【完結】元つく二人の珍道中!〜(元)魔王と聖女の全国行脚美食旅〜

白(しろ)

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第二章 西の国の花の祭り編

南門を抜けて

「フロレ・シェリに行きたいのかい? じゃあ南の門を通って出るといい。あそこから出て真っ直ぐ進んだら着くぞ。ああでも気をつけるんだよ、」

 果物に砂糖を掛けて飴にしている屋台でそれぞれが気になったものを買い、それを食べたあとステラがベンチに座って休んでいる老人に森の行き方を話しかけた。すると老人は朗らかに笑い、聞かれ慣れているのか穏やかなだが慣れた口調で場所や森でも注意事項も教えてくれる。
 指差された先に見えるのは石材で作られた市壁。どうやらあちらが南門らしい。

 老人にお礼を言ってから三人は教えて貰った方向へと進む。街の中心部から離れるに連れて洗練とされた街の印象は少し庶民的になり、門の側ともなると自然の方がずっと多かった。
 魔族やモンスターからの襲撃に備えて建てられた壁はもちろん高く、厚さもそれなりだ。日中は余程のことが無い限り門は開け放たれているらしくステラたち以外にも何組かの冒険者のような人たちが門を潜っていくのが見えた。
 門の側には衛兵がいるけれど魔王が討ち倒されほとんどの魔族が消え去った今、彼らの表情はにこやかだ。以前はいつ来るかわからない魔族の襲撃にどの国も怯えていたけれど、平和になろうとしている世界はなんとも穏やかで、悪く言えば平和ボケしているように感じられる。

 でもそれでいいのだろう。きっとこれがみんなが求めた平和の姿なんだろうなと思いながら、ステラたちも門を潜った。
 一度門を潜れば視界には自然しか映らない。どこまでも続く緑の大地に、風に吹かれてそよぐ草原。所々に大小それぞれの木があって小鳥の声も聞こえる。その景色を見て思わず呟いた。

「…懐かしい」
「来たことがあるのか?」
「いえ、初めてです」

 人が何年、何十年と歩き踏み固められた道には草木は生えておらず、道標のように遠くまで続いている。たまに草むらに入れば低級のモンスターとエンカウントして、そこからなし崩し的に戦う。ステラはそんな旅をこういう景色から始めたのだ。

「…でも似ています。旅の最初の景色に。……きっとそれ程遠くないからですね」

 吹く風が髪を攫い、それを片手で押さえながらステラは前方に聳え立つ荘厳な山を見た。その山は霊山フェデル。この世界のほぼ全ての人が知っていると言っても過言では無い、創造の女神リーベが眠るとされている山だ。
 ここからは見えないけれど違う角度から見れば山肌と一体化するように建てられた大聖堂も確認出来るだろう。そこがステラの育った場所だ。

(本当に懐かしい…)

 もう二年も前のことなのに旅立ちの日は昨日のことのように思い出せる。寂しがって泣くリマも、そのリマを必死に止める側近の人もその時の言葉でさえ。

「……お前は」

 いつの間にかてぷはリヴィウスの腕から降りていた。前方で自然を感じている姿を視界に捉えつつ、ステラは隣に意識を向ける。

「…戻りたいとは思わないのか」

 問われた言葉にステラはもう一度霊山を見た。

「……難しい質問ですね」


 気付くとステラは笑っていた。

「いつかは戻るべきなんだと思います。きっととても悲しませてしまっているから。でも聖女に戻りたいか、と訊かれると答えはノーです。ご覧の通り世界は平和で、この世界にはもう聖女は必要ありませんから」

 出発の時の祖父と慕うリマの言葉を思い出す。

(「帰ってきたら男の子としての生活を保証するからね!」)

 ぼろぼろと泣きながら言っていた言葉だが、多分叶わないだろう。こんな状況なら尚更。

「でももし教会に戻ってしまったら、きっと私はまた聖女になってしまうんだと思います。それこそ奇跡だなんだと祭り上げられて毎日目まぐるしい程忙しくなるでしょう。……それは嫌です」

 そう、ただ嫌なのだ。リマに会いたいという気持ちはある。ただ一目会って「生きていますよ」と教えたい。でもそれをしたらステラはきっとあの場所から出られなくなってしまう。それが何よりも嫌なのだ。

『ていうかさ、すんごく今更なこと聞いていい?』

 いつの間にか戻ってきたてぷがステラのすぐ側で首を傾げた。

『なんでステラは聖女なんだ? 男なのに』
「……あら、言ってませんでしたっけ?」

 てぷは大きく頷いて、リヴィウスも微かに頷いた。
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