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第一章 北の国の美味しいもの編
落ち着く匂い
翌日、朝。二人と一匹は同じベッドで眠っていた。
なぜかというと素直に宿代節約の為である。ベッドは二つより一つの方が宿代は安いのだ。だから旅が始まって今まで、ベッドを分けるということはして居らず二人と一匹は常に同じベッドで眠り、目覚めて来た。
ちなみに一番に起きるのはやはりステラだ。雪国だけあって寝具も程良く重く、そして何より暖かい。目覚めるのを躊躇してしまいたくなる程の心地よさを感じるが、長年の習慣がそれを許さずゆっくりと瞼を押し上げる。
最初に見えたのは薄暗い室内。ネジュノの一日の日照時間が短く、完全に太陽が顔を出すのは朝の七時を回った頃だ。今はそれよりも随分と前の時間だろうし、きっとベッドから抜け出したらすごく寒い。明け方が最も寒いと知っているステラは頭では起きなくてはと思っているのに、それでもやはり体が動かなかった。
「……もう起きるのか」
低く掠れた声がすぐ後ろから聞こえる。もぞりと体ごとそちらを向くと思いの外近い距離にリヴィウスの顔があるけれどステラは動揺することなく眉を下げて口を開いた。
「すみません、起こしてしまいましたか」
「お前がこの時間に起きるのはいつものことだろう」
小さく、互いに囁くように喋るのは寝起きというのもあるけれど何より枕元で丸まって眠るてぷを起こさない為である。ぷすぷすと可愛らしい寝息を立て、てっぷりとしたお腹を上下させながら眠る姿が今のステラからは見えないがリヴィウスからは見えていることだろう。
この小さな存在を起こさない為に今二人は内緒話のように声を潜めているのだ。
「……お前が出ると寒くなる。起きるな」
「そうは言っても…」
リヴィウスの逞しい腕が慣れた様子でステラの腰を抱き、自分の方に引き寄せる。元々距離なんて無いようなものだったが、そうされたことで更に密度は高まってリヴィウスの温かさと異国的な香りが鼻腔を擽った。
良質な筋肉を纏い、そして寝具で温められた体はこれ以上ない程に暖かく、そしてどこか安心する香りにも癒されてしまいステラの瞼が少し重たくなる。ステラは勇者一行で旅をしていた時二度寝なんてしたことが無かった。あの時も誰よりも早く起きて、創造神である女神リーベに毎日祈りを捧げていたのにリヴィウスたちと旅をするようになってからそれが少し変わって来てしまっている。
「俺が寝るんだから寝ろ」
「……我儘ですね」
「知らん」
どれだけ傍若無人な態度を取られようと聖女であった頃のステラなら全てを無視して起き上がっていただろう。けれど今のステラは違うのだ。
逞しい腕と上質な温もりと香りに包まれたステラは襲い来る誘惑に逆らうことなく、折角すっきりと持ち上がった瞼を再び下ろした。背中に腕を回すことはないが、それでもリヴィウスの服をきゅっと握る。
自分が眠りやすいように抱き方の調整をしたリヴィウスが目を閉じて、また部屋に静寂が訪れる。
朝日が昇るまであと数時間。短い時間ではあるけれど、ステラは二度寝という甘美なものに身を任せることに決めて意識を手放したのだった。
──それから時間は過ぎて数時間後。
『おーきろーー!』
元気の良い声で意識が急浮上する。
「…おい、うるさいぞ」
『お前たちがずっと寝てるのがいけないんだぞ。 ボクもうお腹減ったもん! 起きろ起きろ起きろー!』
頭上でてぷとリヴィウスの声がする。寝起きでぽやぽやとする思考の中、ステラは瞼を押し上げて顔を上げた。最初に見えたのは室内ではなく、リヴィウスの肌。まだ背中に熱を感じることから抱きしめられているのだなとわかるけれど、寝起きのステラはおはようと挨拶をすることも出来ず一度ギュ、と目を閉じてどうにか眠気を追い出そうとする。
どうして二度寝した時の方が眠たいのだろうか。そう不思議に思いながら閉じていた目を開けてリヴィウスの体をとんとんと軽く叩く。
「起きたか」
「……はい。おはようございます、リヴィ、てぷさま…」
『おはよ、ステラ! ほら早く起きろよー、ボクお腹すいた!』
「はい、はい、起きます…」
先にリヴィウスが体を起こしたことで強制的に温もりがなくなり、十分に温まっている筈なのに瞬間的に冷気を感じてぎゅっと体を縮こませる。けれどさすがに起きなくてはとベッドに両腕を着いてのそのそと緩慢な動作で上半身だけ起こすと朝日に照らされた室内でふよふよと浮いているてぷの姿が見えた。
「…ふふ、今日もかわいいですねてぷ様」
締まりのない顔で笑うステラにてぷは当然だと言わんばかりに胸を張り、リヴィウスは意味がわからないと言わんばかりに息を吐いた。
穏やかでゆるりとした朝の空気の中、てぷのお腹が体に見合わない大きな音で鳴く。それにステラは目を軽く丸くしたあと、吹き出すように笑って朝の支度を始めるのだった。
ステラは二度寝した時の方が寝起きが悪い。だからその日は自然と全員の起床時間が遅れ、いつもならゆっくりと過ごす朝がばたつく。ちなみにだがステラが二度寝というものを実践したのはこの旅が始まってからだ。
初めての二度寝の時はステラのことを抱き枕にしたリヴィウスが離してくれなかった日のことだった。ほとほと困り果てたステラだったが、リヴィウスが寝ぼけ気味に「お前はもう聖女じゃないんだろうが」と低く唸ったことで「ああ確かにそうだ」と納得したのだ。
ステラは教会にいた時も旅をしていた時も誰よりも早く起きて祈りを捧げていた。その習慣が簡単に抜けるはずもなかったのだが、ステラは二度寝の心地良さを知ってしまったのだ。
これは罪だと思った。勇者リヒトを朝起しに行く度に「あと五分」と唸っていた気持ちがステラは最近になってようやくわかった。そう、二度寝とは、甘美なものであるのだ。
「駄目だ、寒い。どうして人間はこんな極寒の地で暮らそうなどと思ったのだ。これならまだ反転世界の方が過ごしやすかったぞ」
顔も洗い髪も整え、服も着替えたステラはしっかりと服を着ているリヴィウスを見上げてなんとも言えない顔をした。
「……あそこは確かに暑いも寒いもない土地でしたが…」
思い出すのは紫と黒の世界。地上のような緑や青なんてどこにも無く、土地は貧しくひび割れて、空には月蝕を起こした太陽のように白く縁取られた黒い円が二つ並ぶ奇妙な空。確かに気温という概念の無い環境ではあったけれど、それでもステラにはとてもあそこが過ごしやすいとは思えない。
そういう顔をしていたのだろう。リヴィウスがステラを見下ろして僅かに口角を下げる。
「なんだ」
「反転世界よりは絶対にこっちの方が綺麗です」
「……それは否定しない」
リヴィウスは人間の体になったことで気温も感じられるようになった。魔王の時はある種生物として存在を超越していたせいかありとあらゆることを感じずにいられたそうだ。でも今はほとんど人間と同じ。温度を感じることも出来れば味覚も人並みだし、何よりお腹も空く。
ぐぅ、とてぷよりは控えめに。けれど重たく響いた腹の虫にステラはくすりと笑う。
「朝ごはんを食べに行きましょうか。行きたいお店があるので、途中屋台での買い食いは無しです。いいですね」
『はーい!』
ぽふん、という軽快な音と共に人間の子供の姿に変身したてぷが元気良く手を上げる。それに頷きで返すと三人は部屋から出た。目指すは賑わう朝の街、飲食店が多く並ぶ道の少し奥まった場所にあるお店。
(元気にしているでしょうか)
