【完結】元つく二人の珍道中!〜(元)魔王と聖女の全国行脚美食旅〜

白(しろ)

文字の大きさ
57 / 105
第三章 東の国の大きなお風呂編

極彩色の町

 その街並みはやはりアズマヒの国の特徴である木造平家建てだ。高くとも二階までに留められているのだが、ステラが驚いたのはそこではない。何というか、目が痛いのだ。
 どこからどう見ても一般的な建築物の筈なのに屋根の色や外の壁の色がおかしいのである。
 この国の建物の外観は色すらも同系色で統一されている。黒や茶色、灰色が多いのだがこの区画は違う。原色が多いのだ。赤、黄色、緑、たまに金色も混ざっていて落ち着いた色合いに慣れている目には毒と言ってもいい光景だった。

 その光景に驚いているのはリヴィウスやてぷも同じで、なんなら黒と紫しかない世界で千年もの時を生きてきたリヴィウスにとっては目が潰れる程の色彩の暴力なのではないかとすら思う。その証拠にリヴィウスはもうほとんど目を閉じていた。ほんの少しだけ目を開けてはいるが視線は地面に向けられている。ステラはわかるな、と頷いた。
 地面の茶色に感謝する日が来るなんて夢にも思っていなかった。

「昼間だと地味だけど夜になるともっと派手になるんだよ」
『地味⁉︎  これで地味なのか⁉︎』
「そうさ。ここはオーエド一の盛り場、裏タカマガハラなんだから」

 まるで舞台に立つ役者のような大仰な台詞で言い切ったキキョウはばっと両腕を広げた。その瞬間、街全体がギラギラと輝いて見えたのは目の錯覚だったけれどそれでも夜になると本当に“そう”なるんだろうなと、ステラは確信した。

『裏ってなんだ? 表もあるのか?』

 リヴィウスとは違いもう色に慣れたらしいてぷは興味深そうにあちこちを眺めながら問いかけた。キキョウは口許だけ微笑んで人差し指を唇に押し当てた。

「子供にはまぁだ早いね」
『子供じゃないぞ!』
「そうやって言い返してくるのが子供の証さ。心配せずとも大きくなったら自然とわかるよ、ねえ色男?」

 突然話を振られたリヴィウスだったが会話の内容は理解しているのか大した反応をすることもなく「そうだな」と素っ気なく返した。相変わらず目は糸のように細められているけれど、ステラはそのやりとりに少しだけ、ほんの少しだけ胸にもやっとしたものが広がった。

「?」

 それがなんなのかわからず胸に手を当てて首を傾げていれば不意にキキョウの足が止まった。

「ただいま」

 ぴったりと閉じられている木製の扉を開けてキキョウが中へと入る。

「三人ほど客人を連れて来た。奥の間に通すからお茶の用意を頼むよ。ああそれと子供がいるから茶菓子も必要だねえ」

 勝手に入る訳にはいかないなと建物の前で待っていれば中からひょこりとキキョウが顔を出した。緩く唇に弧を描いたままちょいちょい、と白魚のような手でステラたちに手招きをする。

「さあさあ入った入った。ここがあたしの店だよ。あ、色男は一回てぷ坊を下ろした方がいいよ、あんた大きいからぶつかっちまう」

 そう言われて入口を見上げる。確かにステラやてぷなら問題なく潜れる高さだけれどリヴィウスがそのまま通ったら確実に顔を強打してしまう位置だった。

「……この国の建物は低すぎやしないか」

 大人しくてぷを下ろしたリヴィウスは言われた通り頭を下げて店の中に足を踏み入れた。ステラもその後に続くと今まで原色で派手な外観を見てきたせいで落ち着いた色合いの内装がやけに地味に感じられる。

『うう、騒がしいのから落ち着いたのに急に変わると目がしぱしぱするんだぞ~』

 それにはステラも全く同意見だった。平衡感覚が一瞬失われたような気がする。

「あはは、まあすぐに慣れるよ」

 軽く笑い飛ばしたキキョウに苦笑しつつステラたちは板張りの廊下を歩く。時々熱烈な視線を感じるのはきっと気のせいではないのだろうなと思いながらチラリとリヴィウスを見上げると「……」苦虫を五十匹程度同時に噛み潰したような顔をしていた。

「……どうして俺はこんなに見られているんだ」
「……顔が整っているから、ですかね?」
『……ボクも見られてる気がするんだぞ』

 ステラは緩い微笑みを浮かべたまま小さく首を横に振り、励ますようにリヴィウスの背中を撫でた。
 するとステラにも視線が集まった。刺すようなそれだった。
感想 10

あなたにおすすめの小説

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。

不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ
BL
 国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。  フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。  生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!

処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます

ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。 しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。 ——このままじゃ、王太子に処刑される。 前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。 中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。 囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。 ところが動くほど状況は悪化していく。 レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、 カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、 隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。 しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。 周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり—— 自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。 誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う—— ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。

わからないから、教えて ―恋知らずの天才魔術師は秀才教師に執着中

月灯
BL
【本編完結済・番外編更新中】魔術学院の真面目な新米教師・アーサーには秘密がある。かつての同級生、いまは天才魔術師として名を馳せるジルベルトに抱かれていることだ。 ……なぜジルベルトは僕なんかを相手に? 疑問は募るが、ジルベルトに想いを寄せるアーサーは、いまの関係を失いたくないあまり踏み込めずにいた。 しかしこの頃、ジルベルトの様子がどうもおかしいようで……。 気持ちに無自覚な執着攻め×真面目片想い受け イラストはキューさん(@kyu_manase3)に描いていただきました!

ぼくの婚約者を『運命の番』だと言うひとが現れたのですが、婚約者は変わらずぼくを溺愛しています。

夏笆(なつは)
BL
 公爵令息のウォルターは、第一王子アリスターの婚約者。  ふたりの婚約は、ウォルターが生まれた際、3歳だったアリスターが『うぉるがぼくのはんりょだ』と望んだことに起因している。  そうして生まれてすぐアリスターの婚約者となったウォルターも、やがて18歳。  初めての発情期を迎えようかという年齢になった。  これまで、大切にウォルターを慈しみ、その身体を拓いて来たアリスターは、やがて来るその日を心待ちにしている。  しかし、そんな幸せな日々に一石を投じるかのように、アリスターの運命の番を名乗る男爵令息が現れる。  男性しか存在しない、オメガバースの世界です。     改定前のものが、小説家になろうに掲載してあります。 ※蔑視する内容を含みます。

王様お許しください

nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。 気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。 性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。

薄幸な子爵は捻くれて傲慢な公爵に溺愛されて逃げられない

くまだった
BL
アーノルド公爵公子に気に入られようと常に周囲に人がいたが、没落しかけているレイモンドは興味がないようだった。アーノルドはそのことが、面白くなかった。ついにレイモンドが学校を辞めてしまって・・・ 捻くれ傲慢公爵→→→→→貧困薄幸没落子爵 最後のほうに主人公では、ないですが人が亡くなるシーンがあります。 地雷の方はお気をつけください。 ムーンライトさんで、先行投稿しています。 感想いただけたら嬉しいです。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。