【完結】元つく二人の珍道中!〜(元)魔王と聖女の全国行脚美食旅〜

白(しろ)

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第一章 北の国の美味しいもの編

気絶!もぐらブラザーズ

 それからもゴン! ゴン! という音が聞こえその度に「ピー!」といっそ可哀想になる程の鳴き声が深夜の畑に響けばステラは呆れたように息を吐いた。

「もぐらブラザースさん」
「な、なんだテメエ!」

 威勢はいいが声が震えているブラザーズにステラは微笑んで見せた。

「穴に火を入れますよ?」
「‼︎」

 二人の顔が絶望と驚愕が混ざった顔に染まる。
 てぷは何が何だかわかっていないようだったが、リヴィウスは理解が出来たのか音の発生源に向かって炎の一つを移動させると断末魔のような叫びが出た。ブラザーズから。

「人でなしいいいい!」
「それだけはやっちゃダメだろうがよ!」
「あの穴にはもぐらたちがいるんだぞ!」

 そう、昼間は降り積もった雪のせいで見えなかったが、この畑には現在大量の穴が空いているのだ。正真正銘、もぐらが掘り起こした穴だ。そこから彼らは農作物を奪い、畑を荒らし金になるものは大抵なんでも盗んでいた。
 そしてもぐらだけでなくブラザースの移動手段もこの穴だ。つまり、この穴さえ塞いでしまえば勝利は確定したと言っても過言ではないのである。ステラは静かに発動した穴を塞ぐ光魔法を展開したままブラザースを見る。

「…二年前からまるでやり方が変わってない…」
『そうか、ステラはこいつらのこと知ってるんだったよな』
「ええ、まあ。その時も今と似たようなことをやっていたので捕まえてしっかり勇者たちが指導したはずなんですが…。どうやら意味はなかったようですね」

 二人はこそこそと話す。その間もブラザースは騒ぎ、想像以上の手応えの無さだったからかリヴィウスも呆れて物も言えないといった様子だ。ステラは再度ため息を吐くと一段と騒がしい声がして思わず目を丸くする。
 まるで朝が来たかのような眩しさだった。風も無いのに髪が靡くほどの魔力の圧がリヴィウスから発せられ、高熱度の青い炎が生み出される。その炎が周囲を照らしているのだ。少し離れた場所にいるステラにですら熱が伝わり、空から降る雪は地面に落ちる前に溶けてしまっている。

「リヴィ! 何をしているんですか!」

 ゆるりとこちらを振り向いたリヴィウスの目はどこまでも純粋だ。

「消せばいいだろう」

 雪と同じくらい静かな声にステラは言葉に詰まった。

「何度も繰り返すなら消せばいい。人間もモンスターもこいつらが減ったところで世界にはなんの問題も無ければ、むしろいない方が少なくともこの店の人間は助かる」

 一切の迷いも、疑問すら抱いていない声と言葉だった。
 もうリヴィウスの頭に魔族の象徴たる角はない。人間のように眠り、食事をし、温度を感じられるようになっていても、こういう瞬間に「彼は魔族なのだ」と実感する。魔族には人間のような感情はない。有りか無しか、要か不要か、それが大部分を占めている。

 リヴィウスの魔族らしさを見てしまうと、たまにステラは何も言えなくなってしまう。
 その沈黙が答えだと解釈したリヴィウスが震え上がっているブラザーズの方を向いた瞬間、ステラの胸元からすぽんと何かが抜ける感覚がした。

『ダメだぞ』

 ピコン! とこの場に不似合いな可愛らしい音が響いた。 
 もぐらブラザーズは恐怖で泡を吹いて失神し、ステラは目を丸くして固まり、リヴィウスは額に青筋を立てててぷを睨んだ。
 元のサイズのテプの両手には大きなハンマー。…にしてはデザインも見た目の重量も軽そうなものが持たれている。てぷはそれを「よいしょ」と持ち直すと再びリヴィウスの頭上に飛んで徐にそれを振り下ろした。

 ピコン! ピコ! ピコン!

 軽く幻想的とも取れる音がリヴィウスの頭から発生している。ハンマーがリバウンドするたびにピコピコと軽快な音が鳴り、その度にリヴィウスの機嫌が急降下していく。

「…なんのつもりだ」
『ダメなことをダメって言ってるだけだぞ』
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