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第二章 西の国の花の祭り編
はしゃぎ過ぎたおじいちゃん
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「おじいちゃん、じゃなかった。教皇リマ様が早とちりをなさったのです」
『…早とちり?』
てぷは大きな目をパチリと瞬かせた。
「はい。リマ様はこの世界で唯一創造神リーベ様のお声を聞くことの出来る方で、ある日リーベ様から“次の子が生まれる”というお声を聞いたらしいのです。リーベ様からの神託で出生が明言されるのは聖なる力を持つ子供のみ。だからリマ様は、その、……はしゃいでしまったのです」
当然その時まだステラは生まれていない。母の胎の中だ。当時のことを知るはずがないステラだけれど、その時の教皇リマのはしゃぎっぷりは容易に想像が出来た。「聖女ちゃんがわしの代で生まれるやったー!」絶対にこんなはしゃぎ方だ。
はしゃいだ教皇には権力があった。だからこそそのはしゃいだ心持ちのまま各国に勝手に「聖女が誕生する」というお触れを出し、勝手に市井に降りて「聖女が誕生するんじゃよ―!」とそれはもうはしゃぎ倒したに違いないのだ。
その結果、創造神リーベから“次代の聖者は”と男児を指す声を聞いた時教皇リマは頭を抱えて膝から崩れ落ちたのであった。
「…これが身内の間だけの話なら問題なかったのでしょうが、リマ様はもう既に各国に連絡してしまっていて、………引っ込みがつかなくなってしまったんですよね」
「………」
「やめてください。「そんな馬鹿な」みたいな顔で私を見ないでください」
こちらを見る視線が痛かった。しかもてぷまでリヴィウスと同じような目をしてステラのことを見ていた。自分が犯した失態ではないはずなのにステラは青空の下とても心許無い感情になっていた。
「…そんな馬鹿げたことでずっと聖女として生きてきたのか…?」
俄には信じ難い、そんな顔をしていた。
「……これは多分お二人にはピンとこないお話だと思うのですが、人間には権力だとか権威だとか、そういうものがありまして。この場合で言うと教皇様ですね。あの方はこの世界でもかなり高位の方なので、そういう人の発言は中々撤回出来ないのです」
『なんで? 間違ったことは間違ったって言った方がいいぞ』
「そうできるのが理想なのですが、組織というのは面倒なのです」
ゆっくりと森に続く道を歩く。
「とても偉い人が間違った情報を嬉々として流してしまうというのは、外聞が悪いんです。信用問題にもなるし、最悪教会から人が離れかねない。ただ性別を間違って公表してしまっただけのことと思われるかもしれないのですが、その間違いすら許されないのが地位や名誉のある方の可哀想なところだなと思います」
ステラは物心付いた時には既に教会にいた。だからステラは家族はおろか母の顔すら知らずに今日まで生きてきた。
情報だけ見たら不憫だと思われるかもしれないが、幼少期からの記憶を思い返すとむしろいい思い出の方が多いような気がする。
「リマ様は私を本当の家族のように愛してくださいました。だから私自身性別には拘りがありませんし、怒っても気にしてもいません。あ、もちろん自分が男性だという自覚はありますよ?」
道を進むとやがて鬱蒼とした森が見えてきた。その森から約五十メートル離れた場所に古ぼけてはいるがどことなく貫禄を感じさせる看板が立っていた。“この先フロレ・シェリの森”そう書かれた看板を見てもう一度森の方向に視線を向ける。
同じようなタイミングで南門を抜けた冒険者たちは途中の別れ道で逸れた組もいて、見る限りではステラたちを含めて三組程度がこの場所を目指したことになる。道中モンスターに出くわすわけでもなくただ散歩気分で目的地に着いてしまうとやや拍子抜けだ。
森に入る手前で足を止めて二人を見るとステラは微笑んだ。
「私が聖女として生きてきた理由はそんな感じです。ご納得いただけましたか?」
「あまりにしょうもなさ過ぎて今でも半信半疑だがな」
『やっぱヒトの子って変だぞ』
