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故テオドール王の逸話
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エドガーに関することは、古い文献には、ほとんど記載されていない。
唯一書かれているのは、『雪が降っていた日に、ギザギザ山の土から生まれた』ということだけである。
*******************
テオドール王が健在していた時、彼はエドガーに会うために、数人の従者だけつれて、わざわざヒノキ村まで出向いたことがあった。
当時の竜使いは、故ルークの父親。
四十歳だったテオドール王は、竜使いに頼んで、エドガーに切実な相談をするのを望んでいたのだ。
「エドガーよ。いや、偉大なるエターナル=ドラニコスよ……。どうか、私の悩みを聞いてくれないか?」
『エターナル=ドラニコス』とは、エドガーの本名である。
ある冬の終わり、その日は晴天だった。
竜使いの家の横で、テオドール王はエドガーに話しかけたのだった。
「……私は旧ニレ村の大惨事、イシヅミ町とスギ村の紛争を止められなかったのを、今でも心底、後悔している。本当に、悔いて悔いて仕方が無いのだ……。
慰霊としてのバラ園は、気休めにしかならないかもしれない。旧ニレ村のために考えたこととはいえ、本当にコレで良かったのだろうか?」
「テオドールよ。……確かに、お前は優し過ぎた。周りの顔色を窺い過ぎて、イシヅミ町とスギ村の意見をまとめきれず、どうしても衝突を避けられなかったな。本当に、心が痛むような状況だっただろう……。
だがな……、この予知の力を持つ竜でも、過ちを侵すことはある。だから、そんなに気に病む必要は無いぞ?」
エドガーは座りながら、テオドールに真摯な眼差しを向けた。
黒い竜のレモン色の眼からは、慈悲だけではなく、深い悲しみも伝わってくる。
「儂が若い頃は、一頭だけで、ギザギザ山の山頂付近で暮らしておった。一頭だけが故、寂しくて寂しくて仕方が無くて、ある日、ふっと地上に降りてきたのだ。
……当時、まだ『国』やら『法』やらが全く無い時代だ。
人間に歩み寄り、親しくなりたいがために、各地の一族の長の命で、反逆者への罰として、建物を焼いたり破壊したり、反逆者ごと丸呑みしたりしていたことが、あってな……。若気の至りからか、怖がる民衆は全く眼中に無かった。それが原因で、人々の怒りを買い、最終的にギザギザ山に追いやられてしまったのだ。
今になって考えると、独裁者たちの『傀儡』になっていただけだった。本当に悔やみきれない程、取り返しのつかない愚かなことをした……」
エドガーは、まだまだ話し続けた。テオドール王も、引き続き真剣に耳を傾けている。
「しかしな。小雪が舞う冬の終わりの日、数十人もの従者を連れて、お前の子孫であるサミュエルが、儂のところに訪ねてきた。アヤツがこの王国を建国する、約半年前にな。サミュエルは儂に言った、『罪は赦されて、下で人々が待っているから、どうか再び地上に降りてきてくれないか?』と……。そして、『竜と人は同胞であり、互いに協力しないと、安寧の地は創れない。……今日から、君は私の友だちだ。だから、友だちの証として、人の名で、エドガーと呼ばせてくれないか?』と言ってくれたのだ!
