【完結】推しを死亡フラグから救済したら溺愛ルートに入りました⁉︎

白(しろ)

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第二章

オタクの戸惑い

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 始めは緊張していたものも、回数を重ねれば慣れてくる。
 なんてことがあるはずもなく、オレは今日もルークとのやり取りに一々心臓を高鳴らせていた。
 大きく溜息を吐き、店のカウンターに突っ伏す。
 今日は開店しているのだが、珍しく客が少ない。窓ガラス越しに入り込む太陽の光は明るいし、そこから見える空だって綺麗な青だ。
 でもそんな爽やかさとは正反対なくらい、オレの心は大いに乱れていた。

「……うう、ルークが格好いい」

 誰もいない店内に響いた声は、呆れる程芯がなかった。
 ルークのことが恋愛的な意味で好きだと自覚して、そしてそれまでとは全く違う触れ合いをした日からそれなりの時間が経過した。
 ルークとここで出会った日から数えると、もう数ヶ月にもなる。季節も変わり、外は肌寒くなる季節だ。それだけの時間が過ぎれば変わることもある。
 けれどオレたちに関していえば、変わりすぎている。

「リアス」
「ん、できたか?」
「ああ、どうだ」

 カウンターの奥にある調合室から出てきたルークは、片手にガラス瓶を持っていた。中には冒険者が最も使うとされている回復薬が入っている。
 瓶を受け取り、中の液体を光に透かす。
 淡く透明度の高いオレンジ色を揺らし、不純物が入っていないのを確かめる。最後に栓を抜いて匂いを確認すれば、検品は終了だ。

「うん。よくできてる。さすがルーク」

 そう言うとルークは嬉しそうに目を細めた。
 最近、ルークにもアイテムの調合を任せるようになった。難しいものはまだ無理だけど、こういう簡単なものならもうオレのチェックなしでも出せるようになるだろう。
 ルークがアイテムを作るようになった理由は「リアスと同じことをしたい」これだった。こんなの推しに言われて喜ばないオタクがいるだろうか。否、いない。
 オレは手取り足取り教えた。その結果ルークは順調にアイテム作成の才能も開花させようとしている。
 さすがオレの推し。オールマイティな才能の持ち主だ。

「リアス」

 ふと、甘さのある声で呼ばれた。

「ま、今仕事中っ」
「誰もいない」
「そうだけど、……っ」

 後頭部を大きな手で押さえられ、唇が触れた。
 戯れるように唇を啄まれ、ルークの体温が体の中に流れ込んでくる。

「林檎のようだな」
「だ、誰のせいだと思ってるんだよ!」
「俺だな。とてもいい気分だ」

 唇が離れると同時にルークとの距離も開く。言葉通りの表情で笑ったルークが去り際にオレの頭を撫で、そしてまた調合室に消える。
 ぱたりと閉じた扉を睨んでいたオレは、頭を抱えながら足をバタバタと動かした。

「くそ、くそぉ……っ!」

 オレとルークは日常的にキスをするようになった。もちろんオレは許可していない。
 そしてオレとルークの関係に、名前はない。
 同じ家に住んでいて、同じ仕事をしていて、同じベッドで寝て、そしてほとんど毎日キスをする関係だ。

「……」

 一旦全ての動きをストップした。
 それってつまり、恋人では。そう考えた瞬間、どうしようもない羞恥と罪悪感が湧いてきて頭がおかしくなりそうになる。
 髪を振り乱したい衝動を必死に抑えながら深呼吸を繰り返す。
 オレたちの関係は表面上変わっていない。でも距離感とか、接し方は、数ヶ月前では考えられない状態になっているのは確かだ。

 オレは、今実はとても悩んでいた。
 その悩みを相談できる人物が、生憎オレには一人しかいない。だがその人に相談すれば、オレは今度こそルークの素性を洗いざらい話してしまう。それだけは避けねばならない。
 でも誰かに話したい。どうしたらいい、どうすればいいのだろうか。
 そんな状態で悶々と考えていたとき、店のベルが鳴った。

「いらっしゃいま、」
「ちょっとリアスちゃ~~~ん! 店に虫が出ちゃって殴り潰したら手ぇ怪我しちゃったのよぉ! 回復薬ちょうだいっ」

 腰をくねらせ三つ編みを揺らしながら入ってきた屈強な乙女が、オレには天使に見えた。

「薬タダでやるからオレの話を聞け」
「え、やだなに面白そうだからいいわよ」

 フットワークの軽さに感謝しつつ、オレは後日八百屋の店主とお茶をする約束を取り付けたのだった。


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