想像通りの反応に軽く苦笑しながら「では行きましょう」と声を掛け再び足を動かす。森に入る手前でリヴィウスと手を繋いだのは当然迷子防止の為である。きっとリヴィウスはこの森でも好奇心が刺激されるはずだと、ステラは直感していた。
『…早とちり?』
てぷは大きな目をパチリと瞬かせた。
「はい。リマ様はこの世界で唯一創造神リーベ様のお声を聞くことの出来る方で、ある日リーベ様から“次の子が生まれる”というお声を聞いたらしいのです。リーベ様からの神託で出生が明言されるのは聖なる力を持つ子供のみ。だからリマ様は、その、……はしゃいでしまったのです」
当然その時まだステラは生まれていない。母の胎の中だ。当時のことを知るはずがないステラだけれど、その時の教皇リマのはしゃぎっぷりは容易に想像が出来た。「聖女ちゃんがわしの代で生まれるやったー!」絶対にこんなはしゃぎ方だ。
はしゃいだ教皇には権力があった。だからこそそのはしゃいだ心持ちのまま各国に勝手に「聖女が誕生する」というお触れを出し、勝手に市井に降りて「聖女が誕生するんじゃよ―!」とそれはもうはしゃぎ倒したに違いないのだ。
その結果、創造神リーベから“次代の聖者は”と男児を指す声を聞いた時教皇リマは頭を抱えて膝から崩れ落ちたのであった。
「…これが身内の間だけの話なら問題なかったのでしょうが、リマ様はもう既に各国に連絡してしまっていて、………引っ込みがつかなくなってしまったんですよね」
「………」
「やめてください。「そんな馬鹿な」みたいな顔で私を見ないでください」
こちらを見る視線が痛かった。しかもてぷまでリヴィウスと同じような目をしてステラのことを見ていた。自分が犯した失態ではないはずなのにステラは青空の下とても心許無い感情になっていた。
「…そんな馬鹿げたことでずっと聖女として生きてきたのか…?」
俄には信じ難い、そんな顔をしていた。
「……これは多分お二人にはピンとこないお話だと思うのですが、人間には権力だとか権威だとか、そういうものがありまして。この場合で言うと教皇様ですね。あの方はこの世界でもかなり高位の方なので、そういう人の発言は中々撤回出来ないのです」
『なんで? 間違ったことは間違ったって言った方がいいぞ』
「そうできるのが理想なのですが、組織というのは面倒なのです」
ゆっくりと森に続く道を歩く。
「とても偉い人が間違った情報を嬉々として流してしまうというのは、外聞が悪いんです。信用問題にもなるし、最悪教会から人が離れかねない。ただ性別を間違って公表してしまっただけのことと思われるかもしれないのですが、その間違いすら許されないのが地位や名誉のある方の可哀想なところだなと思います」
ステラは物心付いた時には既に教会にいた。だからステラは家族はおろか母の顔すら知らずに今日まで生きてきた。
情報だけ見たら不憫だと思われるかもしれないが、幼少期からの記憶を思い返すとむしろいい思い出の方が多いような気がする。
「リマ様は私を本当の家族のように愛してくださいました。だから私自身性別には拘りがありませんし、怒っても気にしてもいません。あ、もちろん自分が男性だという自覚はありますよ?」
道を進むとやがて鬱蒼とした森が見えてきた。その森から約五十メートル離れた場所に古ぼけてはいるがどことなく貫禄を感じさせる看板が立っていた。“この先フロレ・シェリの森”そう書かれた看板を見てもう一度森の方向に視線を向ける。
同じようなタイミングで南門を抜けた冒険者たちは途中の別れ道で逸れた組もいて、見る限りではステラたちを含めて三組程度がこの場所を目指したことになる。道中モンスターに出くわすわけでもなくただ散歩気分で目的地に着いてしまうとやや拍子抜けだ。
森に入る手前で足を止めて二人を見るとステラは微笑んだ。
「私が聖女として生きてきた理由はそんな感じです。ご納得いただけましたか?」
「あまりにしょうもなさ過ぎて今でも半信半疑だがな」
『やっぱヒトの子って変だぞ』
想像通りの反応に軽く苦笑しながら「では行きましょう」と声を掛け再び足を動かす。森に入る手前でリヴィウスと手を繋いだのは当然迷子防止の為である。きっとリヴィウスはこの森でも好奇心が刺激されるはずだと、ステラは直感していた。
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