ハンゲツ王国ものがたり

立菓

文字の大きさ
19 / 42

久しぶりの王宮

しおりを挟む
 再び大通りに戻ると、ちらほら軽食屋が開店し始めていた。
 かま焼きで焼き立ての、こうばしいパンの香りが漂っている。

「長旅だったからか、すっごくお腹が空いちゃった」

「そうだな。ゆっくりできそーなとこ、探すか……」

 王宮に向かいつつ、トーコとオズワルドは一軒一軒、店の中の雰囲気を確認していく。

 そして、王宮のすぐ近く、正門がよく見える位置まで歩いたところで、二階建ての広々とした店を見つけた。
 広さの分、客もあちらこちらに分散していたようだったので、二人はその店に入った。


 一階の窓際の席に案内されて、トーコとオズワルドは、テーブルの上の木製のメニュー表を見た。二人とも頼みたい物がすぐ決まると、オズワルドが定員に二人分の注文をした。

 トーコは豆入りの小麦がゆ、塩味のでた豚肉、サラダを……。オズワルドは平たくて少し固いパン、魚醤ぎょしょう味の焼いた羊肉、トーコと同じくサラダを食べた。
 食後には、二人とも店のオリジナルブレンドハーブティーを飲みつつ、スモモソース入りのヨーグルトまで平らげた。

 ひと休みした後の会計の時、オズワルドは「伯父さんとこに、一緒に行ってくれた礼だ」と言って、トーコの分まで支払った。

「あっ、ありがとう」

 トーコがお礼を言った後、店の外に出ると、大通りを歩いている人々が徐々に増えてきたようだ。

「後宮なら、裏口の方が近かったか?」

「え、あっ、そうだね!」

 今日は晴天で、涼しい秋風が程良く吹いている。
 非常に心地良い空気を感じるためか、王宮の周りには散歩している人も数人か居るようだ。


 王宮の裏門の前に着くと、トーコは一気に緊張感に襲われた。大きく深呼吸をすると、「よしっ」と小声でつぶやいた。

「オスカー様を通して、ジョン様には伝えてある。食事会の後に、馬小屋の前に行く」

「分かったよ。お父様に会ってくれるんだね?」

「ああ。……行ってこい」

 向かい合っていたオズワルドは、右手をトーコの片頬かたほほに触れた後、彼女の額に軽く口付けた。



 トーコは裏口から後宮に入ると、王宮で暮らしていた時に使っていた部屋に向かった。庭を抜け、細い通路から廊下ろうかに入ると、彼女は右側の突き当たりまで、早歩きで目指すのだった。

 目的の部屋の近くまで行くと、部屋の前には一人の侍女じじょが待機していた。
 侍女はトーコに気付くと、両手で服のすそをヒラリと少し上げ、腰を下げて挨拶あいさつをした。

 侍女と共に部屋に入ると、トーコは化粧台の前に座った。
 侍女は、トーコと年齢が近そうな少女のようだ。背丈も、トーコとほぼ変わらない。

「……お水、こちらに置いておきますね」

 少し緊張したような、小さくて高い声で話すと、トーコの方を見た。

「ありがとう。あ……先に、正装に着替えようかな」

 トーコは、持参したツバキ油で髪をまとめて、クローゼットまで移動すると、侍女が中を開けてくれた。
 数種類ずつ絹のチュニカとティアラを選びつつ、クローゼットの横の姿見すがたみも見つつ、トーコはひと通り正装に着替えた。
 
 着替え終わると、トーコは再び化粧台の前に座り、ガラスのカップに入った水を飲んだのだった。

(侍女の子……、感じ良かったから、少し安心したな)

 食事会の前に、長めの休憩を取っていたトーコだが、ふと窓の外を見たら、ちょうど太陽が南中の辺りのようだった。

 化粧台前のイスを律儀りちぎに戻すと、トーコは侍女に「もうそろそろ行くね。ありがとう」と声をかけた。
 トーコが部屋を出ようとした時、侍女は再び服の裾を上げて、丁寧に見送りをしたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

王女様は聖女様?おてんば姫の大冒険~ペットのドラゴンが迷子なので冒険者になって探しに行きます!~

しましまにゃんこ
ファンタジー
アリシア王国の第3王女ティアラ姫には誰にも言えない秘密があった。 それは自分が全属性の魔力を持ち、最強のチート能力を持っていた「建国の賢者アリシア」の生まれ変わりであること! 8才の誕生日を境に前世の記憶を取り戻したものの、500年後に転生したことを知って慌てる。なぜなら死の直前、パートナーのドラゴンに必ず生まれ変わって会いにいくと約束したから。 どこにいてもきっとわかる!と豪語したものの、肝心のドラゴンの気配を感じることができない。全属性の魔力は受け継いだものの、かつての力に比べて圧倒的に弱くなっていたのだ! 「500年……長い。いや、でも、ドラゴンだし。きっと生きてる、よね?待ってて。約束通りきっと会いにいくから!」  かつての力を取り戻しつつ、チートな魔法で大活躍!愛する家族と優しい婚約者候補、可愛い獣人たちに囲まれた穏やかで平和な日々。 しかし、かつての母国が各国に向けて宣戦布告したことにより、少しずつ世界の平和が脅かされていく。 「今度こそ、私が世界を救って見せる!」 失われたドラゴンと世界の破滅を防ぐため、ティアラ姫の冒険の旅が今、始まる!   剣と魔法が織りなすファンタジーの世界で、アリシア王国第3王女として生まれ変わったかつての賢者が巻き起こす、愛と成長と冒険の物語です。 イケメン王子たちとの甘い恋の行方もお見逃しなく。 小説家になろう、カクヨムさま他サイトでも投稿しています。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...