【完結】推しを死亡フラグから救済したら溺愛ルートに入りました⁉︎

白(しろ)

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第二章

優しさを詰め込んだ顔

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「……ルークは今日、何してた?」
「街を歩いていた。ここがどんなところか、よく知らないと思ってな」

 その言葉にのそのそと顔を上げる。

「そういえばさ、めちゃくちゃ今更なんだけどさ、ルークって王都にいるの気まずくならねえの? ここ、一応父親とかがいるじゃん」

 ルークの目が細まり、長い指がオレの髪を撫でた。

「正直リアスに会うまでは、最後にこの街を吹き飛ばしてやろうかとも思っていた」
「え」
「もうその気はないから安心しろ」

 ルークはそう言って軽く笑うけれど、オレの心中は穏やかではない。
 それが伝わっているのか、ルークが口を開いた。

「お前は知っていると思うが、俺は王の子だ。だが王は母が俺を身籠ったとわかった途端、母を切り捨てた。母は貴族でも何でもない、ただ魔法が特別上手く使えるだけの女だったからな。……母は真冬の湖に投げ入れらたそうだ、橋の上からな」

 淡々と語られる言葉にゆっくりと目を見開く。
 ルークが王の子だというのも、母であるダリアが王に捨てられたのも知っている。けれど、その詳細を聞いたのは初めてだった。

「そうすれば母子共に始末できると思ったんだろう。だが、母は魔法に関しては天才だった。その状態でも生き延びて、この世界を破滅寸前にまで追い込んだんだからな」

 外から微かに聞こえていた人の声すらしなくなった。完全な静寂が、お互いの呼吸の音すら響かせる。

「俺を産んだ母は、一度は喜んだそうだ。なにせ王の血を引いた子だ。俺さえいればまた王の元に帰れると、あの人は本気で考えていた。だが、」

 そこで言葉が途切れて、ルークの表情が少し辛そうに歪んだ。
 顔の左側に残った傷が痛んでいるようにも見えた。

「見ての通り、俺は王には似ていない。髪も目も、全てだ」

 ルークは黒髪で紅い目、けれど王は金髪に緑の目だ。ルークは顔立ちはおろか、色彩すら王のものを何も受け継いでいなかった。
 それなのにそれを嘲笑うかのように、異母弟である王太子ギルバートは顔立ちを含めた全てが王の生き写しだった。

「……せめて顔くらい似ていれば、あの人も穏やかでいられたんだろうな」
「違う」

 咄嗟に声を出し、首を横に振っていた。

「ルークのせいじゃない」

 手を伸ばして顔に触れる。左側の大きな傷跡に触れると、ルークが目を伏せた。

「ルーク」

 名前を呼ぶと、不安定に揺れる瞳を視線が絡まった。

「オレは、どんな顔でもルークが好きだぞ」

 一瞬、ルークが目を丸くした。けれどすぐに笑って、オレを軽く抱き寄せる。

「そうか」
「ああ、すげえ好き」
「お前が俺を好きだと言ってくれるから、俺はここを壊さずに済んだ」

 柔らかな声で囁かれ、鼻の奥がツンと痛くなる。

「ありがとう、リアス」

 優しさを詰め込んだような顔でルークが笑うから、オレの涙腺は決壊したんだ。

「どうして泣くんだ」
「わかんねえ、嬉しいし、でも悲しいし、なんかぐっちゃぐちゃだよお」

 ルークはどんな選択肢を選んでも絶対に助からないキャラだった。
 どの資料を見ても、生存ルートなんてどこにもなかった。ルークという存在は、公式から退場だと突きつけられていた。
 オレはルークの生い立ちを知って、それで同情して助けたいと思った。
 でも現実は、たった数行で語られた文章よりもずっと辛い。
 そんな環境の中で生きてきたんだと思うと、そしてその過去すら受け入れているんだと思うと、涙が止まらなかった。

「泣かないでくれ、リアス」
「無理かも」

 オレに泣く資格なんてないのに、それでも情けないくらい涙が出てくる。

「やっぱオレ、ルークには幸せになってほしい」

 しゃくり上げながら伝えた言葉にルークが笑う気配がした。

「なら泣き止め。そうすれば少しは幸せになる」
「無茶言うなって~」

 止めろと言われて止まるならいくらでもそうする。
 けれど自分でもおかしいくらい止まらないのだ。それでも困らせたくはなくて、何度か深呼吸をしていると、顎に手を添えられて上を向かされた。
 そのまま目元にキスをされ、オレはじとりとルークを睨む。

「そ、そうやったら泣き止むわけじゃねえけど」
「前はこれで済んだのにな」

 微かに楽しそうにルークが口角を上げ、今度は額に唇が触れた。
 それからまぶたや頬、鼻筋にもキスが降ってきて、オレは慌てた。

「ま、待てルーク、ちゃんと泣き止む、泣き止むから待っ、んん」

 声を遮るみたいに唇が重なった。
 いつもなら触れるだけで離れるのに、今日はそうじゃない。
 感触を確かめるみたいに啄まれて、角度を変えてまた吸われる。呼吸が混ざるような触れ方に指先が震えて、思わずルークの服を握った。
 そうしたら唇が離れて、大きく呼吸する。その頃には涙なんて引っ込んでいたのに、ルークの唇がまたオレの口を塞いだ。

「る、ん……っ、も、泣き止んだっ」
「喋るな」

 聞いたことがないくらい甘くて低い声で囁かれて、言葉ごと呑み込まれる。
 夜の静寂が包む中、オレたちの息遣いだけがしばらく部屋に響いていた。

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