【完結】推しを死亡フラグから救済したら溺愛ルートに入りました⁉︎

白(しろ)

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第一章

変わり始めた日常

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 雑貨屋の朝は早い。というのは嘘だ。どちらかといえば夜が長い。それで朝がギリギリだ。

 それでもここ最近は規則正しい生活が送れているなと、部屋の格子状の窓を開けながら思った。
 外は快晴。気温は前世でいうところの小春日和に近い感じだ。とても過ごしやすいいい気候である。窓から入る風にレースカーテンが攫われ、家の中を爽やかな空気が駆け抜けていく。
 今日もなんとなくいい日になりそうだとオレは笑って、朝の準備に取り掛かった。

 洗面台に行って顔を洗う。濡れた顔をタオルで拭いて鏡を見ると、二十年経ってようやく見慣れた自分の顔があった。
 癖のある短い茶髪に白い肌、それと少しそばかすの浮いた顔。目は大きくて垂れ目で、色は緑。うん、今日もオレの顔はリアス・オルロンだと頷いた。
 それから脱衣場に行って、洗濯機の蓋を開けた。

 ここは日本が作ったゲームの世界だ。
 だから日常生活を送る上での家電がなんと存在する。全ての動力は魔力になるのだが、そこはいかにもファンタジーっぽくてオレは好きだ。

「よし、洗濯終わってるな。これを干して、その次は朝飯作って、次は掃除か」

 声に出すと思考が整理しやすい。
 効率のいい順番を頭で考えながら洗濯物をカゴに入れて、それから屋上へと続く階段を上がる。蝶番の軋む音を聞きながら扉を開けると、気持ちのいい空と風がオレを出迎えてくれた。

「いい天気じゃん」

 鼻歌混じりに洗濯物を干す。一人暮らしの時よりも当然物量が増えたけれど、別に手間とは思わない。むしろ推しのお世話ができていると思えばこれは最高の推し活である。
 洗濯物を干し終えたら次は朝食の準備だ。

 一人の時は料理なんて面倒でする気が起きなかったが、これも二人になるとどうしてだかやる気が出る。これもあれだ。
 推しの健康はオレが守る、という確固たる信念に基づいたやる気だろう。

「昨日はたまごサンドだったから、今日はツナマヨだな」

 さすが日本が作ったゲーム。ユーザーを飽きさせないために料理というサブコンテンツまで用意している。
 料理を極めればステータスも上がるし、攻略対象との親密度を上げるきっかけにもなる。前世は料理による親密度ボーナスに結構頼ってたな、なんてことを思い出しながらキッチンで包丁を使う。

「……どうして神は人間を玉ねぎ切ると涙出る構造にしたんだ」

 みじん切りにした玉ねぎを見下ろし、滲む涙を拭う。
 そんなこんなで料理も完成に近付いて、あとはスープを温めるだけだ。鍋を火に掛けてからオレは一度キッチンから離れる。向かう先はオレの部屋だ。

「おーい、ルーク飯だぞ起きろー」

 自分の部屋なのに一応ノックする。着替えてたら死ぬからな、オレが。尊さで。
 それでも返事はない。きっとまだ寝ているのだろう。
 そう判断して扉を開ける。我が家にある唯一のベッドでルークが寝るようになってから一応部屋は片付けたが、それでも雑多な印象を与えてしまうのは収まりきらない本のせいだろう。

 いつか本棚も買わないとなぁ、と今まで何度も思ったことを頭の中で繰り返しつつベッドに近付く。
 オレよりも二十センチ程背が高いルークにとってこのベッドは小さい。必然的に足を曲げ、体を丸めながら寝ている姿に罪悪感が湧く。

「……本棚よりベッドが先だな、うん」

 案外近付いてもルークは起きない。これが始めは少し意外だった。イメージでは葉の落ちる音でも起きそうだからだ。

「ルーク。おーい、朝だぞー。ルークー」

 始めは控えめに声を掛ける。だが起きない。頭の先まで掛布にくるまって寝ている。

「ルーク、朝だぞ。おい! ルーク!」

 次は大声で、その次は体を揺らす。それでも起きない。どういうことなんだ。
 仕方がない。オレはそう思いながら掛布を剥ぎ取ってルークの耳に顔を寄せた。

「わーーー‼︎」
「黙れ」
「理不尽じゃない?」

 瞬時に目を覚ましたルークに顔面を掴まれる。これがいつものパターンと化しつつあった。

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