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第三章
急転直下
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親父は頷きながら上を見ている。
その様子はオレにも覚えがあって、何かを探している時の仕草だ。
「細身か」
「いや結構がっしりしてる。魔物とか普通に狩ってるくらいには」
「じゃああんまり派手じゃねえやつの方がいいなぁ。戦う時にチャラチャラしてたら邪魔でしょうがねえだろ」
「確かに」
そこまで聞かれて徐に親父が椅子から降り、内側からショーケースを開けて中からアクセサリーを取り出した。目の前に並べられる幾つかのデザインを見つつ、どうしようかと悩んでいるとまた親父が椅子に座る。
「どこに付けてほしいんだ。目に見える場所かそうじゃないかだ」
どこ、そう聞かれて漠然と思ったのは指輪だった。けれどそれはさすがに重たすぎるだろうと考えを慌てて消して、違う場所を想像してみる。
「……見える場所のしか浮かばねえ」
「なら候補は絞られるな。指輪にブレスレットにネックレス。あとはピアスってとこか」
「推しの体に穴開けるわけにはいかないんで却下で」
「お、おう」
「でも指輪もさすがに重たいから却下……」
そうしてオレと親父は顔を突き合わせてあれじゃないこれじゃないと話し合った。親父はやはり職人だった。そしてオレもオタクだから議論は白熱し、気がつけばそれなりの時間が経っていた。
「よぉし、じゃあこのブレスレットだな……」
「おう、頼んだぜジジイ……」
お互い息切れしながら頷き合い、オレは一度店から出た。
これから選んだブレスレットに加護を授けてもらうためだ。この世界のアクセサリーには加護を付与できる。もちろん親父はそれもできるし、なんならその腕がいいからここにきたのだ。
とはいえゲームでは一瞬だった加護の付与も現実ならそれなりの時間が掛かる。だからどこかで時間を潰そうとオレは歩き出した。
やはりこの町は日本と似ている。観光地っぽいから京都とかそういう感じの街並みだ。実際京都に住んだことはないけれど、日本人としての記憶がここを懐かしいと感じさせる。
そのまま歩いていると川沿いにたくさんの桜の木が植っているのがわかった。春になったらまたルークとここに来るのもいいかもしれない。もしかしたら日本的なお祭りもここでならしているかもしれない。
そんな楽しい予感で胸を高鳴らせながら人通りが多い道へと足を踏み入れた。
するとなぜだか空気感が変わったような気がして原因を探るべく辺りを見渡し、そして納得した。朱や緑で塗られた柱がいくつもあり、通っている人たちも大人がほとんどだ。
「なるほどここ遊郭街が」
ゲームの中には一切出てこなかった要素だが、現実なのだからもちろん存在する。王都にだってここと似たような場所があるのだ。
けれどここに用なんてあるはずもなく、さらに言えば長居もしたくない。なぜなら声がけが面倒だからだ。そうとわかれば退散だと踵を返した時、背後から声がした。
「ルーク様」
低くもなく高くもない、けれど艶があって、品のある声だと思った。その声が呼んだ名前に聞き覚えしかなくて反射で振り返り、咄嗟に物陰に身を隠した。
「リリア」
「またお会いできた。嬉しいです」
そこにいたのは間違いなくルークで、そしてリリアと呼ばれた人は見るからに嬉しそうにルークの側にいた。心臓が痛い。嫌な予感がして、息が微かに乱れた。
「前に会ったのは王都だったか。あれからどうだ」
「変わりありません。ルーク様は?」
「こちらもだ。ここには何を?」
「……お恥ずかしながら、身を売ることしか」
「……そうか、すまないな」
二人が親密な関係であることが会話からわかった。覗き見なんて悪趣味だと思うのに、縫い付けられたみたいに二人から目が離せない。
「いえ、いえ! ルーク様が謝られることなんて何もないのです」
声の印象の通り、リリアという人は綺麗だった。光沢のある黒髪も、細いけれどどこか扇状的な身体つきも、そして顔の造形だって。とても綺麗だ。
そんな人がふるふると首を振り、そして感極まったようにルークに体を寄せた。
ルークはその人を振り払わなかった。むしろ、そっと肩に手を添えた。
