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第四章 西の国の救国の聖女編
恋とは厄介なものである
翌日早朝、ステラは困り果てていた。この気持ちがいわゆる恋なのだと自覚した途端今まで自分がリヴィウスにどんな態度で接していたかまるで思い出せなくなってしまったからだ。本当に思い出せないのだ。記憶喪失にあったのかと自分を問いただしたくなる程度には思い出せない。
けれどもあまりにあからさまなのはまずいと、さすがのステラもわかっている。だからこそ自然体にと思うのに、早朝目が覚めた時ステラの目の前にあったのはリヴィウスの健やかな寝顔である。
心臓が爆発するかと思った。大袈裟ではなく、本当に。
そして例に漏れず今日もがっちりと抱き締められていてリヴィウスとの距離はほとんど0だと言ってもいい。これまでならきっと「やれやれ」なんて軽く受け止められていたが、今はそうではない。心臓が信じられない程早鐘を打っているし、やはりリヴィウスの存在が異様に輝いて見える。ステラは驚愕した。
この世の想い人がいる人たち全員こんな感情を抱いて日々過ごしていたのかと。
そして思い出す。かつて勇者たちと旅をしていたとき、途中から仲間になったエルフの少女が勇者リヒトに恋をして毎日猛烈にアピールしていた時のことを。
当時のステラは何も思わなかった。本当に無だった。けれど今ならば彼女の行動とその勇気を全力で讃えることが出来る。彼女は鉄人だったのだ。
「……っ」
だってステラにはあんなアピールは出来ない。エルフの彼女はすごかった。毎日勇者リヒトに想いを伝え、事あるごとに二人きりになれるよう周りに協力を促し、途中あしらわれていた時もあったけれど、魔王城に行く頃には二人の間には何か特別なものが芽生えていたような気がする。
この感情を宿していて尚その行動に出ることが出来ていた彼女を、今ステラは心から尊敬していた。
「……どうした」
「っ、あ、えっと」
そんなことを考えていれば寝起きの掠れた声が聞こえて肩が跳ねる。それが気に食わないとばかりに体に回っていた腕に力が入ってステラは強く抱き締められた。パニックである。
こんな時以前の自分ならどうしていただろうかと考えてそれは意味がないことだと気付く。何故なら気持ちを自覚する前はこれを軽く受け入れられていたからだ。だがしかし今のステラにとってこの状況は非常に心臓に悪いのだ。心臓が煩くて体温が上がる。恥ずかしくてやめて欲しいのにこの状況が嬉しいという矛盾する思考にステラは翻弄されっぱなしだ。
「……ステラ」
「は、はい」
リヴィウスが薄く目を開ける。まだ日の昇らない時間だから室内は暗くはっきりと見えはしないのにそれでも彼がステラのことを見ているのはわかった。ふ、と小さく笑う気配がした。その気配がわかったと思った時にはすでに唇が重なっていて、ステラの目は限界まで見開かれる。
「寝ろ。起きるには早い」
掠れた低音が間近で囁き、逃がさないとばかりにステラの体を抱き締める。それから数秒と経たず健康的な寝息が聞こえた。けれどステラの頭はもう完全に覚醒してしまっている。こんな状況でどうやって寝ればいいんだと理不尽に叩き起こしたくもなってくるが、ステラにはそれが出来ない。
顔の熱も心臓の煩さも変わらないまま、ステラは大人しくリヴィウスの腕の中で落ち着くことにした。どうしたってこの腕から出られないことをステラはもう知っているからだ。
女神リーベに祈りを捧げなければいけないと思うのに、けれどこの腕の中から離れたくないと思ってしまっている。こうやって女神への祈りを後回しにするのは果たして何度目だろうか。聖職者だったものとしてあるまじき行為だけれど、それでもステラはリヴィウスを選んでしまう。
恋とは、人をこんなに変えてしまうものなのか。それとも自分が特別そうなだけなのか。答えの出ない悩みを抱えたままステラは目を閉じた。もう眠れないと思っていたのに、リヴィウスの温もりと香りに包まれたステラはものの数秒で再び眠りに落ちてしまい、起きた時目の前に満足そうなリヴィウスの顔があって叫びそうになったのはまた別の話である。
