【完結】推しを死亡フラグから救済したら溺愛ルートに入りました⁉︎

白(しろ)

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第五章

やっぱり嫌い!

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 聖女としての力が覚醒したばかりの頃、力がうまく制御できずにエスタはよく泣いていた。学校の問題がわからない時も、周りとの力の差があった時も、そして冒険の最中恋をしてしまった自分の愚かさにも、エスタはよく泣いていた。
 けれど今日の泣き顔はそのどれよりもずっと悲しそうで目を細める。

「リアスは、これで幸せなの?」

 しゃくり上げながら紡がれた言葉に口角が上がるのがわかった。
 この言葉にだけはオレは自信を持って頷くことができる。

「めちゃくちゃ幸せ」
「っ、そんな顔されたら怒れない~~! 嫌い! やっぱりあいつ嫌い~~っ!」

 わんわんと泣くエスタを笑いながら慰め、それから少しして二人で立ち上がる。

「愛想尽かせたらいつでも帰ってくるのよ」
「その時はな。……エスタも幸せに」

 最後にもう一度抱き締めてから体を離すと「ちょっと待って」と引き止められた。

「これあげる」

 そう言ってエスタは首の後ろに手をやって、自身の首に掛かっているネックレスの留金を外した。繊細なチェーンの音がして、それからオレの手にネックレスを握らせる。
 触っただけでもわかる。というか見た時点でわかった。

「エスタ、さすがにこれは」
「いいの。もう私には必要ないもの。自分の身は自分で守れるし、神様のご加護はこれがなくても常に私と共にあるわ」

 エスタから渡されたものはこの世界にたった一つしかない、神の涙から生成されたといわれている守護の石が嵌め込まれたネックレスだ。
 正直ほいと渡されるような代物ではないのだが、エスタの厚意を無下にしたくなくて頷いた。

「ありがとう。貰っとく」
「私はルークを許してない。捕まるべきだと思うし、裁かれるべきだとも思う。でもリアスが悲しむ姿も見たくないの。だからどうか、誰にも見つからないでね」

 ネックレスを握った手にエスタが両手を添える。そのまま額を近づけ、祈るように囁いた。

「ああ、わかった」

 きっと今生の別れだと思うのに、不思議と涙は出なかった。
 寂しくないわけではない。後ろ髪引かれる思いがないわけでもない。でもどうしてだか涙が出ないのは、きっとエスタが想像していたよりもずっとオレのことを惜しんでくれていたからだ。
 これだけ想われていたなんて、正直嬉しい。

 最後に「またな」とお互いに口にして、先にオレが教会から出た。
 空はどこまでも青く、そしてどこまでも広い。この空が続く限り危険は及ぶのだろうけど、今は清々しい気持ちで満ちていた。
 早くルークのところに戻ろう。そして今日の話をして、一日でも早く王都を出なくては。
 そう思いながら下町に戻り人気のない道を歩いていると、ふと人の気配がした。

「こんにちは」

 聴覚がその言葉を認識した時オレはすでに地面に倒れ込んでいた。
 体が動かない。声も出ない。意識が急激に遠くなっていくのがわかって、本能的に命の危険を察知する。

「殺しませんよ、まだ」

 柔らかな品のある声だった。意識が保てず、目を完全に閉じた時、甘い匂いがした。
 この匂いを、オレは知っている。

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