【完結】推しを死亡フラグから救済したら溺愛ルートに入りました⁉︎

白(しろ)

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第一章

小さな違和感と伝えるべき感情

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 想像とは違った反応に安堵したが、同時に少し違和感を覚えた。この違和感の正体はわからないけれど、なんとなくよくない傾向な気がした。

「ルーク、オレお前の顔以外も好きだぞ」
「何を言い出すんだ」

 本から視線を外さないままルークが呆れたように呟く。

「朝弱いとことか、苦くて匂いのある野菜は嫌いなとことか、理不尽にキレるとことかも好きだ」

 視線が外れ、オレを見る。
 得体の知れないものを見るような目に、オレは口角が緩く上がった。

「ルークっていう存在が好きだよ。その中に顔が含まれてるだけ。オレはルーク・ディベットっていう人間が好き」

 そこまで言うと、ルークは短くなった髪を乱した。
 やがて大きく息を吐き、またオレを見る。

「お前は恥ずかしくないのか」
「何が?」
「好きだなんだと口にすることがだ」
「全然。だって言わないともったいないじゃん。言えば伝わることなのにさ」

 思い出すのは前世だ。
 オレの前世はサラリーマンで、普通の人間だ。家庭環境も何もかもが普通だった。
 でも死因だけは多分普通じゃないな。だって交通事故だし。
 突然のことすぎて、誰にも何も言えずに死んでしまった。

「死んじゃったらさあ、何も伝えらんねえじゃん。だからオレは思ったことは伝えるようにしてる。あ、もちろん空気は読んでるぞ!」
「……お前はやはりおかしい」
「どこがだよ。オレは普通ですー」

 室内に流れる空気が穏やかだ。
 こんな空気感が好きだ。また鼻歌でも口ずさもうかと思ったところでふと八百屋の店主の顔を思い出した。それに「あ」と声を出すと、ルークが「なんだ」と聞いてくる。

「祭り行こう、明日」
「祭り?」
「おう、王都の祭りは賑やかだぞ。一緒に店回ろう」

 オレはルークに普通の暮らしというものを提供したい。
 ならば、この祭りなんかはうってつけではないのかと思ったのだった。

「王都はこの時期になると秋の収穫を祈る祭りをするんだよ。結構楽しいぞ。ちなみにルークって祭り行ったことあんの?」
「……ないな」
「え、じゃあ推しの初めてを貰っちゃうってこと……?」
「まだ行くとは言ってない」
「えー」

 不満そうな声を出してみたものの、正直言えばどちらでもいいのだ。
 欲を言えば行きたいけれど、無理矢理連れて行くようなものでもない。

「……まあ、気が向いたらな」

 半ば諦めていた中で聞こえた言葉にオレは瞬きを繰り返した。
 そして頭が追いついてその言葉を理解するや否や、嬉しさで胸がいっぱいになる。

「よっしゃ、明日は散財するぞー!」
「好きにしろ」

 心なしかルークも楽しそうに見えて、顔が緩むのが止められない。
 オレは祭りの提案をしてくれた八百屋の店主に心の中で何度もお礼を言うのだった。

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