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第三章
危ない危ない
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呆気なく口から好きだと漏れるところだった。危ない。
なんとかその二文字を飲み込んで、代わりになんとも言えない顔でルークを睨む。けれどそんなのまるで効いていないとばかりに大きな手が頬を撫でた。
「照れているのか? いつまでも慣れないな」
「うるせえばーーーか! 飯食う!」
勢い任せに罵倒して箸を取る。そのまま食事を始めたオレを見下ろしていたルークが「美味いか?」と問いかけてくる。それに頷くと、自分にも食べさせろと言わんばかりに口を開けた。
その無防備さがかわいい。飯くらい自分で食えと言いたいけれど、オレはもうほぼノータイムでルークの口に天ぷらを持っていっていた。
「美味い。この緑のはなんだ?」
「……抹茶塩」
「その液体は?」
「天つゆ。こっちも天ぷらにつける」
「なら次はそっちだ」
自然とまたルークが口を開き、食事を持っていく。推しであり好きな人に餌付けをしている背徳感やあれこれに心臓が休まらない。
「……ルーク、お前こういうの簡単にさせたらダメだぞ」
尊さで死人がでる。
比較的真面目なトーンで言ったはずなのに、ルークが哀れなものを見るような目でオレを見た。
「リアス以外にこんな姿を見せる必要がどこにあるんだ」
本気で呆れたような声に目を瞬かせるが、すぐにルークが「次」と今度は茶碗蒸しを指差した。蓋を取って器を持つと、出汁のいい香りがして目を細める。
一口分スプーンで掬い、熱を冷ますために息を吹きかけてからまた口元に運んだ。
「むしろそれを言われるべきはお前だと思うがな。お前は俺以外にこういうことを簡単にしそうだ」
ぱくりと茶碗蒸しを食べたルークを見て「はあ?」と声を上げた。
「するわけねえじゃんめんどくせえ。飯くらい自分で食えって話じゃん」
「ならいい。もう一口寄越せ」
「おっけ。ルーク銀杏とか食えんのかな、結構クセあるけど」
「食えばわかる」
そうしてルークと一緒に食事を楽しみ、寝る準備を整えて布団に入る。
きちんと二組用意されてはいるが、オレたちは当然のように一つの布団の中に横になった。
「……狭くね?」
「家のベッドが大きいからな」
「今日別れて寝る?」
「必要ない。むしろ、これくらい狭い方がお前を抱き込める」
その言葉通りルークの逞しい腕がオレを抱き締める。少し苦しいくらいだけれど、それが心地いいと思った。
「……なんかさー」
「なんだ」
ルークの手がオレの髪を撫でているのがわかる。
その行動も声も、その視線の一つでさえ今日は心臓に悪い。理由は一つ、ルークがいつも以上にオレを甘やかしているからだ。
「なんで今日そんなにオレに甘いの?」
「そんなふうに見えたか」
「見えた。ていうか今も甘い。イケメンオーラで溶けそう」
「溶けるな。……まあそうだな、一つ心当たりがあるとすれば、お前だな」
「オレ?」
意味がわからず問い掛けると近い距離で視線が絡まり、また心臓が跳ねる。
「今日のリアスは無邪気で無防備だ。いつもより愛らしい」
「それは本当にオレですか?」
「リアス以外に誰がいる」
おかしそうにルークが笑い、掠めるように唇が重なる。そのまま啄むように触れられて、つま先がきゅ、と丸まった。
「それに今日はリアスの深い部分に触れられている気がしてな、それが嬉しい。お前のことを知れるのはいい。満たされる」
柔らかな声で紡がれる言葉に胸が切なくなる。
元々悪の幹部だったとは思えないくらい素直な言葉と嘘偽りのない笑顔に、またルークに惚れ直してしまった。毎秒深い沼に叩き落としてくる、そんなふざけたことを思うがもう表情を取り繕うことすら忘れてしまった。
「お前の前世を知っているのは、この世で俺一人なんだろう?」
「ん、ルークにしか言ってない」
「ならいい。前世も含め、今のお前を知っているのは俺だけでいい」
そう言って再び唇が重なり、今度は深いものに変わっていく。鼻にかかったような声が漏れ、息が乱れだした頃景色が反転した。
けれど目の前にいるのはルークで変わらない。その後ろの景色が天井になっただけだ。
「……風呂でもやったじゃん」
「この服は駄目だな。扇情的すぎる」
「ルークも浴衣にときめくんですね」
「も、ということはお前もか」
「はあ⁉︎ そういう揚げ足取りよくないと思いま、んんっ」
唇が塞がって、袂からルークの手が入り込む。
「リアス、抱いていいか?」
断られるなんて微塵も思っていない声が少し腹立たしい。けれど逆らえるはずもないし、オレはルークに抱かれるのが、あまり言いたくないけれど結構好きだ。
だから求められたらあげたくなるし、オレで興奮してくれるのが嬉しい。
「明日も観光したい」
「善処する。もし足腰が立たなかったら抱えて移動しよう」
「ばーか」
至近距離で見つめ合って笑い、どちらともなく唇を合わせる。
今でもオレは十分すぎるくらい幸せだ。幸せすぎて罰が当たりそうだなんて思うくらい。けれど、これでもしオレたちの関係に名前が付いたら、この幸せはもっといいものになる気がする。
