるしっ! それと、やっぱ服も着てくださいっ。お願いします……」
「さっき浴室も借りた、すまんな」
「話っ、聞いていますかっ!?」
台所の奥に居たエドガーはと言うと、全ての歯を剥き出しにし、今にもオズワルドに向かおうとする体勢だった。
「……おのれ。この儂に対して、随分と強気だな?」
「まっ、待ってエドガーッ! 暴れて炎を吹くと、家が壊れちゃうからっ!!」
まあ、一度だけだが、ルークと生活していた頃、夜中に盗人が入った時に、エドガーが家を半壊させたことがあったそうだ。
トーコの言葉を聞くと、エドガーは渋々口を閉じて、深い溜め息をついた。
「あああぁ~、分かっておるっ!! 痴話喧嘩は竜でも喰えんわっ。ギザギザ山まで散歩してくるぞっ!」
と言うと、エドガーは口を使って、とっても器用に、自分専用の裏口の取っ手を回し始めた。
「散歩の後、リズの家で昼を食ってくるっ」
エドガーは普段、ヒノキ村で商品にならない生の食材を無償で貰い、その場で三食の食事を取っている。
裕福な国民以外は、村が経営する施設か個人宅で、自給自足の生活をしているそうだ。
あっという間に裏口を開けたエドガーは、そのまま高速で空へと飛び去った。
その後、いつの間にか服を着ていたオズワルドが「閉めねーとな」と呟きながら、横開きの装置を閉めたのだった。
「ありがとう」
「……で。魚は、どーするんだ?」
「えっと。あ、ムニエルにしようかな?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います
あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。
化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。
所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。
親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。
そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。
実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。
おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。
そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
王女様は聖女様?おてんば姫の大冒険~ペットのドラゴンが迷子なので冒険者になって探しに行きます!~
しましまにゃんこ
ファンタジー
アリシア王国の第3王女ティアラ姫には誰にも言えない秘密があった。
それは自分が全属性の魔力を持ち、最強のチート能力を持っていた「建国の賢者アリシア」の生まれ変わりであること!
8才の誕生日を境に前世の記憶を取り戻したものの、500年後に転生したことを知って慌てる。なぜなら死の直前、パートナーのドラゴンに必ず生まれ変わって会いにいくと約束したから。
どこにいてもきっとわかる!と豪語したものの、肝心のドラゴンの気配を感じることができない。全属性の魔力は受け継いだものの、かつての力に比べて圧倒的に弱くなっていたのだ!
「500年……長い。いや、でも、ドラゴンだし。きっと生きてる、よね?待ってて。約束通りきっと会いにいくから!」
かつての力を取り戻しつつ、チートな魔法で大活躍!愛する家族と優しい婚約者候補、可愛い獣人たちに囲まれた穏やかで平和な日々。
しかし、かつての母国が各国に向けて宣戦布告したことにより、少しずつ世界の平和が脅かされていく。
「今度こそ、私が世界を救って見せる!」
失われたドラゴンと世界の破滅を防ぐため、ティアラ姫の冒険の旅が今、始まる!
剣と魔法が織りなすファンタジーの世界で、アリシア王国第3王女として生まれ変わったかつての賢者が巻き起こす、愛と成長と冒険の物語です。
イケメン王子たちとの甘い恋の行方もお見逃しなく。
小説家になろう、カクヨムさま他サイトでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる