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第二章 ヒノデの国(下)
死にたがり
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目の前で赤とオレンジの光が炸裂した。それが炎だとわかったのはタリヤが張ってくれた防御壁の向こう側の景色を見ることが出来たからだ。
「っ、タリヤ!」
「大丈夫生きてるっす!ラファエルさん、一旦立て直しましょう、コイツやべえっすよ!」
炎を海は空から降り注ぐ雨粒のおかげで消えていくが、二人はそんなことを確認するような余裕なんてありはしなかった。
「…なんなんすか、コイツ」
タリヤのいる場所にまで下がったラファエルはそのじっと龍を見た。
ドクドクと心臓が脈打ち、背中には汗が伝った。
「火を吐く魔物なんて聞いたことないっすよ…!」
この世界の魔物は動物が巨大化しただけ、そのはずだ。
けれど目の前の生物は確かに今辺りを火の海にしてみせた。まるでゲームやアニメの世界みたいだと無意識に乱れていた呼吸を落ち着かせてラファエルは立ち上がる。
「僕が出来るだけ引き付ける。タリヤは先に海岸に行って、このことを伝え」
「嫌っす」
「どうして」
「どうして…?」
タリヤの瞳が怒りに揺れた。
「あんたが死ににいこうとするからだろうが!」
ラファエルの目が見開かれた。
「あんたが強いのは十分わかったっす。なんでかあんたに攻撃が当たらないのも見てたらわかる。でも率先して死ににいこうとしてるヤツをこんなとこに置いていけるわけねえだろぉが!」
タリヤの目が鋭くラファエルを射抜いた。
「あんたが残るならオレも残る。どうしても行けっていうならそん時はあんたも一緒っす」
譲らない、そうタリヤの目が語っていた。
常ならそんなことはない、考えすぎだと笑ってはぐらかせるのに、この時ラファエルにはそれが出来なかった。
「一緒に海岸まで突っ走りましょう。あんたは一人でいちゃダメだ」
そんなことをしている場合ではないのに、ラファエルの頭は真っ白になった。
常々自分がしてきた行動を言い当てられた、ただそれだけのことにラファエルはどうしようもない程自分が動揺していることに気がついた。
タリヤの声がどこか遠くに聞こえる。
「何してんすか!走って!」
はっと顔を上げるとタリヤが魔術を使って再び二人分の防御壁を展開していた。見れば龍の口が再び赤く光っており、また炎を放射することがわかる。
「オレの魔術で防ぐんで、とりあえず走るっすよ!」
タリヤが駆け出した。その後を追うようにラファエルも走り出すと龍の視線が二人を追っていることに気がついてタリヤが悲鳴を上げる。
「うおおおおマジで付いて来るー!後ろから尻尾でズドンとかいかれたら笑えねーっ!」
何度か炎を浴びて二人の服は所々が焦げ、尻尾や牙による追撃もありラファエルの身体には多少の傷が出来ていた。
あえて龍の視界に入るように海岸沿いを走って移動し、二人が通った後は人が歩けるような状態ではなくなっていてその状態が龍の攻撃力の高さを物語っていた。
「オヅラさああああああん!マヅラさあああああん!」
二人が西の海岸に辿り着いた時、三人はその背後から迫り来る龍の大きさに固唾を呑んだ。
「とんでもねえデカさだなあおい!」
「しかもコイツ火ぃ吹いてたわよ兄貴」
「のんびり話してる場合じゃないっすよ!防護!」
つんのめるようにして足を止めたタリヤが龍の方を振り返り、五人を守る盾を展開する。それと同時に灼熱の炎が襲い掛かるが盾に防がれて誰一人として傷を負うことは無い。
「っあーーー!マジでコイツの攻撃力やべえっす!鼻血出そう!」
「無理すんじゃねえ!魔力切れで死にてえのか!」
光の粒子となって盾が消えると息を乱したタリヤが砂浜に膝をついて叫んだ。
「いやほんとギリっすよ。っつーわけで、後は頼んます。今できる最善でサポートするんで」
「おう、任せとけ。……ところで天使ちゃんはなんでんなしけた面してんだ」
マヅラとアルフレッドは盾が消えたと同時に龍に飛び掛かり攻撃を繰り返している。アルフレッドが斬りかかり、その下段ではマヅラが龍の胴体に拳を浴びせ龍の一瞬の硬直を見逃さずまたアルフレッドがダメージを加える。
それで体勢を崩さなかった龍はアルフレッドを標的と定めて再び赤い光を口内に灯し、空中で身動きの取れないアルフレッドを守るようにマヅラの拳が龍の顎に減り込んで炎は空を焼いた。
「助かった、ありがとう」
「あはあん!お礼はキッスでよろしくってよお!」
足場の悪い砂浜に降り立った二人はすぐさま構えて再び龍と相対する。
ラファエルの足はその場に縫いとめられたように動かない。
「……そこでタリヤのこと守ってろ。死にたがりは戦場において足手まといだ。俺らはアルフレッドみてえにテメエをお守りしながら戦えねえ」
何も言わないラファエルにオヅラは冷えた目を向けて自身も戦場へと駆け出した。
少し離れた場所でラファエルとタリヤは熾烈な戦いを見る。
