【完結】元つく二人の珍道中!〜(元)魔王と聖女の全国行脚美食旅〜

白(しろ)

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第一章 北の国の美味しいもの編

拗ねリヴィ

 てぷが戻ってきたのは蜂蜜ドリンクを飲み終わる少し前。はしゃいで来たのか頬を林檎のように染めて『ヒトの子供は元気だな』と言うものだからステラは笑い、リヴィウスは呆れたように息を吐き出した。
 汗すら滲んでいる姿を見てステラが残り僅かになったドリンクを差し出すとリヴィウスはあからさまに嫌な顔をしたものの、てぷはそんなこと気にせずに両手で受け取ってぐいっと飲み干す。体を動かしてきたばかりだったからか甘過ぎたようで「うぇ」と舌を出したが次の瞬間には目を輝かせて『甘い!』とステラを見上げていた。

「美味しいですか?」
『うん! まだ飲みたい!』
「はい、じゃあ買って来ましょうね」
「おい」
「はい?」
「俺には買わなかっただろうが」
「てぷ様は一口しか飲んでいませんし、何より私たちは大人ですから」
「年で言えばこいつが一番上だ」

 リヴィウスの長い指がてぷをびしっと指差した。
 そう、てぷはこの三人の中で一番長く生きている。この世界が誕生した時から存在している闇を司る精霊なのだから当然だし、それはステラも承知の上だ。だがしかし、ステラはそんなことを指して言っているのではないのだ。

「見た目の話です」

 ぴしゃんと言い放った一言にリヴィウスが固まる。その隙に再び屋台に赴いて飲み物を買うとベンチに座って足をぷらぷらと揺らしているてぷに渡した。

「熱いので気をつけて飲んで下さいね」
『うん!』

 満面の笑みで頷き息を吹きかける姿は癒し以外の何者でもない。今日もてぷ様は可愛いなぁとしみじみ眺めていれば隣から強い視線。そちらには案の定不機嫌なリヴィウスがいる。

「……」
「リヴィ、拗ねないで下さい」
「拗ねてなどいない」
「じゃあ目を逸らさないで」
「……」

 ステラが顔を向けた途端リヴィウスはふい、と顔を背けてしまった。そんな子供のような態度にステラは呆れるでもなくじっと見つめていると、やがて我慢比べに負けたリヴィウスがこちらを向く。
 それに笑みを向ければまるで仕方がないとでも言いたいふうにリヴィウスが息を吐いて首を横に振った。その一連の様子をじっと見ていたてぷは楽しそうに笑いながら蜂蜜の溶かされた飲み物を楽しんでいた。

 まだ朝食を食べてから僅かな時間しか経っておらず、今日はそのまま街を散策することにした。一年のほとんどが雪と共にあるこの国では売られている雑貨も街並みも当然冬仕様で、目で見ても暖かさを感じる商品ばかりだ。
 例えば眠る時に履いておくもこもこの靴下であったり、炎の魔法を駆使した保温性に優れるマグカップだったりと、暖を取るということに関しては他の追随を許さない程のラインナップを誇っている。けれどその中でも一際目を引くものがあり、ステラは思わず足を止めた。

『どうしたの?』

 今いる店はネジュノで最も賑わっている通りから一本入った落ち着いた路地にひっそりと佇む食器店。棚や店内には様々な食器や調理器具が並べられていて、ステラとしては見ているだけでも癒される空間となっている。

「この食器が素敵なだなと思いまして」

 今三人人がいるスペースには陶器の食器が並んでいる。白磁の皿に澄んだ青で模様が描かれているものや。同じく白磁の皿に街の様子や少女の絵が描かれているものもある。見た目にも華やかな食器が並ぶ中、ステラが手を伸ばしたのは白磁に縦に太くいくつか色が塗られているカップ。

「…これがか?」

 迷子防止の為にてぷと手を繋いでいるリヴィウスが不思議そうに眉を寄せた。数々の宝飾品や調度品を見てきた彼にとってはこの程度の食器は無価値に等しいのだろうなと思うが、ステラはしっかりと頷いた。

「はい。だってほら、これお揃いじゃないですか」
「お揃い?」

 ますますわからないと首すら傾げてしまったリヴィウスの目線の下でてぷが何かに気が付いたように『あ!』と声を上げた。

『これ、ボクもこれ欲しい!』
「ふふ、ですよね。ちょっと奮発しましょうか」
「…おい、待て。俺にもわかるように話せ」

 一人話題に取り残されたリヴィウスの声にステラとてぷは顔を見合わせてにい、と口角を上げた。そうして紫色のラインが入っているものをてぷに、赤のラインのものはリヴィウスに渡して、最後に青のラインが入っているものをステラが持つ。
 それでもなんだかわかっていない様子のリヴィウスにてぷはやれやれと首を横に振った。
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