【完結】生活を隠す私と、存在を隠す彼

細木あすか(休止中)

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次から次へと

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 結局、放課後まで誰も話しかけてこなかったし、私が行けるタイミングもなかった。
 1人でいるのって、こんな辛いんだ。全然楽しいって思えない。

「……」

 授業中、必死になって何か悪いことしたのかなって考えたんだけど、何も思い出せないの。
 ……こんなんだから、避けられるのよ。人を傷つけるようなことして、自分では覚えてないって最悪なパターンね。

 放課後に時間取れれば良いんだけど、今日も双子のお迎えがある。長居はできないわ。

「あーずさちゃん~」
「……牧原先輩、また教室入って」
「いいじゃん、いいじゃん。梓ちゃんに早く会いたかったの」
「もう……」

 帰り支度をしていると、後ろから牧原先輩がやってきた。いつもなら抱きついてくるのに、今日はない。身構えていた私は、苦笑しながら体勢を崩す。

「ね、今日暇?」
「残念でした、暇じゃないです」
「そっか。じゃあ、明日!」
「明日は空いてますけど……」

 でも、明日はマリたちと話したいな。ずっとこんな空気じゃ私が耐えられない。
 心なしか、クラスメイトからも避けられてる気がしてしょうがないし。……気のせいだろうけど、今は全部がネガティブになる。

「今度、うちの喫茶店で新作ケーキ入れるんだ。フレジェなんだけど、良かったら試食して欲しいなって」
「え、先輩が作るんですか?」
「そうそう。イチゴたっぷり」
「……食べたい」
「だと思って。ふみかちゃんたちもどう?」

 牧原先輩は、そう言いながらふみかとマリのいる方を向いた。由利ちゃんはわからないけど、詩織は部活かな。
 ちょっと気まずい。

「え?」
「明日、うちの喫茶店でケーキの試食会するんだけど来ない?」
「ケーキ! 行きたい!」
「ちょっと、マリ」
「あ……」
「どうしたの?」

 マリも甘いもの好きだもんね。
 でも、ふみかがそれを止めた。すると、ハッとした表情になって下を向いてしまう。

 先輩が困ってる。ここは、私は引こう。

「牧原先輩。私は屋上で先輩のケーキいただいたので、今度はふみかたちに作ってください」
「え……。梓、ちゃん?」
「先輩のケーキ美味しいから、みんなに知って欲しい。また誘ってくださいね」
「……梓ちゃん?」

 私は、先輩の返事を待たずにカバンを持って教室を出た。
 他のクラスメイトも居るし、これ以上教室の空気悪くすることもないよね。幸いなことに、先輩は追いかけてこない。このまま、急いでお迎えに……。

「梓ちゃん」
「……由利ちゃん?」

 走って昇降口まで向かうと、そこにはカバンを背負った由利ちゃんが座っていた。私を見て立ち上がったってことは、待ってたのかな。近づくと、気まずそうな顔でこっちを見てくる。

「どうしたの? まだみんな教室に居たけど」
「あ、あの……。今日、1日ごめんね」
「え?」
「梓ちゃんは悪くないんだ。もし、気にしてたらって思って、その……」
「……」

 いつもはっきりとした言葉を使う由利ちゃんにしては、珍しい。
 急がないと迎え遅くなっちゃうんだけど、急かせないな。せっかく、話しかけてくれてるんだし。

「この後、時間ある? 今日も、お迎え?」
「え、なんで」
「歩きながらでも良い?」
「う、うん」

 由利ちゃんに、学童のお迎えの話したことあったかな。
 必死に今までの会話を思い出しながら、私は靴を履いた。でも、履き終わっても思い出せない。

 それなら、なんとか誤魔化す方法を探そう。
 由利ちゃんは、「双子のお世話が可哀想」なんて言う人ではない。わかってるけど、自分の頭がそれを拒絶してくる。

「……あれ、今日も居る」
「え?」

 色々考えをめぐらせていると、先に昇降口を出た由利ちゃんが正門を見ながらつぶやいてきた。その声に反応して、正門を見ると……。

「……ミカさん?」
「昨日も居たよね。マリ、サインもらってた」
「そうなんだ。昨日、青葉くんと会えなかったのかな」
「え?」
「昨日、青葉くんのこと探してたみたいで」
「ふーん。連絡してから来れば良いのにね」
「確かに」

 そこには、壁に背中をつけたミカさんが居た。
 今日も綺麗だな、足がスラッとしてて。どこかの雑誌で、ランウェイするほどの身長ないって書いてあったけど、そんなことないと思う。

「あ、昨日の」
「こんにちは。青葉くん待ちですか?」
「こんにちは。そうなの、今日も時間できたから一緒にご飯食べようかなって」

 私と由利ちゃんが近づくと、嬉しそうな顔してこちらを見てきた。
 ひゃ~、笑顔も良い。というか、肌綺麗だな。化粧水とか美容液、何使ってるんだろう。

 いや、待って。「今日も」ってことは、やっぱり昨日青葉くんと一緒に居たってこと?

「……青葉くんと付き合ってるんですか?」

 聞かなきゃ良かった。
 そう思った時は、遅かった。

「うん。内緒ね」

 ミカさんは、そう言っていたずらっ子のような顔して人差し指を口元に当ててくる。
 びっくりしている由利ちゃんと一緒に、私も首を縦に振ってここだけの話であることを了承した。

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