懐かしいと思える記憶を思い出しながらステラは二人の前を歩く。ちなみにリヴィウスの手はてぷがしっかりと握っている。好奇心迷子防止の為だ。
なぜかというと素直に宿代節約の為である。ベッドは二つより一つの方が宿代は安いのだ。だから旅が始まって今まで、ベッドを分けるということはして居らず二人と一匹は常に同じベッドで眠り、目覚めて来た。
ちなみに一番に起きるのはやはりステラだ。雪国だけあって寝具も程良く重く、そして何より暖かい。目覚めるのを躊躇してしまいたくなる程の心地よさを感じるが、長年の習慣がそれを許さずゆっくりと瞼を押し上げる。
最初に見えたのは薄暗い室内。ネジュノの一日の日照時間が短く、完全に太陽が顔を出すのは朝の七時を回った頃だ。今はそれよりも随分と前の時間だろうし、きっとベッドから抜け出したらすごく寒い。明け方が最も寒いと知っているステラは頭では起きなくてはと思っているのに、それでもやはり体が動かなかった。
「……もう起きるのか」
低く掠れた声がすぐ後ろから聞こえる。もぞりと体ごとそちらを向くと思いの外近い距離にリヴィウスの顔があるけれどステラは動揺することなく眉を下げて口を開いた。
「すみません、起こしてしまいましたか」
「お前がこの時間に起きるのはいつものことだろう」
小さく、互いに囁くように喋るのは寝起きというのもあるけれど何より枕元で丸まって眠るてぷを起こさない為である。ぷすぷすと可愛らしい寝息を立て、てっぷりとしたお腹を上下させながら眠る姿が今のステラからは見えないがリヴィウスからは見えていることだろう。
この小さな存在を起こさない為に今二人は内緒話のように声を潜めているのだ。
「……お前が出ると寒くなる。起きるな」
「そうは言っても…」
リヴィウスの逞しい腕が慣れた様子でステラの腰を抱き、自分の方に引き寄せる。元々距離なんて無いようなものだったが、そうされたことで更に密度は高まってリヴィウスの温かさと異国的な香りが鼻腔を擽った。
良質な筋肉を纏い、そして寝具で温められた体はこれ以上ない程に暖かく、そしてどこか安心する香りにも癒されてしまいステラの瞼が少し重たくなる。ステラは勇者一行で旅をしていた時二度寝なんてしたことが無かった。あの時も誰よりも早く起きて、創造神である女神リーベに毎日祈りを捧げていたのにリヴィウスたちと旅をするようになってからそれが少し変わって来てしまっている。
「俺が寝るんだから寝ろ」
「……我儘ですね」
「知らん」
どれだけ傍若無人な態度を取られようと聖女であった頃のステラなら全てを無視して起き上がっていただろう。けれど今のステラは違うのだ。
逞しい腕と上質な温もりと香りに包まれたステラは襲い来る誘惑に逆らうことなく、折角すっきりと持ち上がった瞼を再び下ろした。背中に腕を回すことはないが、それでもリヴィウスの服をきゅっと握る。
自分が眠りやすいように抱き方の調整をしたリヴィウスが目を閉じて、また部屋に静寂が訪れる。
朝日が昇るまであと数時間。短い時間ではあるけれど、ステラは二度寝という甘美なものに身を任せることに決めて意識を手放したのだった。
──それから時間は過ぎて数時間後。
『おーきろーー!』
元気の良い声で意識が急浮上する。
「…おい、うるさいぞ」
『お前たちがずっと寝てるのがいけないんだぞ。 ボクもうお腹減ったもん! 起きろ起きろ起きろー!』
頭上でてぷとリヴィウスの声がする。寝起きでぽやぽやとする思考の中、ステラは瞼を押し上げて顔を上げた。最初に見えたのは室内ではなく、リヴィウスの肌。まだ背中に熱を感じることから抱きしめられているのだなとわかるけれど、寝起きのステラはおはようと挨拶をすることも出来ず一度ギュ、と目を閉じてどうにか眠気を追い出そうとする。
