174 / 247
14
次から次へと
しおりを挟む結局、放課後まで誰も話しかけてこなかったし、私が行けるタイミングもなかった。
1人でいるのって、こんな辛いんだ。全然楽しいって思えない。
「……」
授業中、必死になって何か悪いことしたのかなって考えたんだけど、何も思い出せないの。
……こんなんだから、避けられるのよ。人を傷つけるようなことして、自分では覚えてないって最悪なパターンね。
放課後に時間取れれば良いんだけど、今日も双子のお迎えがある。長居はできないわ。
「あーずさちゃん~」
「……牧原先輩、また教室入って」
「いいじゃん、いいじゃん。梓ちゃんに早く会いたかったの」
「もう……」
帰り支度をしていると、後ろから牧原先輩がやってきた。いつもなら抱きついてくるのに、今日はない。身構えていた私は、苦笑しながら体勢を崩す。
「ね、今日暇?」
「残念でした、暇じゃないです」
「そっか。じゃあ、明日!」
「明日は空いてますけど……」
でも、明日はマリたちと話したいな。ずっとこんな空気じゃ私が耐えられない。
心なしか、クラスメイトからも避けられてる気がしてしょうがないし。……気のせいだろうけど、今は全部がネガティブになる。
「今度、うちの喫茶店で新作ケーキ入れるんだ。フレジェなんだけど、良かったら試食して欲しいなって」
「え、先輩が作るんですか?」
「そうそう。イチゴたっぷり」
「……食べたい」
「だと思って。ふみかちゃんたちもどう?」
牧原先輩は、そう言いながらふみかとマリのいる方を向いた。由利ちゃんはわからないけど、詩織は部活かな。
ちょっと気まずい。
「え?」
「明日、うちの喫茶店でケーキの試食会するんだけど来ない?」
「ケーキ! 行きたい!」
「ちょっと、マリ」
「あ……」
「どうしたの?」
マリも甘いもの好きだもんね。
でも、ふみかがそれを止めた。すると、ハッとした表情になって下を向いてしまう。
先輩が困ってる。ここは、私は引こう。
「牧原先輩。私は屋上で先輩のケーキいただいたので、今度はふみかたちに作ってください」
「え……。梓、ちゃん?」
「先輩のケーキ美味しいから、みんなに知って欲しい。また誘ってくださいね」
「……梓ちゃん?」
私は、先輩の返事を待たずにカバンを持って教室を出た。
他のクラスメイトも居るし、これ以上教室の空気悪くすることもないよね。幸いなことに、先輩は追いかけてこない。このまま、急いでお迎えに……。
「梓ちゃん」
「……由利ちゃん?」
走って昇降口まで向かうと、そこにはカバンを背負った由利ちゃんが座っていた。私を見て立ち上がったってことは、待ってたのかな。近づくと、気まずそうな顔でこっちを見てくる。
「どうしたの? まだみんな教室に居たけど」
「あ、あの……。今日、1日ごめんね」
「え?」
「梓ちゃんは悪くないんだ。もし、気にしてたらって思って、その……」
「……」
いつもはっきりとした言葉を使う由利ちゃんにしては、珍しい。
急がないと迎え遅くなっちゃうんだけど、急かせないな。せっかく、話しかけてくれてるんだし。
「この後、時間ある? 今日も、お迎え?」
「え、なんで」
「歩きながらでも良い?」
「う、うん」
由利ちゃんに、学童のお迎えの話したことあったかな。
必死に今までの会話を思い出しながら、私は靴を履いた。でも、履き終わっても思い出せない。
それなら、なんとか誤魔化す方法を探そう。
由利ちゃんは、「双子のお世話が可哀想」なんて言う人ではない。わかってるけど、自分の頭がそれを拒絶してくる。
「……あれ、今日も居る」
「え?」
色々考えをめぐらせていると、先に昇降口を出た由利ちゃんが正門を見ながらつぶやいてきた。その声に反応して、正門を見ると……。
「……ミカさん?」
「昨日も居たよね。マリ、サインもらってた」
「そうなんだ。昨日、青葉くんと会えなかったのかな」
「え?」
「昨日、青葉くんのこと探してたみたいで」
「ふーん。連絡してから来れば良いのにね」
「確かに」
そこには、壁に背中をつけたミカさんが居た。
今日も綺麗だな、足がスラッとしてて。どこかの雑誌で、ランウェイするほどの身長ないって書いてあったけど、そんなことないと思う。
「あ、昨日の」
「こんにちは。青葉くん待ちですか?」
「こんにちは。そうなの、今日も時間できたから一緒にご飯食べようかなって」
私と由利ちゃんが近づくと、嬉しそうな顔してこちらを見てきた。
ひゃ~、笑顔も良い。というか、肌綺麗だな。化粧水とか美容液、何使ってるんだろう。
いや、待って。「今日も」ってことは、やっぱり昨日青葉くんと一緒に居たってこと?
「……青葉くんと付き合ってるんですか?」
聞かなきゃ良かった。
そう思った時は、遅かった。
「うん。内緒ね」
ミカさんは、そう言っていたずらっ子のような顔して人差し指を口元に当ててくる。
びっくりしている由利ちゃんと一緒に、私も首を縦に振ってここだけの話であることを了承した。
10
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。
みゅー
恋愛
異世界へ転生していると気づいたアザレアは、このままだと自分が死んでしまう運命だと知った。
同時にチート能力に目覚めたアザレアは、自身の死を回避するために奮闘していた。するとなぜか自分に興味なさそうだった王太子殿下に溺愛され、聖女をざまぁし、チート能力で世界を救うことになり、国民に愛される存在となっていた。
そんなお話です。
以前書いたものを大幅改稿したものです。
フランツファンだった方、フランツフラグはへし折られています。申し訳ありません。
六十話程度あるので改稿しつつできれば一日二話ずつ投稿しようと思います。
また、他シリーズのサイデューム王国とは別次元のお話です。
丹家栞奈は『モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します』に出てくる人物と同一人物です。
写真の花はリアトリスです。
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる