【完結】推しを死亡フラグから救済したら溺愛ルートに入りました⁉︎

白(しろ)

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第二章

悪夢の再来

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 オレがそう言ったのは二本目の角を手に入れたあとだった。
 この素材は入手難易度が高い。そして出現する場所がかなり限られている。だから通常なら数時間は粘らなければならないものなのだが、一時間経つか経たないかでもう二本も手に入れてしまった。

「これなら町の散策もできそうだな」
「最高じゃん。ならついでにどっかで飯も食お。ハァギって何が有名だっけ……」

 顎に手を当て、視線を上に向けながら考える。
 かつてこの町に来た時はゆっくりする時間はなかった。小さなイベントがあるだけで、すぐにもう少し離れた大きな町に行かなければならなかったからだ。

「なんか昔ながらの飯がうまいとかって聞いたことある気がするんだよな。確か粉系だった気がする。……クレープか?」

 頭の中の攻略本の情報を引っ張り出す。
 ここにも攻略対象の好物であるレシピを持っていたおばちゃんが存在したのだ。ハァギでもらったレシピのことを必死に思い出してオレは、周囲の異変に気が付かなかった。

「待て、リアス」
「へ?」

 森の中は暗い。そして雨が降っていていつもより音が多ければ、魔物の匂いも当然薄くなる。
 そしてオレは、順調すぎたから失念していたのだ。
 魔物避けの聖水の効果が切れる時間を。

「!」

 突如轟いた獣の咆哮に全身に緊張が走る。
 重たい蹄の音と一緒に、猛烈な速さで大きな物体がオレ目掛けて走ってきているのがわかる。
 ルークが多分オレの名前を叫んでいる。でもそれは聞こえなかった。
 全てがスローモーションに見えて、魔物と目が合った。鋭く尖った角をオレに向けている。もう一度瞬きをすれば、きっとオレはその角に貫かれているはずだ。
 あ、終わった。
 呆気ない程の終わりを悟った瞬間、目の前に壁が立ちはだかった。

「──っ!」

 衝撃にオレは弾き飛ばされ、雨に濡れた地面に叩き付けられた。目の前がぐわんと歪み、心臓が一気に動き出す感覚がした。
 でも鈍い痛みはあっても、死を覚悟するような痛みはこない。出血すらしている気がしない。
 なぜだと思考を深めるよりも先に、目が動いた。

「ルーク?」

 どしん、と大きなものが倒れる音がした。
 その側にルークが立っていた。剣が赤く染まっているのを見て、起こったことを理解する。

「……怪我は」

 静かな声がした。

「大丈夫」

 オレの返事に、ルークが笑った気がした。

「そうか」

 息混じりの声が途切れると同時に、ルークの体が大きく傾く。
 オレは呆然と目を見開いて、倒れるのを見ていた。
 そして水と土の中にルークが横たわった瞬間、喉が千切れそうな声で叫んだ。

「ルーク!」

 足をもつれさせながら側に行き、体を仰向けにした。
 じわりと服に広がっていく赤を見て、全身から血の気が引いていく。それは瞬く間に服を染め上げ、地面にすら滴っている。

「く、薬、はやく」

 無意識に出た声に弾かれたようにカバンをひっくり返した。
 中から回復薬を取り出し。ルークの口元に当てる。自力で飲んでくれたが、効果が薄い。それはそうだ。だって、今あるアイテムはこんなに深い傷を直せるようなものじゃない。

「ほか、他に何か、もっとなんかいいやつ……!」

 どれだけ探してもないものはない。
 血の気を失っていくルークの顔を見て、オレは喉を引き攣らせた。

「ぁ……あ、嫌だ、いやだ」

 初めてルークに触れた時を思い出す。あの時もこんな顔色をしていた。
 混乱と恐怖で目の奥が痛い。咄嗟に傷口に手を当てて圧迫するけれど、こんなの気休めにだってならない。

「たすけて」

 まだ体温はある。まだ温かい。けれど、このままだとこのぬくもりが消えてしまう。
 それだけは、絶対にいやだ。

「誰か助けて!」

 声の限りに叫ぶ。可能性は0に近いけれど、それでも声に出さずにはいられなかった。
 そして何度か叫んだ時、遠くから金属の音がした。
 人の足音か、魔物かもわからない。けれどオレはそれを人だと信じてもう一度叫んだ。

「怪我人がいるんだ! お願いだから助けてくれ!」

 足音が近付いてくる。それが甲冑を着た騎士だと分かった途端、オレは言葉を失った。
 頭の中で様々な可能性が渦巻く。もしルークの存在がバレたら、そんなことが頭の中を占める。でも今は、ただルークを助けてほしかった。

「怪我人ですか⁉︎」

 騎士が近付いてくる。
 緊張に喉が張り付いていたが、ふとその騎士が足を止めた。
 頭部を守る兜の目の部分を開けて、オレを見た。

「オルロン……?」

 知っている声だった。

「ノクト」
「どうしてこんなところに。いや、今は怪我人が優先だ。彼は?」
「オレの、」

 友達、と言えなかった。

「オレの大事な人」

 こぼれた声に、ノクトが一瞬驚いたのが気配で伝わった。

「──そうか」

 応急処置をして、ノクトと一緒に町へと戻る。
 その間ルークが目を覚ますことはなく、オレとノクトの間にも会話はなかった。

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