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第一章
いいお出かけでした
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案の定拗ねてしまったルークが大幅で歩きだす。身長差と足の長さ、そして持久力の違いでルークがあっという間に先に進み、必死になって後を追いかける。
許してもらえたのはオレが酸欠になりそうなくらい走ったあとだった。
「ポタージュにするから許して」
息も絶え絶えに伝えると、ルークの足はようやく止まった。
なんやかんやいっても世界を飛び回ってきた男だ、オレは。どんなダンジョンも気配を消すチートマントのおかげで踏破できるくらいには体力はある。
それでもルークの足元に及ばなかった。無様に咳き込むオレを見下ろし、ルークの口角が愉快そうに上がる。
「無様だな」
もう今日の晩飯本当に豆のスープにしてやろうかな。
こんなやりとりをしながらダンジョンを進み、やがて森の開けた場所に出た。そこだけぽっかりと円状に森が広がっており、太陽の光が降り注いでいる。
ここが森の最深部だ。
「……花なんてどこにもないぞ」
辺りを見渡したルークが呟く。
「それに魔物の気配もない。あれだけ襲ってきていたのに」
「そりゃもっと強いのがここにいるからな」
訝しげな視線がオレを見る。その視線を受け止めながら鞄を探り、二重構造になっている球体を取り出した。
「なんだそれは」
「言ったろ、ここ難易度ちょっと高いって」
そう言って球体を空に向かって投げると、それは重力によって落ちてくることはなくその場で止まった。
そして空が歪んだと思った瞬間、辺りが暗くなる。
上を見て剣を構えるルークの腕を取り、問題ないと伝えるように首を振った。完全な闇が襲ってから数秒後、今度は足元から上に向かって柔らかな光が溢れ出す。
光の粒子が蛍のように広がる景色は、何度見ても美しいと思えた。
「なんだ、これは」
「水晶花だよ。夜にならないと出てこない花なんだけどさ、普段はあいつが乱獲されねえようにって守ってる」
「あいつ?」
「上見てみ」
「!」
ルークが驚くのがわかった。
「わかるわー、驚くよな。オレも初めて見た時びびったもん」
空と思っていた空間にいたのはくらげの形をした大型の魔物だ。けれど敵意はなく、花を乱獲さえしなければ襲ってくることはない。
「……さっき何を投げた」
「月呼びの石。こいつの好きな素材で作られてる特殊な石でさ、あれがないと花取らせてくれないんだよな」
まるで猫にまたたびのような効能だとオレはここに来る度に思っている。
この魔物は朝と夜を入れ替える力を持っている。
普段はずっとここを朝にして、誰の気配もしないときに夜にして花の光を楽しんでいるらしい。普段から独り占めしているわけだが、なぜか月呼びの石を持ってきた時だけ花を取らせてくれるのだ。
淡く温かな光を生む花の側に膝を着き、茎からそっと手折って持ってきていたガラス瓶に入れる。瓶の中で淡く光る姿はとても美しくて、このまま飾っていたくなるほどだ。
「よし、採取終わり。帰ろ」
「一輪しか取らないのか」
「二つ取ったらあれと戦う羽目になるので嫌です。あいつめちゃ強えんだから」
魔物は何もしてこない。ただオレは知っている。これでもう一つと欲を出した瞬間、即死級の攻撃を仕掛けてくるということを。
「食らったことがあるのか?」
「ないよ、知識があるだけ」
水晶花の入った瓶を鞄に入れて、二人で少し離れる。
すると夜のように暗かった世界が途端に明るくなって、無数に輝いていた花が跡形もなく姿を消す。
ファンタジーの世界に生きているとはいえ、こういう現象を見る度に少し感動してしまう。
「どうだった?」
感動の余韻が消える前にルークを見上げる。
俺の問いかけの意味が分からないとでもいいたげに眉を寄せている姿を見て、少し笑う。
「綺麗だっただろ、花」
「……それがどうした」
「いーや? 綺麗って思えてんならそれでいいよ」
素直じゃないが、それでも自然の美しさを受け入れているルークに内心安堵する。
ルークの人間らしさがもっと見たいなと思うと同時に、やはり幸せになってほしいなとも思う。