「…キツイこと言うっすよね、オヅラさん。でも概ね俺も同意見っす」
タリヤは戦場から目を離さない。どれだけ息が上がっていようとも杖を握った手には力が入っていた。
「っ、タリヤ!」
「大丈夫生きてるっす!ラファエルさん、一旦立て直しましょう、コイツやべえっすよ!」
炎を海は空から降り注ぐ雨粒のおかげで消えていくが、二人はそんなことを確認するような余裕なんてありはしなかった。
「…なんなんすか、コイツ」
タリヤのいる場所にまで下がったラファエルはそのじっと龍を見た。
ドクドクと心臓が脈打ち、背中には汗が伝った。
「火を吐く魔物なんて聞いたことないっすよ…!」
この世界の魔物は動物が巨大化しただけ、そのはずだ。
けれど目の前の生物は確かに今辺りを火の海にしてみせた。まるでゲームやアニメの世界みたいだと無意識に乱れていた呼吸を落ち着かせてラファエルは立ち上がる。
「僕が出来るだけ引き付ける。タリヤは先に海岸に行って、このことを伝え」
「嫌っす」
「どうして」
「どうして…?」
タリヤの瞳が怒りに揺れた。
「あんたが死ににいこうとするからだろうが!」
ラファエルの目が見開かれた。
「あんたが強いのは十分わかったっす。なんでかあんたに攻撃が当たらないのも見てたらわかる。でも率先して死ににいこうとしてるヤツをこんなとこに置いていけるわけねえだろぉが!」
タリヤの目が鋭くラファエルを射抜いた。
「あんたが残るならオレも残る。どうしても行けっていうならそん時はあんたも一緒っす」
譲らない、そうタリヤの目が語っていた。
常ならそんなことはない、考えすぎだと笑ってはぐらかせるのに、この時ラファエルにはそれが出来なかった。
「一緒に海岸まで突っ走りましょう。あんたは一人でいちゃダメだ」
そんなことをしている場合ではないのに、ラファエルの頭は真っ白になった。
常々自分がしてきた行動を言い当てられた、ただそれだけのことにラファエルはどうしようもない程自分が動揺していることに気がついた。
タリヤの声がどこか遠くに聞こえる。
「何してんすか!走って!」
はっと顔を上げるとタリヤが魔術を使って再び二人分の防御壁を展開していた。見れば龍の口が再び赤く光っており、また炎を放射することがわかる。
「オレの魔術で防ぐんで、とりあえず走るっすよ!」
タリヤが駆け出した。その後を追うようにラファエルも走り出すと龍の視線が二人を追っていることに気がついてタリヤが悲鳴を上げる。
「うおおおおマジで付いて来るー!後ろから尻尾でズドンとかいかれたら笑えねーっ!」
何度か炎を浴びて二人の服は所々が焦げ、尻尾や牙による追撃もありラファエルの身体には多少の傷が出来ていた。
あえて龍の視界に入るように海岸沿いを走って移動し、二人が通った後は人が歩けるような状態ではなくなっていてその状態が龍の攻撃力の高さを物語っていた。
「オヅラさああああああん!マヅラさあああああん!」
二人が西の海岸に辿り着いた時、三人はその背後から迫り来る龍の大きさに固唾を呑んだ。
「とんでもねえデカさだなあおい!」
「しかもコイツ火ぃ吹いてたわよ兄貴」
「のんびり話してる場合じゃないっすよ!防護!」
つんのめるようにして足を止めたタリヤが龍の方を振り返り、五人を守る盾を展開する。それと同時に灼熱の炎が襲い掛かるが盾に防がれて誰一人として傷を負うことは無い。
「っあーーー!マジでコイツの攻撃力やべえっす!鼻血出そう!」
「無理すんじゃねえ!魔力切れで死にてえのか!」
光の粒子となって盾が消えると息を乱したタリヤが砂浜に膝をついて叫んだ。
「いやほんとギリっすよ。っつーわけで、後は頼んます。今できる最善でサポートするんで」
「おう、任せとけ。……ところで天使ちゃんはなんでんなしけた面してんだ」
マヅラとアルフレッドは盾が消えたと同時に龍に飛び掛かり攻撃を繰り返している。アルフレッドが斬りかかり、その下段ではマヅラが龍の胴体に拳を浴びせ龍の一瞬の硬直を見逃さずまたアルフレッドがダメージを加える。
それで体勢を崩さなかった龍はアルフレッドを標的と定めて再び赤い光を口内に灯し、空中で身動きの取れないアルフレッドを守るようにマヅラの拳が龍の顎に減り込んで炎は空を焼いた。
「助かった、ありがとう」
「あはあん!お礼はキッスでよろしくってよお!」
足場の悪い砂浜に降り立った二人はすぐさま構えて再び龍と相対する。
ラファエルの足はその場に縫いとめられたように動かない。
「……そこでタリヤのこと守ってろ。死にたがりは戦場において足手まといだ。俺らはアルフレッドみてえにテメエをお守りしながら戦えねえ」
何も言わないラファエルにオヅラは冷えた目を向けて自身も戦場へと駆け出した。
少し離れた場所でラファエルとタリヤは熾烈な戦いを見る。
「…キツイこと言うっすよね、オヅラさん。でも概ね俺も同意見っす」
タリヤは戦場から目を離さない。どれだけ息が上がっていようとも杖を握った手には力が入っていた。
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