その瞬間オレは弾かれたようにその場から離れた。二人が何を話しているかはもうわからない。けれど去り際にリリアの甘い声が聞こえた気がした。
その様子はオレにも覚えがあって、何かを探している時の仕草だ。
「細身か」
「いや結構がっしりしてる。魔物とか普通に狩ってるくらいには」
「じゃああんまり派手じゃねえやつの方がいいなぁ。戦う時にチャラチャラしてたら邪魔でしょうがねえだろ」
「確かに」
そこまで聞かれて徐に親父が椅子から降り、内側からショーケースを開けて中からアクセサリーを取り出した。目の前に並べられる幾つかのデザインを見つつ、どうしようかと悩んでいるとまた親父が椅子に座る。
「どこに付けてほしいんだ。目に見える場所かそうじゃないかだ」
どこ、そう聞かれて漠然と思ったのは指輪だった。けれどそれはさすがに重たすぎるだろうと考えを慌てて消して、違う場所を想像してみる。
「……見える場所のしか浮かばねえ」
「なら候補は絞られるな。指輪にブレスレットにネックレス。あとはピアスってとこか」
「推しの体に穴開けるわけにはいかないんで却下で」
「お、おう」
「でも指輪もさすがに重たいから却下……」
そうしてオレと親父は顔を突き合わせてあれじゃないこれじゃないと話し合った。親父はやはり職人だった。そしてオレもオタクだから議論は白熱し、気がつけばそれなりの時間が経っていた。
「よぉし、じゃあこのブレスレットだな……」
「おう、頼んだぜジジイ……」
お互い息切れしながら頷き合い、オレは一度店から出た。
これから選んだブレスレットに加護を授けてもらうためだ。この世界のアクセサリーには加護を付与できる。もちろん親父はそれもできるし、なんならその腕がいいからここにきたのだ。
とはいえゲームでは一瞬だった加護の付与も現実ならそれなりの時間が掛かる。だからどこかで時間を潰そうとオレは歩き出した。
やはりこの町は日本と似ている。観光地っぽいから京都とかそういう感じの街並みだ。実際京都に住んだことはないけれど、日本人としての記憶がここを懐かしいと感じさせる。
そのまま歩いていると川沿いにたくさんの桜の木が植っているのがわかった。春になったらまたルークとここに来るのもいいかもしれない。もしかしたら日本的なお祭りもここでならしているかもしれない。
そんな楽しい予感で胸を高鳴らせながら人通りが多い道へと足を踏み入れた。
するとなぜだか空気感が変わったような気がして原因を探るべく辺りを見渡し、そして納得した。朱や緑で塗られた柱がいくつもあり、通っている人たちも大人がほとんどだ。
「なるほどここ遊郭街が」
ゲームの中には一切出てこなかった要素だが、現実なのだからもちろん存在する。王都にだってここと似たような場所があるのだ。
けれどここに用なんてあるはずもなく、さらに言えば長居もしたくない。なぜなら声がけが面倒だからだ。そうとわかれば退散だと踵を返した時、背後から声がした。
「ルーク様」
低くもなく高くもない、けれど艶があって、品のある声だと思った。その声が呼んだ名前に聞き覚えしかなくて反射で振り返り、咄嗟に物陰に身を隠した。
「リリア」
「またお会いできた。嬉しいです」
そこにいたのは間違いなくルークで、そしてリリアと呼ばれた人は見るからに嬉しそうにルークの側にいた。心臓が痛い。嫌な予感がして、息が微かに乱れた。
「前に会ったのは王都だったか。あれからどうだ」
「変わりありません。ルーク様は?」
「こちらもだ。ここには何を?」
「……お恥ずかしながら、身を売ることしか」
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「いえ、いえ! ルーク様が謝られることなんて何もないのです」
声の印象の通り、リリアという人は綺麗だった。光沢のある黒髪も、細いけれどどこか扇状的な身体つきも、そして顔の造形だって。とても綺麗だ。
そんな人がふるふると首を振り、そして感極まったようにルークに体を寄せた。
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その瞬間オレは弾かれたようにその場から離れた。二人が何を話しているかはもうわからない。けれど去り際にリリアの甘い声が聞こえた気がした。
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