18 / 42
王宮訪問の前に
しおりを挟む
王宮での食事会の日、エドガーはギザギザ山で、ゆっくりと余暇を過ごすことになった。
一方で、トーコとオズワルドは、その日の夜中にヒノキ村から馬車に乗った。
馬車は、王国の公共交通機関である。
ヒノキ村からイシヅミ町は、デコボコした上に、迂回する細い道が多い。
スギ村まで行き、違う馬車に乗り換えると、ちょうど日の出が見え始めていた。イシヅミ町の家々が遠くに見え始める頃、多少は道がなだらかになった。
そして、エドガー専用の部屋よりも、何十倍も大きな門の前、つまりイシヅミ町の入口にようやく着いたのだった。
朝の早い時間であったが、門は空いていて通れる状態だった。
大きな欠伸をしていた右側の門番に、トーコは「おはようございます」と丁寧に挨拶すると、彼はピクッとして、ぎこちなく挨拶を返しながら、トーコの顔を見た。
(あー。きっと王家の血筋の人だって、すぐに分かったんだな。ふう……)
緊張混じりの溜め息をつきながら、オズワルドと並んで、白い石で造られた建物が続く町の中に入っていった。
コケコッコーッと元気に鳴く鶏の声が、民家のあちこちから聞こえてきた。
普段のイシヅミ町は、とにかく人が多い。住居も店も密集しているが、住民の数もすごい。
町内にいくつかある市場では、たまに近隣諸国の商人も見かける。
トーコは、この町が昔から苦手だ。
無数の人々が居れば、フードを被っていたとしても、自分の髪と眼が注目されてしまう。
その一方で、トーコは周りの人々の容姿《ようし》を気にしてしまう。
小麦色、金色、赤色……の髪。鈍色、琥珀色、蒼色、翠色……の眼。トーコから見れば、この国の人々の姿は、色付けされた石の彫刻のように美しい、と感じる。ものすごく圧倒されてしまうくらいだ。
とはいえ、今は人々が起き始める時間帯だ。早朝のイシヅミ町は、歩いている人はまばらだった。
そのくらいなら、自分に視線を送られるのも、自分の容姿に劣等感を感じてしまうのも、最小限で済む。
(そんなことよりっ、オズワルドさんが褒めてくれたことを、意識した方がいいよねっ? ……うんっ!)
今さらになってしまったが、トーコは、愛する人が自分の容姿を讃えてくれた記憶を思い出し、『気にしない、気にしない』と自分に言い聞かせながら、歩き続けていた。
王宮の裏側が見えてきた辺りに来て、大通りから右に曲がり、細い道に入った。
すると、突き当たりにある、周辺の民家よりも比べ物にならない程、敷地が広い屋敷に着いた。
両開きの門を抜けると、トーコはオズワルドのあとをついて行く。
敷地の東側、小さな家の前に着くと、「ここだ」と言った後、オズワルドはノックをした。
家の中から、男性らしき声が聞こえると、オズワルドはドアを開けたのだった。
「お久しぶりです。朝早くに、スミマセン……」
「おお、気にしなくていいぞ。おはよう、オズワルド」
家の中に居たのは、中年の夫婦だった。トーコは前々から聞いていたが、旧ニレ村消滅後に、オズワルドを育ててくれた伯父の家族だ。
子どもが居ない夫婦であり、大きな武術教室を経営しているらしい。
どうやら親戚の夫婦は、ダイニングルームで、朝食を済ました直後らしい様子のようだ。
「おはようございます。はじめまして、トーコと申します。
……あっ、父は王弟なので、私の顔はご存知だった、でしょうか?」
「そうね。でも、お近くで拝見すると、こーんな可愛らしい方だったとはねっ、うふふ♪」
「あ、とっ、いえっ! 食事会の関係で時間が無くて、本当に申し訳ありません……。お会いできて、良かったです」
「いやいや、またの機会にな。……婚約者殿、よくぞ来てくれた」
「「それでは、失礼します」」
オズワルドもトーコも、親切に対応してくれた夫婦に、礼儀正しく別れの挨拶をした後、足早に大通りの方に戻っていた。
一方で、トーコとオズワルドは、その日の夜中にヒノキ村から馬車に乗った。
馬車は、王国の公共交通機関である。
ヒノキ村からイシヅミ町は、デコボコした上に、迂回する細い道が多い。
スギ村まで行き、違う馬車に乗り換えると、ちょうど日の出が見え始めていた。イシヅミ町の家々が遠くに見え始める頃、多少は道がなだらかになった。
そして、エドガー専用の部屋よりも、何十倍も大きな門の前、つまりイシヅミ町の入口にようやく着いたのだった。
朝の早い時間であったが、門は空いていて通れる状態だった。
大きな欠伸をしていた右側の門番に、トーコは「おはようございます」と丁寧に挨拶すると、彼はピクッとして、ぎこちなく挨拶を返しながら、トーコの顔を見た。
(あー。きっと王家の血筋の人だって、すぐに分かったんだな。ふう……)
緊張混じりの溜め息をつきながら、オズワルドと並んで、白い石で造られた建物が続く町の中に入っていった。
コケコッコーッと元気に鳴く鶏の声が、民家のあちこちから聞こえてきた。
普段のイシヅミ町は、とにかく人が多い。住居も店も密集しているが、住民の数もすごい。
町内にいくつかある市場では、たまに近隣諸国の商人も見かける。
トーコは、この町が昔から苦手だ。
無数の人々が居れば、フードを被っていたとしても、自分の髪と眼が注目されてしまう。
その一方で、トーコは周りの人々の容姿《ようし》を気にしてしまう。
小麦色、金色、赤色……の髪。鈍色、琥珀色、蒼色、翠色……の眼。トーコから見れば、この国の人々の姿は、色付けされた石の彫刻のように美しい、と感じる。ものすごく圧倒されてしまうくらいだ。
とはいえ、今は人々が起き始める時間帯だ。早朝のイシヅミ町は、歩いている人はまばらだった。
そのくらいなら、自分に視線を送られるのも、自分の容姿に劣等感を感じてしまうのも、最小限で済む。
(そんなことよりっ、オズワルドさんが褒めてくれたことを、意識した方がいいよねっ? ……うんっ!)
