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第二章 西の国の花の祭り編
不機嫌な猛獣
「え、えっと、私は別に構わないのですが、どうして私の目が見たいんですか?」
「おい」
不満げなリヴィウスの言葉に苦笑していたら不意に目の前が暗くなった。どうやら目を塞がれているらしいがその手の小ささや高い温度からてぷが背後に回って目隠しをしているんだということに気づく。
どうしてこんなにも厳重に守られているんだろうかと疑問に思いつつ、店主の言葉を待っていればやがて諦めたように息を吐く音が聞こえた。
「そんな怖い顔で睨まないでくれよ。……その兄さんの目が噂に聞く聖女様の目の色に近いんじゃねえかって思ったのさ」
聖女、という言葉にステラは目を見開いた。
「聖女様の目は冬の海みたいな青色っていうじゃねえか。それこそ「氷の聖女様」っつーあだ名に恥じないくらいの冷たい色だって噂されててな? 魔王討伐するまでは対して話題にもならなかったのに今じゃ聖女様は世界的スターだ。どんな宝石商も今血眼になって青い宝石を探し回ってんだよ」
……。ステラは今言われた言葉が何一つ理解出来ていなかった。否、できれば忘れてしまいたい固有名詞を出されたことは分かったけれど、それ以外は何も理解出来なかった。聖女が、世界的スター…? 一体全体どうなっているんだと、ステラの頭はシンプルに混乱していた。
「救国の聖女の目の色のペンダント、ネックレス、ブレスレット、ピアス、想像しただけで涎が出るくらいの商売が出来る程度には今アツいんだ」
「……悪趣味だな、死人だぞ」
低い声が軽蔑の色を含んで吐き捨てた。
「商売人なんてそんなもんだぜ、お兄さん。今有名な芸術家も死んでから価値が出たんだ」
目元を隠されているから詳細はわからないけれど、今流れている空気が悪いということは察することが出来た。そしてこれを放置するのは悪手だということも。
「……私はその聖女様ではないので、目を見たとしても全く意味はないと思うのですが」
出来るだけ柔らかく、敵意が無いように話し掛けると店主の意識がリヴィウスからステラに移った。
「本物じゃなくても構わねえんだ。こういうのはな“それっぽい”ってのが大事なんだよ」
「鉱石の質には拘るのに?」
その問いに店主はおかしそうに笑った。
「もちろん素材には拘るさ、絶対にな。それが俺のプライドだ。けど聖女の目の色が本物かどうかは関係無え。違っていてもそれっぽい文句をつけて出せばいい。売れればこっちのモンだからな」
「では、目を見せる代わりにここの商品を三つほどいただけますか?」
「は?」
『ええ⁉︎』
驚いたのは店主ではなくリヴィウスとてぷだった。
「おういいぜ。嫌な気分にさせちまった謝罪も兼ねて持ってってくれ」
「ありがとうございます。てぷ様、大丈夫ですよ」
「駄目だ」
それでも尚食い下がったリヴィウスにステラは暗い視界の中驚いた。
「似た色なら俺がこの中から選んでやる」
「………そんなおっかねえ顔で睨まねえで下さいよ。あんたただでさえ顔キレーなんだから流石にびびっちまう」
諦めたように店主が息を吐き、結局ステラの目からてぷの手が離れることはなかった。それからリヴィウスが幾つかステラの目の色に似ているらしい鉱石を選び、結果としてステラは目を見せていないのに店主からアクセサリーを三つ貰うことになった。
ステラは最後まで目を開けることを許されず、何なら最後はリヴィウスに抱き上げられて移動する羽目にもなってしまった。それには流石に抵抗を示したステラだがてぷの『駄目』の声とリヴィウスの無言の圧力に従う他なく、されるがままだった。
「……はー…おっかねえ。とんだ猛獣使いじゃねえか」
去っていく三人の姿を見ながら店主は肺の中の空気を全部抜くくらい息を吐いた。どっと疲れたと思いながら手の中にある何種類かの鉱石に視線を移した。
そこにあるのは深い青色ばかりだが、どうも最初にちらと見えた人物の目の色とは違う気がする。
確かに深く、冬の海のような青色だ。けれど冷たいばかりではない印象を抱かせるそれらに店主は頬を掻いた。が、すぐにピンと来た。そうだこれでいいんだと自然と口角が上がるのを止められない。
冬の海を思わせる冷たい青。けれどその中にある柔らかさ。
「世界を救った救国の聖女の慈愛の青、これだな」
店主はこうしちゃいられないと慌てて店を畳んだ。向かう先は鉱石が採れるドワーフの国、そこに彼の人生史上最大の金脈が埋まっていると確信した。