甘く、そして目に見える程大切に抱かれながら、オレは早く明日が来ることを願った。
なんとかその二文字を飲み込んで、代わりになんとも言えない顔でルークを睨む。けれどそんなのまるで効いていないとばかりに大きな手が頬を撫でた。
「照れているのか? いつまでも慣れないな」
「うるせえばーーーか! 飯食う!」
勢い任せに罵倒して箸を取る。そのまま食事を始めたオレを見下ろしていたルークが「美味いか?」と問いかけてくる。それに頷くと、自分にも食べさせろと言わんばかりに口を開けた。
その無防備さがかわいい。飯くらい自分で食えと言いたいけれど、オレはもうほぼノータイムでルークの口に天ぷらを持っていっていた。
「美味い。この緑のはなんだ?」
「……抹茶塩」
「その液体は?」
「天つゆ。こっちも天ぷらにつける」
「なら次はそっちだ」
自然とまたルークが口を開き、食事を持っていく。推しであり好きな人に餌付けをしている背徳感やあれこれに心臓が休まらない。
「……ルーク、お前こういうの簡単にさせたらダメだぞ」
尊さで死人がでる。
比較的真面目なトーンで言ったはずなのに、ルークが哀れなものを見るような目でオレを見た。
「リアス以外にこんな姿を見せる必要がどこにあるんだ」
本気で呆れたような声に目を瞬かせるが、すぐにルークが「次」と今度は茶碗蒸しを指差した。蓋を取って器を持つと、出汁のいい香りがして目を細める。
一口分スプーンで掬い、熱を冷ますために息を吹きかけてからまた口元に運んだ。
「むしろそれを言われるべきはお前だと思うがな。お前は俺以外にこういうことを簡単にしそうだ」
ぱくりと茶碗蒸しを食べたルークを見て「はあ?」と声を上げた。
「するわけねえじゃんめんどくせえ。飯くらい自分で食えって話じゃん」
「ならいい。もう一口寄越せ」
「おっけ。ルーク銀杏とか食えんのかな、結構クセあるけど」
「食えばわかる」
そうしてルークと一緒に食事を楽しみ、寝る準備を整えて布団に入る。
きちんと二組用意されてはいるが、オレたちは当然のように一つの布団の中に横になった。
「……狭くね?」
「家のベッドが大きいからな」
「今日別れて寝る?」
「必要ない。むしろ、これくらい狭い方がお前を抱き込める」
その言葉通りルークの逞しい腕がオレを抱き締める。少し苦しいくらいだけれど、それが心地いいと思った。
「……なんかさー」
「なんだ」
ルークの手がオレの髪を撫でているのがわかる。
その行動も声も、その視線の一つでさえ今日は心臓に悪い。理由は一つ、ルークがいつも以上にオレを甘やかしているからだ。
「なんで今日そんなにオレに甘いの?」
「そんなふうに見えたか」
「見えた。ていうか今も甘い。イケメンオーラで溶けそう」
「溶けるな。……まあそうだな、一つ心当たりがあるとすれば、お前だな」
「オレ?」
意味がわからず問い掛けると近い距離で視線が絡まり、また心臓が跳ねる。
「今日のリアスは無邪気で無防備だ。いつもより愛らしい」
「それは本当にオレですか?」
「リアス以外に誰がいる」
おかしそうにルークが笑い、掠めるように唇が重なる。そのまま啄むように触れられて、つま先がきゅ、と丸まった。
「それに今日はリアスの深い部分に触れられている気がしてな、それが嬉しい。お前のことを知れるのはいい。満たされる」
柔らかな声で紡がれる言葉に胸が切なくなる。
元々悪の幹部だったとは思えないくらい素直な言葉と嘘偽りのない笑顔に、またルークに惚れ直してしまった。毎秒深い沼に叩き落としてくる、そんなふざけたことを思うがもう表情を取り繕うことすら忘れてしまった。
「お前の前世を知っているのは、この世で俺一人なんだろう?」
「ん、ルークにしか言ってない」
「ならいい。前世も含め、今のお前を知っているのは俺だけでいい」
そう言って再び唇が重なり、今度は深いものに変わっていく。鼻にかかったような声が漏れ、息が乱れだした頃景色が反転した。
けれど目の前にいるのはルークで変わらない。その後ろの景色が天井になっただけだ。
「……風呂でもやったじゃん」
「この服は駄目だな。扇情的すぎる」
「ルークも浴衣にときめくんですね」
「も、ということはお前もか」
「はあ⁉︎ そういう揚げ足取りよくないと思いま、んんっ」
唇が塞がって、袂からルークの手が入り込む。
「リアス、抱いていいか?」
断られるなんて微塵も思っていない声が少し腹立たしい。けれど逆らえるはずもないし、オレはルークに抱かれるのが、あまり言いたくないけれど結構好きだ。
だから求められたらあげたくなるし、オレで興奮してくれるのが嬉しい。
「明日も観光したい」
「善処する。もし足腰が立たなかったら抱えて移動しよう」
「ばーか」
至近距離で見つめ合って笑い、どちらともなく唇を合わせる。
今でもオレは十分すぎるくらい幸せだ。幸せすぎて罰が当たりそうだなんて思うくらい。けれど、これでもしオレたちの関係に名前が付いたら、この幸せはもっといいものになる気がする。
甘く、そして目に見える程大切に抱かれながら、オレは早く明日が来ることを願った。
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