愛されたくて、飲んだ毒

細木あすか(休止中)

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割り切りましょう

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 次の日の朝。
 今ちょうど、宿泊した場所から少し離れたお店で朝食を食べ終わったところなの。イリヤと2人でね。

 お店は、貴族専用のプライベートレストランっていうのかな? 個室になってて、人の目を気にせずに食事ができるところだった。……こういうところって、伯爵以上じゃないと使えないはずなんだけどな。ドミニクが予約したんだとか。

「……ねえ、イリヤ」
「はい、なんでしょうか」

 こうやってイリヤとテーブルで普通に対面してるけど、ここに来るまでが大変だったんだから。
 私は一緒のテーブルで良いって言ったのに、「イリヤは使用人です」って引かなくて。こういうところで、使用人も何もないでしょう? 旅ってそういうものだと思うの。
 もちろん、私が勝ったわ。「座らなかったら、今日の夜はドミニクと同じベッドで寝てね」って言ったら秒で座ったの。真っ青になってたから、結構効いたんだと思う。……相当嫌いなのね。ごめんね、イリヤ。

 で、そのドミニクなんだけど、昨日の夜から帰ってこないのよね。「ちょっと出かけてくる」って言ったきり、今の今まで連絡なし。

「ドミニクって、どこに行ったの?」
「おかわりはいかがでしょうか?」
「え、あの、ドミニクは……」
「どうせ、どこかで女でも引っ掛けてるんでしょう。お嬢様が気にすることではありません」
「……引っ掛け?」

 引っ掛けって何?
 もしかして、前みたいにお胸の大きな女性を引き連れてるとか!? でも、どうして夜に? この辺、夜はお店が開いてないと思うんだけど。

 イリヤの方を見ると、「興味ありません」みたいな顔してメニュー表に視線をやっている。
 イリヤが大丈夫って言えば、大丈夫かな。ドミニクって、心配されるのあまり好きじゃないものね。でも、戻ってきたら怒ってやるんだから! 次からは、ちゃんと行き先を言いなさいって。

「イリヤは、何を食べようかなあ。もう一回パンケーキでも」
「あ、じゃあ私も……いえ、でも太っちゃうかも」
「朝はたくさん召し上がっても問題ないですよ。アインスが言ってました、朝3、昼2、夜1って」
「何その数字?」
「食べる量らしいです。朝3の量を食べたら、昼はその2/3、夜は朝の1/3って感じで。そうすれば、健康です!」
「そうなの? 私、いつも夜をたくさん食べてたかも」
「お嬢様は、召し上がれるのでしたらたくさん召し上がってください。でも、朝だけ多く召し上がることを意識してみてくださいな」
「わかったわ」

 そういうのがあるのね。知らなかったわ。
 アインスとイリヤって仲良しだな。いつも一緒に居るもんね。アインスが宮殿に行っちゃって、イリヤは寂しがってないかな。私がその穴を埋められれば良いのだけど……。

 その後、私はチョコがけパンケーキ1枚、イリヤはフルーツパンケーキタワーを1セット食べた。……フルーツパンケーキタワーって1セットで2人前って書いてあったんだけどな。その前に、サンドイッチ3人前といちごパフェ、メープルパンケーキも1枚食べてたんだけどな。
 ってことは、イリヤのお昼ご飯はサンドイッチ1人前とパンケーキタワー2/3に、いちごパフェ2/3に……それだけで胸焼けがしそうだわ。病み上がりだから?


***


「あ、ドミニク!」
「おー、アリスはよー」
「どこ行ってたの? 心配したんだけど」

 レストランのロビーへ行くと、ソファに座っているドミニクを発見した。
 今さっき座った感じじゃない。結構くつろいでるし、ソファテーブルに置かれている飲み物は空になってるし。氷だけが、グラスの中に残っているのもそう。
 彼は、ストローを使わない派なのね。覚えておきましょう。

 ともかく、元気そうで良かった。
 見る限り怪我とかしてる様子はないし、いつものドミニクって感じ。強いて言えば、いつもより心持ちスッキリしているような?

