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どうやら、私は盲目の愛というものだったらしいです
しおりを挟む目を覚ました私は、ボーッと天井を眺めていた。首を動かす限り、人は居ない。だから、きっとさっきの痛みや苦しみは夢で、まだ出産して居ないんだと思ったの。
でも、そうじゃなかった。お腹はペッコリ凹み、全身の血を失ったかのように寒かったから。
だとすれば、私の赤ちゃんはどこ!? そう思い起き上がるとやはりフラッと立ちくらみのような症状に顔をしかめた。
外を見ると、先ほどまで明るかったのに真っ暗だわ。それに、電気もついて……!?!?!?
『えっ、お、お、お義父様、お義母様! どうなさったのですか!?』
そこで、私は部屋に入らず入り口付近で待つ王様と王妃様を視界に入れた。
どうしてこんなところにいらっしゃるの? 公務は? こんなところに来てる時間はないはずなのに……。
何事かと思って大声を出すと、それを合図に部屋の中へワラワラとサフランたちが入ってくる。その腕には、赤子が。すぐにわかった。
私は、起きている我が子に向かって手を伸ばす。
ああ、可愛いわ。初めまして、可愛い子。お名前はどうしましょうか。いいえ、そんなことよりも今はお顔を見せてちょうだい。
小さな手足、モゴモゴと動かすお口もすんすんしているお鼻も全てが私の心を満たしてくれる。この匂いは何かしら、とても落ち着くわ。
……いいえ! それも良いけど、今はこっちだわ。
『あ、あの……お義父様、お義母様? どうぞ、お入りになって……』
『大っ変申し訳ない。本当はラベンダーさんが落ち着くまで私たちは会うのを遠慮しようと思ったんだが……ヴァレリーの話を聞いてな』
『ごめんなさい、ラベンダーさん。ヴァレリーを捕まえておいたはずなのに、急ぎの仕事を確認しているところで居なくなっていたの』
『おい、ここで言い訳なんて言うんじゃない』
『……ごめんなさい』
『あ、あの、まずは、お顔をあげてください……』
私は我が子を腕の中に抱きながら、頭を下げる王様と王妃様へと話しかける。勝手に入って良いのに、どうやらしばらくそこで待っていたらしい。王族がそんな簡単に頭を下げたらダメよ。
腕の中では、子どもが寝息を立てて静かにしている。ああ、何もかもが可愛いわ。これが、我が子っていうものなのね。……って、待ってよ。だから、今はこっちだってば!
『では、失礼して。……まずは、私たちの孫を産んでくださりありがとうございます』
『ありがとうございます。しかも、とても可愛い女の子を……先にお顔を見てしまってごめんなさいね』
『こ、こちらこそ、ありがとうございます……?』
ん? 返事の仕方がわからないけど、これで合っている?
不敬があったら大変! と思って話しているから気が気じゃないわ。しかも、周囲にはメイドたちも居るし。
なんて、私の焦りはあまり気にされていないよう。それよりも、お顔を上げた王様も王妃様の表情が暗い方が気になる。
私は、そんなことを思いつつもベッドの上で我が子を抱く。
『なのに、ヴァレリーがラベンダーさんに失礼なことを言って』
『サフランから聞いた時は、心臓が止まるかと思いましたわ。2日もかけて出産を乗り越えた方に、そんな言葉をかけるなんて。王族としての恥だわ』
『……ああ、では、ヴァレリー様のお言葉も夢ではなかったのですね』
『……』
『……』
私の言葉を聞いたお2人は、キョトンとしたお顔でこちらを見てきた。
そんな表情を向けられる意味が分かってしまう私は、結婚した前後のヴァレリー様を思い出す。
デートは、必ず遅れてくるヴァレリー様。
自分の要求が通らないと、不機嫌になるヴァレリー様。
王族でいらっしゃるのに、いつも私のお財布で買い物をするヴァレリー様。
私ばかり愛の言葉を紡ぎ、一度も「愛している」と言ってこないヴァレリー様。
口を開けば、王族自慢をするヴァレリー様。
お店の方やメイドたちには口が悪く、王宮職務をする方にはヘコヘコするヴァレリー様。
私は、そんな彼に盲目だった。
今思えば、何度も王様と王妃様に「ヴァレリーで良いの? サミュエルじゃなくて?」と、第二王太子のサミュエル様のお名前を言われてたわ。どうして、それを今になって思い出すのかしら?
それに、いくら考えても、ヴァレリー様の好きなところが見つからない。……うーん。ああ、顔は好きだわ。でも、性格はずっとずっとサミュエル様の方が良い。
『……恋は盲目なんて言葉がありますけど、私たちももう少し強く言っておくべきでした』
『アレは、王太子として相応しくない。ただ、サミュエルが勉強するのに目立ちたくないと言いアレを第一王太子にしているが……。いや、ラベンダーさんがそういう地位を気にして結婚したとは全く思ってないから、安心してくれ。そもそも、私は何度も君にサミュエルにこの地位を譲ると話しているしな』
『……は、はい。あの、申し訳ないのですが、いくら考えてもなぜヴァレリー様が好きだったのか思い出せないのです……』
なにか、憑き物が取れたように感じるわ。
これも、この子のおかげかしら?
そんな私の様子に、驚きつつもホッとする王様と王妃様が印象的だった。
そして、メイドたちが全員安堵したようなお顔をして……みんなも、もしかしてヴァレリー様の性格をわかってらしたのかしら?
そういえば、何度も「貴女にはもっと良い人が居る」と言われた記憶しかない。
『本当に、あんな子にこんな良い子が嫁いできてくれて……感謝してもしきれないのは事実だけど、こうやって目が覚めてくれて嬉しいわ』
『もちろん、これからはどうするのか君の良いようにして良い。離縁してもここに住み続けて良いし、お金などの心配はしなくて良いし、時期がきたらあいつも追い出すし』
『もちろん、結論は急がないわ。ごめんなさいね、産褥期にこんなお話……。しかも、子どもに聞かせて』
『……あ、そうか。結婚してたのよね、忘れていたわ』
よくわからない私は、今頭にあることを口にした。
すると、そこに居た全員が……今まで暗い雰囲気だった全員が吹き出すように笑い出す。
腕の中の我が子は……いつの間にか眠っていた。ああ、可愛い。
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