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第一章 北の国の美味しいもの編
出発間際
「……多分、それが楽しいという感情だと思います」
ぽつ、と呟いた声は静かな寝室にはよく響いた。
「私は楽しいと時間が早く過ぎていくけど、あなたは生きてきた時間が長いから逆に長く感じてしまうんですね」
顔を上げたところで暗がりだからリヴィウスの表情は的確に捉えることは出来ない。けれどステラはなんとなくリヴィウスが照れているような気がした。
「…ふふ、照れてるんですか?」
「違う」
「本当ですか?」
「黙れ」
少しだけ緩んでいた腕の力が再び強まって逞しい胸元に顔が押し付けられる。同じ浴室の備品を使っているはずなのにやはりリヴィウスから香る異国的な匂いに心地良さを感じて、ステラは全身から力を抜いた。
「…私は、別にあなたを人間にしたいわけではないんです」
温もりと安心できる香りに包まれて緩やかな睡魔がやってくる。
「ただ、一緒になったなら、そういうものもあるんだと知って欲しいなと、思って」
力の入らない腕を動かしてリヴィウスの服を少し握った。リヴィウスは相槌も打たなければ何か言い返してくるわけでもない。でもじっとステラを見ていることはわかった。
「……私のわがままですね」
瞼が降りてきた。自分の思考の輪郭が曖昧になっていき、闇の深い場所に体が引っ張られていくような感覚になっていく。もう一呼吸でもしたら眠ってしまうだろうというその間際、、リヴィウスの吐息が髪に触れた気がした。
「……寝ろ、ステラ」
低く穏やかな声に、ステラの意識はとぷんと眠りに沈んだのだった。
───
翌朝、ネジュノから旅立った三人は陸路で港町であるノルポルに向かうことにした。ネジュノからノルポルまではそう離れておらず、冒険者ギルドでノルポル行きの馬車の護衛依頼を受けたこともあって比較的に穏やかな旅路になった。モンスターやまだ殲滅し切れていない魔族からの襲撃に備えた護衛として、という依頼だったが現れたのは倒すのも憚られる程の小型モンスターばかりで、軽くリヴィウスがあしらって終わりだ。
そうして護衛とも呼べない簡単な任務を終えて、馬車の持ち主から報奨金を受け取ったステラはしっかりとお礼を伝えてリヴィウスたちの方に振り返った。
『ダメだ! ダメだってリヴィ! 待て! ステイ!』
「少しくらいなら構わないだろう。すぐそこだぞ」
『それで何回迷子になったと思ってるんだよ! ステラーー! 早くーー!』
そこにはてぷにがっちりと手を掴まれ、それでも尚興味のそそられる方向へと進もうとしているリヴィウスの姿があった。リヴィウスのことは主に高貴な猫のようだと思っているステラだが、こんな時ばかりは主人の言うことを聞かない大型犬のようだとも思う。
小さな子供に手を引っ張られ我儘を言う姿はとても元魔王には見えないけれど、これこそがステラの知るリヴィウスだなと思わず笑ってしまった。
『ステラ! 笑ってないで止めてよぉ! 力強いんだってコイツ!』
元の姿に戻ればリヴィウスを止めることなんて容易いのだろうが、今のてぷの姿は人間の子供だ、それにステラとの約束で出来るだけ目立つことはしない、ということになっている。(今も十分目立っているがそこは目を瞑ることにする)
だからなんとか力だけでリヴィウスを止めようとしているのだが、まあまずもって不可能な話しである。
ぽつ、と呟いた声は静かな寝室にはよく響いた。
「私は楽しいと時間が早く過ぎていくけど、あなたは生きてきた時間が長いから逆に長く感じてしまうんですね」
顔を上げたところで暗がりだからリヴィウスの表情は的確に捉えることは出来ない。けれどステラはなんとなくリヴィウスが照れているような気がした。
「…ふふ、照れてるんですか?」
「違う」
「本当ですか?」
「黙れ」
少しだけ緩んでいた腕の力が再び強まって逞しい胸元に顔が押し付けられる。同じ浴室の備品を使っているはずなのにやはりリヴィウスから香る異国的な匂いに心地良さを感じて、ステラは全身から力を抜いた。
「…私は、別にあなたを人間にしたいわけではないんです」
温もりと安心できる香りに包まれて緩やかな睡魔がやってくる。
「ただ、一緒になったなら、そういうものもあるんだと知って欲しいなと、思って」
力の入らない腕を動かしてリヴィウスの服を少し握った。リヴィウスは相槌も打たなければ何か言い返してくるわけでもない。でもじっとステラを見ていることはわかった。
「……私のわがままですね」
瞼が降りてきた。自分の思考の輪郭が曖昧になっていき、闇の深い場所に体が引っ張られていくような感覚になっていく。もう一呼吸でもしたら眠ってしまうだろうというその間際、、リヴィウスの吐息が髪に触れた気がした。
「……寝ろ、ステラ」
低く穏やかな声に、ステラの意識はとぷんと眠りに沈んだのだった。
───
翌朝、ネジュノから旅立った三人は陸路で港町であるノルポルに向かうことにした。ネジュノからノルポルまではそう離れておらず、冒険者ギルドでノルポル行きの馬車の護衛依頼を受けたこともあって比較的に穏やかな旅路になった。モンスターやまだ殲滅し切れていない魔族からの襲撃に備えた護衛として、という依頼だったが現れたのは倒すのも憚られる程の小型モンスターばかりで、軽くリヴィウスがあしらって終わりだ。
そうして護衛とも呼べない簡単な任務を終えて、馬車の持ち主から報奨金を受け取ったステラはしっかりとお礼を伝えてリヴィウスたちの方に振り返った。
『ダメだ! ダメだってリヴィ! 待て! ステイ!』
「少しくらいなら構わないだろう。すぐそこだぞ」
『それで何回迷子になったと思ってるんだよ! ステラーー! 早くーー!』
そこにはてぷにがっちりと手を掴まれ、それでも尚興味のそそられる方向へと進もうとしているリヴィウスの姿があった。リヴィウスのことは主に高貴な猫のようだと思っているステラだが、こんな時ばかりは主人の言うことを聞かない大型犬のようだとも思う。
小さな子供に手を引っ張られ我儘を言う姿はとても元魔王には見えないけれど、これこそがステラの知るリヴィウスだなと思わず笑ってしまった。
『ステラ! 笑ってないで止めてよぉ! 力強いんだってコイツ!』
元の姿に戻ればリヴィウスを止めることなんて容易いのだろうが、今のてぷの姿は人間の子供だ、それにステラとの約束で出来るだけ目立つことはしない、ということになっている。(今も十分目立っているがそこは目を瞑ることにする)
だからなんとか力だけでリヴィウスを止めようとしているのだが、まあまずもって不可能な話しである。
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