「一発ヌいてき「お嬢様、お外は晴れていますよ! 行きましょう」」
「あ、うん。でも、ドミニクが次また急に居なくなったら寂しいもの。お話をさせて頂戴」
「イリヤが居るから良いでしょう」
「2人揃ってないと嫌! ドミニク、どうして急に居なくなったの!」
「んなの、決まってらぁ。アリスと同じ部屋で寝れねえからだよ」
「え……」
「寝れるわけないだろ。目ェ冴えるわ」

 え、私のせい?
 もしかして、いびきすごい? 歯軋りとか寝言がひどいとか! まさかまさか、寝相の問題かも!?

 昨日、イリヤと一緒に寝たんだけど、ものすごく迷惑をかけてしまったかもしれない。朝起きた時、イリヤの目の下のクマが酷い気がしたのよね。すぐお化粧してたから、ちゃんとは見てないけど。
 
「イリヤは、お嬢様と一緒のベッドでスヤってました。幸せ」
「あ、何それズリィ! 俺も、アリスと同じ毛布にくるまりてぇ」
「逃げたどこかのお馬鹿さんには、お嬢様は渡しません」
「逃げてねえし。一発ヤってたら、朝になってただけだって。てか、アリス! 男とベッドに入るって、お前正気か?」
「イリヤは女の子でしょ? それより、話を逸らさないでよ!」
「そらしてねえし。……もう良いや、香水見てこようぜ。パトなんとかと一緒にやってる企画書の参考になるだろ」
「パトリシア様! 絶対わざと言ってる!」
「ははっ」
「そのプンプンした表情、今度絵にしましょう」
「しなくて良い!」

 絶対逸らしてる!
 ここのお金も支払いが済んでたし、どうせドミニクがやったんでしょ? それくらいは教えて欲しかったんだけど。

 なぜか、ドミニクは私の背中を押して前へと進めようとしてくる。
 香水は見たいけど、それを優先させて大丈夫なの? まさか、それが隣国に来た目的ってわけでもないでしょ。

「まあ、冗談はさておき、香水は見とけ。本場だから、得られるもんがあるだろ」
「そのためにここまで来たの?」
「まさか。でも、今はまだ時間が余ってんだ。ちょっくら暇潰ししようぜ。どっか行きたいところとかないのか?」
「イリヤは、画材屋さん行きたい」
「お前には聞いてねえ! 後で1人で行け」
「そのつもりですよーだ」

 と、やっぱり目的は教えてくれそうにない。
 これって、私が折れた方が良いの? ドミニクは手強いわ。いくら聞いても、教えてくれないんだもの。
 イリヤの方を見ると……あ! 目を逸らした。ってことは、目的がなんなのかわかってるのよね。今日の夜、絶対吐かせてみせる!

 ということで、今日は純粋にカウヌ国を楽しむ日にしましょう。
 割り切らないと、ずっとモヤモヤしちゃうし、それは性に合わないもの。

「でも、行きたいところって急に言われても……」
「さっき通った本のお店で地図でも買いましょうか?」
「おすすめの観光スポットなら、教えられるぜ。貴族巡りしても良いぞ。カウヌの貴族は、屋敷を開放させて見学やお茶できるようになってるところが多いから」
「へー、なんで?」
「おもてなし文化っていうんだろうな。入るもの拒まずって感じで」
「それはそれで、セキュリティとか怖いな」

 ドミニクとイリヤが話す中、私は1人で行きたいところを考えていた。
 香水は寄りたい。でも、それはすぐ終わっちゃうわよね。となれば、観光か。そういえば、昔はよくカウヌの文化が面白くて色々文献を読み漁ったな。一番詳しく書かれているのは、ちゃんとした本じゃなくて観光誌だった。

 シャラナ湖なんて、どうかしら? 写真では底が見えるほど綺麗だったけど、あれは本当なのかどうなのか知りたいわ。
 それとも、ミュージカルを観に行っても良いかも。

 あれ、そういえば誰かとこんな会話をした気がする。
 シャラナ湖、シャラナ湖、シャラナ……。

「あ! ドミニク、行きたいところがあるわ」

 そうよ、せっかく来たなら会ってみたい。
 以前はアリスの姿で会ったけど、おもてなし文化ならベルの姿で行っても問題ないはず。もし、無理ならシャラナ湖に行ってミュージカルを見に行きましょう。

 いえ、それよりも、ドミニクが場所を知ってるかが問題だわ。
 
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