オレと過ごす時間が、彼にとっていいものであればいいなと祈りながら歩きだす。
「晩飯はスープ以外だと何食いたい?」
「なんでもいい」
「それが一番困るんだよなぁ」
なんてことない会話をしながら帰路へと着く。
この日常は、案外とても穏やかで心地がいい。
ルークもそうだといいな。そう思ってもらえるように、頑張ろう。
許してもらえたのはオレが酸欠になりそうなくらい走ったあとだった。
「ポタージュにするから許して」
息も絶え絶えに伝えると、ルークの足はようやく止まった。
なんやかんやいっても世界を飛び回ってきた男だ、オレは。どんなダンジョンも気配を消すチートマントのおかげで踏破できるくらいには体力はある。
それでもルークの足元に及ばなかった。無様に咳き込むオレを見下ろし、ルークの口角が愉快そうに上がる。
「無様だな」
もう今日の晩飯本当に豆のスープにしてやろうかな。
こんなやりとりをしながらダンジョンを進み、やがて森の開けた場所に出た。そこだけぽっかりと円状に森が広がっており、太陽の光が降り注いでいる。
ここが森の最深部だ。
「……花なんてどこにもないぞ」
辺りを見渡したルークが呟く。
「それに魔物の気配もない。あれだけ襲ってきていたのに」
「そりゃもっと強いのがここにいるからな」
訝しげな視線がオレを見る。その視線を受け止めながら鞄を探り、二重構造になっている球体を取り出した。
「なんだそれは」
「言ったろ、ここ難易度ちょっと高いって」
そう言って球体を空に向かって投げると、それは重力によって落ちてくることはなくその場で止まった。
そして空が歪んだと思った瞬間、辺りが暗くなる。
上を見て剣を構えるルークの腕を取り、問題ないと伝えるように首を振った。完全な闇が襲ってから数秒後、今度は足元から上に向かって柔らかな光が溢れ出す。
光の粒子が蛍のように広がる景色は、何度見ても美しいと思えた。
「なんだ、これは」
「水晶花だよ。夜にならないと出てこない花なんだけどさ、普段はあいつが乱獲されねえようにって守ってる」
「あいつ?」
「上見てみ」
「!」
ルークが驚くのがわかった。
「わかるわー、驚くよな。オレも初めて見た時びびったもん」
空と思っていた空間にいたのはくらげの形をした大型の魔物だ。けれど敵意はなく、花を乱獲さえしなければ襲ってくることはない。
「……さっき何を投げた」
「月呼びの石。こいつの好きな素材で作られてる特殊な石でさ、あれがないと花取らせてくれないんだよな」
まるで猫にまたたびのような効能だとオレはここに来る度に思っている。
この魔物は朝と夜を入れ替える力を持っている。
普段はずっとここを朝にして、誰の気配もしないときに夜にして花の光を楽しんでいるらしい。普段から独り占めしているわけだが、なぜか月呼びの石を持ってきた時だけ花を取らせてくれるのだ。
淡く温かな光を生む花の側に膝を着き、茎からそっと手折って持ってきていたガラス瓶に入れる。瓶の中で淡く光る姿はとても美しくて、このまま飾っていたくなるほどだ。
「よし、採取終わり。帰ろ」
「一輪しか取らないのか」
「二つ取ったらあれと戦う羽目になるので嫌です。あいつめちゃ強えんだから」
魔物は何もしてこない。ただオレは知っている。これでもう一つと欲を出した瞬間、即死級の攻撃を仕掛けてくるということを。
「食らったことがあるのか?」
「ないよ、知識があるだけ」
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「どうだった?」
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「綺麗だっただろ、花」
「……それがどうした」
「いーや? 綺麗って思えてんならそれでいいよ」
素直じゃないが、それでも自然の美しさを受け入れているルークに内心安堵する。
ルークの人間らしさがもっと見たいなと思うと同時に、やはり幸せになってほしいなとも思う。
オレと過ごす時間が、彼にとっていいものであればいいなと祈りながら歩きだす。
「晩飯はスープ以外だと何食いたい?」
「なんでもいい」
「それが一番困るんだよなぁ」
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