……それからな、お前にも明るい未来が来ることを、すでに儂は知っておるぞ」
エドガーの言葉を最後まで聞いたテオドールは、目を丸くしながら「今、何と……??」と呟いた。
そして、エドガーは優しく微笑みながら、テオドールに再び語りかけた。
「お前が死んだ後になるが、次期国王になるアイザックと弟のオスカーが、キンキラ銀山絡みの紛争を休戦させてくれる。……だから、安心すれば良い」
*******************
テオドール王は病が原因で、四十八歳で亡くなった。そして、三十一歳だったアイザックが王位を継いだ。
エドガーの予言を信じていたためか、テオドール王は、とても穏やかな顔で別世界に旅立ったそうだ。
それから七年後、アイザック王が三十八歳、補佐官のオスカーが三十六歳だった時、エドガーの予言通り、二人は上記の偉業を成し遂げたのだった。
唯一書かれているのは、『雪が降っていた日に、ギザギザ山の土から生まれた』ということだけである。
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テオドール王が健在していた時、彼はエドガーに会うために、数人の従者だけつれて、わざわざヒノキ村まで出向いたことがあった。
当時の竜使いは、故ルークの父親。
四十歳だったテオドール王は、竜使いに頼んで、エドガーに切実な相談をするのを望んでいたのだ。
「エドガーよ。いや、偉大なるエターナル=ドラニコスよ……。どうか、私の悩みを聞いてくれないか?」
『エターナル=ドラニコス』とは、エドガーの本名である。
ある冬の終わり、その日は晴天だった。
竜使いの家の横で、テオドール王はエドガーに話しかけたのだった。
「……私は旧ニレ村の大惨事、イシヅミ町とスギ村の紛争を止められなかったのを、今でも心底、後悔している。本当に、悔いて悔いて仕方が無いのだ……。
慰霊としてのバラ園は、気休めにしかならないかもしれない。旧ニレ村のために考えたこととはいえ、本当にコレで良かったのだろうか?」
「テオドールよ。……確かに、お前は優し過ぎた。周りの顔色を窺い過ぎて、イシヅミ町とスギ村の意見をまとめきれず、どうしても衝突を避けられなかったな。本当に、心が痛むような状況だっただろう……。
だがな……、この予知の力を持つ竜でも、過ちを侵すことはある。だから、そんなに気に病む必要は無いぞ?」
エドガーは座りながら、テオドールに真摯な眼差しを向けた。
黒い竜のレモン色の眼からは、慈悲だけではなく、深い悲しみも伝わってくる。
「儂が若い頃は、一頭だけで、ギザギザ山の山頂付近で暮らしておった。一頭だけが故、寂しくて寂しくて仕方が無くて、ある日、ふっと地上に降りてきたのだ。
……当時、まだ『国』やら『法』やらが全く無い時代だ。
人間に歩み寄り、親しくなりたいがために、各地の一族の長の命で、反逆者への罰として、建物を焼いたり破壊したり、反逆者ごと丸呑みしたりしていたことが、あってな……。若気の至りからか、怖がる民衆は全く眼中に無かった。それが原因で、人々の怒りを買い、最終的にギザギザ山に追いやられてしまったのだ。
今になって考えると、独裁者たちの『傀儡』になっていただけだった。本当に悔やみきれない程、取り返しのつかない愚かなことをした……」
エドガーは、まだまだ話し続けた。テオドール王も、引き続き真剣に耳を傾けている。
「しかしな。小雪が舞う冬の終わりの日、数十人もの従者を連れて、お前の子孫であるサミュエルが、儂のところに訪ねてきた。アヤツがこの王国を建国する、約半年前にな。サミュエルは儂に言った、『罪は赦されて、下で人々が待っているから、どうか再び地上に降りてきてくれないか?』と……。そして、『竜と人は同胞であり、互いに協力しないと、安寧の地は創れない。……今日から、君は私の友だちだ。だから、友だちの証として、人の名で、エドガーと呼ばせてくれないか?』と言ってくれたのだ!
……それからな、お前にも明るい未来が来ることを、すでに儂は知っておるぞ」
エドガーの言葉を最後まで聞いたテオドールは、目を丸くしながら「今、何と……??」と呟いた。
そして、エドガーは優しく微笑みながら、テオドールに再び語りかけた。
「お前が死んだ後になるが、次期国王になるアイザックと弟のオスカーが、キンキラ銀山絡みの紛争を休戦させてくれる。……だから、安心すれば良い」
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テオドール王は病が原因で、四十八歳で亡くなった。そして、三十一歳だったアイザックが王位を継いだ。
エドガーの予言を信じていたためか、テオドール王は、とても穏やかな顔で別世界に旅立ったそうだ。
それから七年後、アイザック王が三十八歳、補佐官のオスカーが三十六歳だった時、エドガーの予言通り、二人は上記の偉業を成し遂げたのだった。
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