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第二章 西の国の花の祭り編
花祭りの始まり
それから二日後、ペタルの街では盛大な花の祭りが開催された。
元々漁業が盛んな街というだけあって港のすぐ側に大きな広場があり、そこから円形状に店や道、水路が続いていく。その大きな広間では朝から花火が上がり、この街を取り仕切っている人物が声高に祭りの開会を宣言していた。
大きな通りには花で作られた様々な像が飾られ、空からは雪のように小さな花びらが風魔法によって降り注ぐ。他にも数え切れないほどの屋台が並び、この街で商売をしている店は花祭り仕様なのか店頭にも店内にも溢れんばかりの花が飾ってある。
濃淡も形も大きさも様々な花が飾られ、街の中は甘い蜜の香りが漂っている。見た目にも、そして街の至る所から聞こえてくる音楽のおかげで耳にも華やかな様子にステラたちは感嘆の声を上げた。
『すごい! すごいすごいぞ! こんなのボク見たことないぞ!』
今日も今日とてリヴィウスに抱き上げられたてぷが目を輝かせながら大きな声ではしゃぐ。いつもなら黙れと言うリヴィウスも、今日は街の活気に当てられているし驚いているのか素直に頷いていた。
「てぷ様のお祭りは厳かなものですからね」
闇の精霊を祀っているソンブル村では年に一回祭りがある。けれどそれはとても静かで厳かで、まさしく精霊の為にある静かに祈りを捧げるための祭りだ。確かにそれと比べたらこの祭りは全くの別物に見えるだろう。
一見冷静に見えるステラも、実は少し気分が高揚していた。
世界を周り主要都市にはほとんど向かっただろうし、精霊を呼び起こす祭りなんかも経験してきた。けれどそれらは全て魔王討伐という大義の元行われたものだ。聖女ではなくステラとして祭りに参加するのは、これが生まれて初めてだ。
大広間に建設されたステージでは軽快で愉快な音楽に合わせて何人もの着飾った女性たちがドレスの裾を翻しながら踊り、その中央で大陸でも有名な歌手が高らかにオープニングに相応しい曲を歌い上げている。
誰も彼もが目を輝かせ、そして音楽に乗って体を揺らし親密な関係の人たちが手を取り合って踊る様はどこからどう見て幸せそのもので、自然と表情が明るくなる。
「…人間は、花が咲くというだけでこんな祭りをするのか」
リヴィウスがステラに顔を近付けて訊いてくる。周りの音が賑やかだから物理的な距離を縮めないと声が掻き消されてしまうからだ。ステラはリヴィウスが聴きやすいようにと背伸びをして耳元に顔を寄せた。
「今年も無事に春を迎えられたことを祝う祭りだそうです。無事に一年を過ごし、春の恵みをもたらしてくれる女神リーベへの感謝の祭とも言われていますが、春をお祝いする方がきっと大事なことですね」
「……神への感謝でなくていいのか」
「女神リーベは確かに加護を与えてはくださいますが、この一年を生きたのは間違いなくここに住む皆さんですから。冬を耐えたぞ、って喜んでもいいと思うんです」
「……聖女がそんなことを言っていいのか」
「元、です」
人がひしめき合い、賑やかな音で満たされた空間ではリヴィウスとステラの秘めやかな会話なんて誰も気に止めない。
「……魔王が討たれた以上、聖女ももうお役御免ですから」
聖女もしくは聖者とは、魔王を討つ為に女神リーベから選ばれた人間のことだ。何百年に一度、または何十年に一度、不規則に選ばれる。そうして魔王を討つことが出来たなら、その人間は聖女ではなくなる。ただの聖職者になるのだ。
それは勇者も同じで、彼の場合は騎士になったり世界を巡る冒険者になったり、そんな風に自由に生きるのだろう。
魔王を討ち世界を救った英雄として今を生きているだろうかつての仲間たちを思い出して、少しだけ懐かしい気持ちになる。みんな元気でいてくれたらいいな、そう思った。
「さあ、色々な場所に行ってみましょう。折角のお祭りですから」
そんな懐かしさを胸の中にしまって、しっかりとリヴィウスの手を握った。ただのステラとなって、というよりはこの世に生を受けて初めての祭りをしっかりと楽しもうとステラは雑踏の中に足を踏み出した。
元々漁業が盛んな街というだけあって港のすぐ側に大きな広場があり、そこから円形状に店や道、水路が続いていく。その大きな広間では朝から花火が上がり、この街を取り仕切っている人物が声高に祭りの開会を宣言していた。
大きな通りには花で作られた様々な像が飾られ、空からは雪のように小さな花びらが風魔法によって降り注ぐ。他にも数え切れないほどの屋台が並び、この街で商売をしている店は花祭り仕様なのか店頭にも店内にも溢れんばかりの花が飾ってある。
濃淡も形も大きさも様々な花が飾られ、街の中は甘い蜜の香りが漂っている。見た目にも、そして街の至る所から聞こえてくる音楽のおかげで耳にも華やかな様子にステラたちは感嘆の声を上げた。
『すごい! すごいすごいぞ! こんなのボク見たことないぞ!』
今日も今日とてリヴィウスに抱き上げられたてぷが目を輝かせながら大きな声ではしゃぐ。いつもなら黙れと言うリヴィウスも、今日は街の活気に当てられているし驚いているのか素直に頷いていた。
「てぷ様のお祭りは厳かなものですからね」
闇の精霊を祀っているソンブル村では年に一回祭りがある。けれどそれはとても静かで厳かで、まさしく精霊の為にある静かに祈りを捧げるための祭りだ。確かにそれと比べたらこの祭りは全くの別物に見えるだろう。
一見冷静に見えるステラも、実は少し気分が高揚していた。
世界を周り主要都市にはほとんど向かっただろうし、精霊を呼び起こす祭りなんかも経験してきた。けれどそれらは全て魔王討伐という大義の元行われたものだ。聖女ではなくステラとして祭りに参加するのは、これが生まれて初めてだ。
大広間に建設されたステージでは軽快で愉快な音楽に合わせて何人もの着飾った女性たちがドレスの裾を翻しながら踊り、その中央で大陸でも有名な歌手が高らかにオープニングに相応しい曲を歌い上げている。
誰も彼もが目を輝かせ、そして音楽に乗って体を揺らし親密な関係の人たちが手を取り合って踊る様はどこからどう見て幸せそのもので、自然と表情が明るくなる。
「…人間は、花が咲くというだけでこんな祭りをするのか」
リヴィウスがステラに顔を近付けて訊いてくる。周りの音が賑やかだから物理的な距離を縮めないと声が掻き消されてしまうからだ。ステラはリヴィウスが聴きやすいようにと背伸びをして耳元に顔を寄せた。
「今年も無事に春を迎えられたことを祝う祭りだそうです。無事に一年を過ごし、春の恵みをもたらしてくれる女神リーベへの感謝の祭とも言われていますが、春をお祝いする方がきっと大事なことですね」
「……神への感謝でなくていいのか」
「女神リーベは確かに加護を与えてはくださいますが、この一年を生きたのは間違いなくここに住む皆さんですから。冬を耐えたぞ、って喜んでもいいと思うんです」
「……聖女がそんなことを言っていいのか」
「元、です」
人がひしめき合い、賑やかな音で満たされた空間ではリヴィウスとステラの秘めやかな会話なんて誰も気に止めない。
「……魔王が討たれた以上、聖女ももうお役御免ですから」
聖女もしくは聖者とは、魔王を討つ為に女神リーベから選ばれた人間のことだ。何百年に一度、または何十年に一度、不規則に選ばれる。そうして魔王を討つことが出来たなら、その人間は聖女ではなくなる。ただの聖職者になるのだ。
それは勇者も同じで、彼の場合は騎士になったり世界を巡る冒険者になったり、そんな風に自由に生きるのだろう。
魔王を討ち世界を救った英雄として今を生きているだろうかつての仲間たちを思い出して、少しだけ懐かしい気持ちになる。みんな元気でいてくれたらいいな、そう思った。
「さあ、色々な場所に行ってみましょう。折角のお祭りですから」
そんな懐かしさを胸の中にしまって、しっかりとリヴィウスの手を握った。ただのステラとなって、というよりはこの世に生を受けて初めての祭りをしっかりと楽しもうとステラは雑踏の中に足を踏み出した。
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