どうして二度寝した時の方が眠たいのだろうか。そう不思議に思いながら閉じていた目を開けてリヴィウスの体をとんとんと軽く叩く。
「起きたか」
「……はい。おはようございます、リヴィ、てぷさま…」
『おはよ、ステラ! ほら早く起きろよー、ボクお腹すいた!』
「はい、はい、起きます…」
先にリヴィウスが体を起こしたことで強制的に温もりがなくなり、十分に温まっている筈なのに瞬間的に冷気を感じてぎゅっと体を縮こませる。けれどさすがに起きなくてはとベッドに両腕を着いてのそのそと緩慢な動作で上半身だけ起こすと朝日に照らされた室内でふよふよと浮いているてぷの姿が見えた。
「…ふふ、今日もかわいいですねてぷ様」
締まりのない顔で笑うステラにてぷは当然だと言わんばかりに胸を張り、リヴィウスは意味がわからないと言わんばかりに息を吐いた。
穏やかでゆるりとした朝の空気の中、てぷのお腹が体に見合わない大きな音で鳴く。それにステラは目を軽く丸くしたあと、吹き出すように笑って朝の支度を始めるのだった。
ステラは二度寝した時の方が寝起きが悪い。だからその日は自然と全員の起床時間が遅れ、いつもならゆっくりと過ごす朝がばたつく。ちなみにだがステラが二度寝というものを実践したのはこの旅が始まってからだ。
初めての二度寝の時はステラのことを抱き枕にしたリヴィウスが離してくれなかった日のことだった。ほとほと困り果てたステラだったが、リヴィウスが寝ぼけ気味に「お前はもう聖女じゃないんだろうが」と低く唸ったことで「ああ確かにそうだ」と納得したのだ。
ステラは教会にいた時も旅をしていた時も誰よりも早く起きて祈りを捧げていた。その習慣が簡単に抜けるはずもなかったのだが、ステラは二度寝の心地良さを知ってしまったのだ。
これは罪だと思った。勇者リヒトを朝起しに行く度に「あと五分」と唸っていた気持ちがステラは最近になってようやくわかった。そう、二度寝とは、甘美なものであるのだ。
「駄目だ、寒い。どうして人間はこんな極寒の地で暮らそうなどと思ったのだ。これならまだ反転世界の方が過ごしやすかったぞ」
顔も洗い髪も整え、服も着替えたステラはしっかりと服を着ているリヴィウスを見上げてなんとも言えない顔をした。
「……あそこは確かに暑いも寒いもない土地でしたが…」
思い出すのは紫と黒の世界。地上のような緑や青なんてどこにも無く、土地は貧しくひび割れて、空には月蝕を起こした太陽のように白く縁取られた黒い円が二つ並ぶ奇妙な空。確かに気温という概念の無い環境ではあったけれど、それでもステラにはとてもあそこが過ごしやすいとは思えない。
そういう顔をしていたのだろう。リヴィウスがステラを見下ろして僅かに口角を下げる。
「なんだ」
「反転世界よりは絶対にこっちの方が綺麗です」
「……それは否定しない」
リヴィウスは人間の体になったことで気温も感じられるようになった。魔王の時はある種生物として存在を超越していたせいかありとあらゆることを感じずにいられたそうだ。でも今はほとんど人間と同じ。温度を感じることも出来れば味覚も人並みだし、何よりお腹も空く。
ぐぅ、とてぷよりは控えめに。けれど重たく響いた腹の虫にステラはくすりと笑う。
「朝ごはんを食べに行きましょうか。行きたいお店があるので、途中屋台での買い食いは無しです。いいですね」
『はーい!』
ぽふん、という軽快な音と共に人間の子供の姿に変身したてぷが元気良く手を上げる。それに頷きで返すと三人は部屋から出た。目指すは賑わう朝の街、飲食店が多く並ぶ道の少し奥まった場所にあるお店。
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