けれどもあまりにあからさまなのはまずいと、さすがのステラもわかっている。だからこそ自然体にと思うのに、早朝目が覚めた時ステラの目の前にあったのはリヴィウスの健やかな寝顔である。
心臓が爆発するかと思った。大袈裟ではなく、本当に。
そして例に漏れず今日もがっちりと抱き締められていてリヴィウスとの距離はほとんど0だと言ってもいい。これまでならきっと「やれやれ」なんて軽く受け止められていたが、今はそうではない。心臓が信じられない程早鐘を打っているし、やはりリヴィウスの存在が異様に輝いて見える。ステラは驚愕した。
この世の想い人がいる人たち全員こんな感情を抱いて日々過ごしていたのかと。
そして思い出す。かつて勇者たちと旅をしていたとき、途中から仲間になったエルフの少女が勇者リヒトに恋をして毎日猛烈にアピールしていた時のことを。
当時のステラは何も思わなかった。本当に無だった。けれど今ならば彼女の行動とその勇気を全力で讃えることが出来る。彼女は鉄人だったのだ。
「……っ」
だってステラにはあんなアピールは出来ない。エルフの彼女はすごかった。毎日勇者リヒトに想いを伝え、事あるごとに二人きりになれるよう周りに協力を促し、途中あしらわれていた時もあったけれど、魔王城に行く頃には二人の間には何か特別なものが芽生えていたような気がする。
この感情を宿していて尚その行動に出ることが出来ていた彼女を、今ステラは心から尊敬していた。
「……どうした」
「っ、あ、えっと」
そんなことを考えていれば寝起きの掠れた声が聞こえて肩が跳ねる。それが気に食わないとばかりに体に回っていた腕に力が入ってステラは強く抱き締められた。パニックである。
こんな時以前の自分ならどうしていただろうかと考えてそれは意味がないことだと気付く。何故なら気持ちを自覚する前はこれを軽く受け入れられていたからだ。だがしかし今のステラにとってこの状況は非常に心臓に悪いのだ。心臓が煩くて体温が上がる。恥ずかしくてやめて欲しいのにこの状況が嬉しいという矛盾する思考にステラは翻弄されっぱなしだ。
「……ステラ」
「は、はい」
リヴィウスが薄く目を開ける。まだ日の昇らない時間だから室内は暗くはっきりと見えはしないのにそれでも彼がステラのことを見ているのはわかった。ふ、と小さく笑う気配がした。その気配がわかったと思った時にはすでに唇が重なっていて、ステラの目は限界まで見開かれる。
「寝ろ。起きるには早い」
掠れた低音が間近で囁き、逃がさないとばかりにステラの体を抱き締める。それから数秒と経たず健康的な寝息が聞こえた。けれどステラの頭はもう完全に覚醒してしまっている。こんな状況でどうやって寝ればいいんだと理不尽に叩き起こしたくもなってくるが、ステラにはそれが出来ない。
顔の熱も心臓の煩さも変わらないまま、ステラは大人しくリヴィウスの腕の中で落ち着くことにした。どうしたってこの腕から出られないことをステラはもう知っているからだ。
女神リーベに祈りを捧げなければいけないと思うのに、けれどこの腕の中から離れたくないと思ってしまっている。こうやって女神への祈りを後回しにするのは果たして何度目だろうか。聖職者だったものとしてあるまじき行為だけれど、それでもステラはリヴィウスを選んでしまう。
恋とは、人をこんなに変えてしまうものなのか。それとも自分が特別そうなだけなのか。答えの出ない悩みを抱えたままステラは目を閉じた。もう眠れないと思っていたのに、リヴィウスの温もりと香りに包まれたステラはものの数秒で再び眠りに落ちてしまい、起きた時目の前に満足そうなリヴィウスの顔があって叫びそうになったのはまた別の話である。
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