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第二章 西の国の花の祭り編
人間は眩しい
大規模な祭りだからか大通りはもちろん祭りのメイン会場にもなっている大広場から少し離れた路地や小さな広場にまで、目移りしてしまいそうな程の屋台や出し物があって主にてぷとリヴィウスがはしゃいでいた。
ステラもはしゃぎはしたが、自分よりもずっとはしゃいでいる人を見ると不思議と冷静になれるもので、気がついたら走り出しそうになっているリヴィウスと、珍しく今日はそれを止めることなくむしろ助長しているてぷを止めるのに一苦労だった。
それでもやはり楽しくて、三人は気の向くままに屋台を巡り花祭りの時限定で売られるという花冠を買い頭につけたり、勝てば食事券や小麦粉を貰える腕相撲大会にリヴィウスが参加して優勝をもぎ取ったりと思い思いの祭りを楽しんだ。
優勝賞品となった小麦粉一年分はステラが苦笑しながらなんとかインベントリに収納した。
「…はあ、楽しいですね」
そして今は比較的落ち着いている店のテラス席でリヴィウスとステラはのんびりとデザートを楽しんでいた。
「…最初は良いが後から面倒になるな、この人混みは」
「歩くのもままならない場所もありましたしね。こんなに大きなお祭りは私も初めてです」
「……あいつはどうしてあんなにはしゃいでるんだ」
小麦粉と牛乳、それから砂糖などで味付けされた生地を薄く焼いて、その上にフルーツやクリームが乗せられたものを切り分けてからステラは視線をすぐ側の広場に向けた。教会の目の前に作られた広場には子供たちが集まって追いかけっこや隠れん坊をして遊んでいる。
小さな体がぴょこぴょこと動く中に一際目立つ紫色を見つけてステラは頬を緩めた。
「てぷ様は子供が好きなんですね」
「あいつ自体がそうだからだろう」
「私たちよりもずっと年上ですよ?」
「中身の話だ」
魔王だった時は食事にすらも興味が湧かなかったと言っていたリヴィだが、デザートを切り分ける所作は極めて上品だ。音を立てることもなく流れるような自然な動作で甘いデザートを口に運ぶのだけれど、食べる際に開いた口の大きさはとてもワイルドだ。
リヴィウスの味覚はどちらかと言えば子供寄りだと思う。辛いものや苦いものは嫌いで、甘くてわかりやすく美味しいものを好む。だから今食べているものも気に入ったらしく眺めている間にぺろりと食べ切ってしまった。フルーツの一粒まで綺麗に完食し、何も無くなった皿を見てほんの少し落ち込んでいる様子にステラは笑った。
「リヴィ」
自分の分を一口サイズより少し大きめに切り分け、それをフォークに刺してリヴィウスの口元へと運ぶ。それに少し驚いたように瞬きをしていたが、やがて大きな口を開けて差し出されたデザートを食べた。
「これも美味しいですか?」
「ああ、うまい」
「そうですか」
随分と素直になったなと、ステラも小さく切り分けたデザートを口に運びながら思った。
「…ステラ」
あと、名前を呼ぶことも。
「どうしました? あ、もう一口食べますか?」
リヴィウスが微妙な顔をしていて「あ、間違ったかな」と思いつつも開けられた口を見て笑うと、また大きめに切ったデザートを口元に運ぶ。それを咀嚼する様子を見ていればリヴィウスの指が広場の方を指さした。
「?」
不思議に思いながらそちらに目を向けると、教会の周りで結婚式が行われているのが見えた。
「…あれはなんだ」
「あれは結婚式ですね。思い合った人たちが夫婦となる時にする儀式のようなものです」
教会の扉から現れ、階段を降っていく二人は陽の光を反射するほどの眩い白の服を着ている。周囲にいるのは友人や家族だろうか。微かに聞こえるあたたかな声に目を細めながらステラたちはその様子を見ていた。
「……人間は、眩しいな」
言葉通り、リヴィウスは太陽を見ているかのような表情をしていた。そういえば彼には人の魂の色が見えるんだった、とステラは思い出した。
だとすれば、今彼の目には幸せの絶頂にいるといっても差し支えないあの光景はそれこそ太陽のように光り輝いて見えているのかもしれない。ステラの目に見えるのはやはり幸せそうに笑う人々の姿だが、確かにそれも眩しい光景だと思った。
ステラもはしゃぎはしたが、自分よりもずっとはしゃいでいる人を見ると不思議と冷静になれるもので、気がついたら走り出しそうになっているリヴィウスと、珍しく今日はそれを止めることなくむしろ助長しているてぷを止めるのに一苦労だった。
それでもやはり楽しくて、三人は気の向くままに屋台を巡り花祭りの時限定で売られるという花冠を買い頭につけたり、勝てば食事券や小麦粉を貰える腕相撲大会にリヴィウスが参加して優勝をもぎ取ったりと思い思いの祭りを楽しんだ。
優勝賞品となった小麦粉一年分はステラが苦笑しながらなんとかインベントリに収納した。
「…はあ、楽しいですね」
そして今は比較的落ち着いている店のテラス席でリヴィウスとステラはのんびりとデザートを楽しんでいた。
「…最初は良いが後から面倒になるな、この人混みは」
「歩くのもままならない場所もありましたしね。こんなに大きなお祭りは私も初めてです」
「……あいつはどうしてあんなにはしゃいでるんだ」
小麦粉と牛乳、それから砂糖などで味付けされた生地を薄く焼いて、その上にフルーツやクリームが乗せられたものを切り分けてからステラは視線をすぐ側の広場に向けた。教会の目の前に作られた広場には子供たちが集まって追いかけっこや隠れん坊をして遊んでいる。
小さな体がぴょこぴょこと動く中に一際目立つ紫色を見つけてステラは頬を緩めた。
「てぷ様は子供が好きなんですね」
「あいつ自体がそうだからだろう」
「私たちよりもずっと年上ですよ?」
「中身の話だ」
魔王だった時は食事にすらも興味が湧かなかったと言っていたリヴィだが、デザートを切り分ける所作は極めて上品だ。音を立てることもなく流れるような自然な動作で甘いデザートを口に運ぶのだけれど、食べる際に開いた口の大きさはとてもワイルドだ。
リヴィウスの味覚はどちらかと言えば子供寄りだと思う。辛いものや苦いものは嫌いで、甘くてわかりやすく美味しいものを好む。だから今食べているものも気に入ったらしく眺めている間にぺろりと食べ切ってしまった。フルーツの一粒まで綺麗に完食し、何も無くなった皿を見てほんの少し落ち込んでいる様子にステラは笑った。
「リヴィ」
自分の分を一口サイズより少し大きめに切り分け、それをフォークに刺してリヴィウスの口元へと運ぶ。それに少し驚いたように瞬きをしていたが、やがて大きな口を開けて差し出されたデザートを食べた。
「これも美味しいですか?」
「ああ、うまい」
「そうですか」
随分と素直になったなと、ステラも小さく切り分けたデザートを口に運びながら思った。
「…ステラ」
あと、名前を呼ぶことも。
「どうしました? あ、もう一口食べますか?」
リヴィウスが微妙な顔をしていて「あ、間違ったかな」と思いつつも開けられた口を見て笑うと、また大きめに切ったデザートを口元に運ぶ。それを咀嚼する様子を見ていればリヴィウスの指が広場の方を指さした。
「?」
不思議に思いながらそちらに目を向けると、教会の周りで結婚式が行われているのが見えた。
「…あれはなんだ」
「あれは結婚式ですね。思い合った人たちが夫婦となる時にする儀式のようなものです」
教会の扉から現れ、階段を降っていく二人は陽の光を反射するほどの眩い白の服を着ている。周囲にいるのは友人や家族だろうか。微かに聞こえるあたたかな声に目を細めながらステラたちはその様子を見ていた。
「……人間は、眩しいな」
言葉通り、リヴィウスは太陽を見ているかのような表情をしていた。そういえば彼には人の魂の色が見えるんだった、とステラは思い出した。
だとすれば、今彼の目には幸せの絶頂にいるといっても差し支えないあの光景はそれこそ太陽のように光り輝いて見えているのかもしれない。ステラの目に見えるのはやはり幸せそうに笑う人々の姿だが、確かにそれも眩しい光景だと思った。
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