【完結】元つく二人の珍道中!〜(元)魔王と聖女の全国行脚美食旅〜

白(しろ)

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第一章 北の国の美味しいもの編

参上!もぐらブラザーズ

 その日の夜、三人、否、二人と一匹は深夜の畑にてもぐらが現れるのを待っていた。

「…お前たちまで来なくても良かったんだぞ」
「誰か着いていかないとリヴィ迷子になるでしょ」
『ボクはひとりぼっちが嫌だから着いてきたぞ!』

 雪国の深夜はとてつもなく冷える。露出している肌には刺すような冷たさが襲い、ステラは巻いてきたマフラーに顔を半分を埋めたが、コートの合わせ部分からひょこりと元の姿に戻ったてぷが顔を出した。

「……なぜそんなところに入ってる」
『ここが一番あったかいし、ステラいい匂いするし』
「………」
『わ、見たことない顔してる』
「…ところでリヴィ、寒くないんですか?」

 月明かりで照らされたなんとも言えない顔がステラの方を向いた。ステラは極寒の地に合わせて頭の先から足の先まで完全防備だが、リヴィウスはなんとコートを羽織っただけなのだ。きちんと襟元まで閉められているとはいえ、あまりにも寒そうな格好にステラは思わず問いかけた。

「この程度なんともない」
「ええ? 絶対に嘘ですよ、ほら頬も鼻も赤くなってるじゃないですか」

 宿を出る前に何度も訊いたのに薄着でいるリヴィウスに眉を寄せ両手を伸ばす。その手に気が付くとリヴィウスは自然な動作で腰を折った。冷え切った陶器のような肌に指先が触れるとステラはますます眉間の皺を深くする。

「もう、やっぱり冷たいじゃないですか。明日は帽子もマフラーも買いますからね」
「……別に、必要は無いと思うが」
「ダメです買います。いいですかリヴィ、人間の体っていうのはすごく弱くて──」
『ねえ二人とも、間にボクがいるの忘れてない?』

 吐く息が交わる距離、その真ん中にひょこりと顔を覗かせたのはてぷだ。ステラの胸元の生地に前足を置いている姿はなんとも愛らしいけれどもマフラーのせいでそれは見えず、少しだけ悔しい思いをしていた。

「忘れてはいないが何故今出てくる」
『なんか甘かったから』

 リヴィウスの頬に触れたまま二人が首を傾げるとマフラーの下からてぷの大きなため息が聞こえた。そしてそれは何故だか二重、否、三重になって聞こえた。
 咄嗟にリヴィウスがステラの腕を引っ張り背中に隠すようにすると、畑の方に月明かりに照らされた大きな影が二つ現れた。

「珍しく人がいると思ったらとんでもねえもんを見ちまったぜ、なあ兄弟!」
「おうともさ。こんなクソ寒い国のクソ深夜にまさかこんな温度を感じちまうとは思わなかったぜなあ兄弟!」
「おうともよ!」
「……」

 リヴィウスが無表情です、と片手を前に出して指をぱちっと鳴らすとその影の周りにいくつもの火の玉が現れた。

「うおあああこいつら魔法使えるぞ兄弟!」
「馬鹿でっけえ声出すんじゃねえよ兄弟!」

 浮かび上がったのはこんな夜中なのにゴーグルを装着した二人組。帽子にマフラーにコートにブーツと防寒対策な、どこからどう見ても人間の姿に今度はてぷが首を傾げた。

『もぐらじゃなくない?』
「彼らはもぐらの操縦士ですからね」
『操縦士?』
「この土地にはクロートもぐらというモンスターが居て、彼らは特殊な笛を使ってもぐらを操り農作物を盗ったり、時には空き巣に入ったりするのです」
「小物だな」
「ウオォオイ! 聞こえてんぞ! 聞こえてんぞその言葉ぁ!」
「黙れ」

 つい、とリヴィウスが指を動かすと無数にあった火の玉が二人の体に素早く近付く。

「ひい! どうしよう兄弟、魔法使いを雇ってるなんて聞いてないよぉ!」
「うううう、狼狽えるんじゃねえ兄弟! 今日でこの畑からは用済みだからな! 地中にさえ逃げれば俺たちの」

 焦ってはいるがどこか勝ちを確信したかのような余裕のある顔と声にリヴィウスの眉が跳ねる。けれどどこからともなく何かが壁のようなものにぶつかる音と「ピー!」という獣の高い声がしてもぐらブラザースの顔が驚愕に染まった。
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