「おい」
不満げなリヴィウスの言葉に苦笑していたら不意に目の前が暗くなった。どうやら目を塞がれているらしいがその手の小ささや高い温度からてぷが背後に回って目隠しをしているんだということに気づく。
どうしてこんなにも厳重に守られているんだろうかと疑問に思いつつ、店主の言葉を待っていればやがて諦めたように息を吐く音が聞こえた。
「そんな怖い顔で睨まないでくれよ。……その兄さんの目が噂に聞く聖女様の目の色に近いんじゃねえかって思ったのさ」
聖女、という言葉にステラは目を見開いた。
「聖女様の目は冬の海みたいな青色っていうじゃねえか。それこそ「氷の聖女様」っつーあだ名に恥じないくらいの冷たい色だって噂されててな? 魔王討伐するまでは対して話題にもならなかったのに今じゃ聖女様は世界的スターだ。どんな宝石商も今血眼になって青い宝石を探し回ってんだよ」
……。ステラは今言われた言葉が何一つ理解出来ていなかった。否、できれば忘れてしまいたい固有名詞を出されたことは分かったけれど、それ以外は何も理解出来なかった。聖女が、世界的スター…? 一体全体どうなっているんだと、ステラの頭はシンプルに混乱していた。
「救国の聖女の目の色のペンダント、ネックレス、ブレスレット、ピアス、想像しただけで涎が出るくらいの商売が出来る程度には今アツいんだ」
「……悪趣味だな、死人だぞ」
低い声が軽蔑の色を含んで吐き捨てた。
「商売人なんてそんなもんだぜ、お兄さん。今有名な芸術家も死んでから価値が出たんだ」
目元を隠されているから詳細はわからないけれど、今流れている空気が悪いということは察することが出来た。そしてこれを放置するのは悪手だということも。
「……私はその聖女様ではないので、目を見たとしても全く意味はないと思うのですが」
出来るだけ柔らかく、敵意が無いように話し掛けると店主の意識がリヴィウスからステラに移った。
「本物じゃなくても構わねえんだ。こういうのはな“それっぽい”ってのが大事なんだよ」
「鉱石の質には拘るのに?」
その問いに店主はおかしそうに笑った。
「もちろん素材には拘るさ、絶対にな。それが俺のプライドだ。けど聖女の目の色が本物かどうかは関係無え。違っていてもそれっぽい文句をつけて出せばいい。売れればこっちのモンだからな」
「では、目を見せる代わりにここの商品を三つほどいただけますか?」
「は?」
『ええ⁉︎』
驚いたのは店主ではなくリヴィウスとてぷだった。
「おういいぜ。嫌な気分にさせちまった謝罪も兼ねて持ってってくれ」
「ありがとうございます。てぷ様、大丈夫ですよ」
「駄目だ」
それでも尚食い下がったリヴィウスにステラは暗い視界の中驚いた。
「似た色なら俺がこの中から選んでやる」
「………そんなおっかねえ顔で睨まねえで下さいよ。あんたただでさえ顔キレーなんだから流石にびびっちまう」
諦めたように店主が息を吐き、結局ステラの目からてぷの手が離れることはなかった。それからリヴィウスが幾つかステラの目の色に似ているらしい鉱石を選び、結果としてステラは目を見せていないのに店主からアクセサリーを三つ貰うことになった。
ステラは最後まで目を開けることを許されず、何なら最後はリヴィウスに抱き上げられて移動する羽目にもなってしまった。それには流石に抵抗を示したステラだがてぷの『駄目』の声とリヴィウスの無言の圧力に従う他なく、されるがままだった。
「……はー…おっかねえ。とんだ猛獣使いじゃねえか」
去っていく三人の姿を見ながら店主は肺の中の空気を全部抜くくらい息を吐いた。どっと疲れたと思いながら手の中にある何種類かの鉱石に視線を移した。
そこにあるのは深い青色ばかりだが、どうも最初にちらと見えた人物の目の色とは違う気がする。
確かに深く、冬の海のような青色だ。けれど冷たいばかりではない印象を抱かせるそれらに店主は頬を掻いた。が、すぐにピンと来た。そうだこれでいいんだと自然と口角が上がるのを止められない。
冬の海を思わせる冷たい青。けれどその中にある柔らかさ。
「世界を救った救国の聖女の慈愛の青、これだな」
店主はこうしちゃいられないと慌てて店を畳んだ。向かう先は鉱石が採れるドワーフの国、そこに彼の人生史上最大の金脈が埋まっていると確信した。
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