今さらになってしまったが、トーコは、愛する人が自分の容姿を讃えてくれた記憶を思い出し、『気にしない、気にしない』と自分に言い聞かせながら、歩き続けていた。
王宮の裏側が見えてきた辺りに来て、大通りから右に曲がり、細い道に入った。
すると、突き当たりにある、周辺の民家よりも比べ物にならない程、敷地が広い屋敷に着いた。
両開きの門を抜けると、トーコはオズワルドのあとをついて行く。
敷地の東側、小さな家の前に着くと、「ここだ」と言った後、オズワルドはノックをした。
家の中から、男性らしき声が聞こえると、オズワルドはドアを開けたのだった。
「お久しぶりです。朝早くに、スミマセン……」
「おお、気にしなくていいぞ。おはよう、オズワルド」
家の中に居たのは、中年の夫婦だった。トーコは前々から聞いていたが、旧ニレ村消滅後に、オズワルドを育ててくれた伯父の家族だ。
子どもが居ない夫婦であり、大きな武術教室を経営しているらしい。
どうやら親戚の夫婦は、ダイニングルームで、朝食を済ました直後らしい様子のようだ。
「おはようございます。はじめまして、トーコと申します。
……あっ、父は王弟なので、私の顔はご存知だった、でしょうか?」
「そうね。でも、お近くで拝見すると、こーんな可愛らしい方だったとはねっ、うふふ♪」
「あ、とっ、いえっ! 食事会の関係で時間が無くて、本当に申し訳ありません……。お会いできて、良かったです」
「いやいや、またの機会にな。……婚約者殿、よくぞ来てくれた」
「「それでは、失礼します」」
オズワルドもトーコも、親切に対応してくれた夫婦に、礼儀正しく別れの挨拶をした後、足早に大通りの方に戻っていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
王女様は聖女様?おてんば姫の大冒険~ペットのドラゴンが迷子なので冒険者になって探しに行きます!~
しましまにゃんこ
ファンタジー
アリシア王国の第3王女ティアラ姫には誰にも言えない秘密があった。
それは自分が全属性の魔力を持ち、最強のチート能力を持っていた「建国の賢者アリシア」の生まれ変わりであること!
8才の誕生日を境に前世の記憶を取り戻したものの、500年後に転生したことを知って慌てる。なぜなら死の直前、パートナーのドラゴンに必ず生まれ変わって会いにいくと約束したから。
どこにいてもきっとわかる!と豪語したものの、肝心のドラゴンの気配を感じることができない。全属性の魔力は受け継いだものの、かつての力に比べて圧倒的に弱くなっていたのだ!
「500年……長い。いや、でも、ドラゴンだし。きっと生きてる、よね?待ってて。約束通りきっと会いにいくから!」
かつての力を取り戻しつつ、チートな魔法で大活躍!愛する家族と優しい婚約者候補、可愛い獣人たちに囲まれた穏やかで平和な日々。
しかし、かつての母国が各国に向けて宣戦布告したことにより、少しずつ世界の平和が脅かされていく。
「今度こそ、私が世界を救って見せる!」
失われたドラゴンと世界の破滅を防ぐため、ティアラ姫の冒険の旅が今、始まる!
剣と魔法が織りなすファンタジーの世界で、アリシア王国第3王女として生まれ変わったかつての賢者が巻き起こす、愛と成長と冒険の物語です。
イケメン王子たちとの甘い恋の行方もお見逃しなく。
小説家になろう、カクヨムさま他サイトでも投稿しています。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる