【完結】女装することになりまして〜イケメンと僕の秘密の関係〜

白(しろ)

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斉藤雪穂、17歳

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 斉藤雪穂、17歳。高校2年、男子。
 同性愛者であることを隠し通すと決めて数年が経った。
 早い段階でそれを隠そうと躍起になったおかげで、今でも友人や家族にもバレていない。
 元々活発な性格じゃないから一人でいることを増やしても特に怪しまれることはなかった。それに人間関係よりも趣味を大切にする友人達のおかげで、学生生活も穏やかに過ごすことが出来ている。

 季節は夏、外は雨。夕方の空はどんよりとした黒と灰色で、この季節のこの時間にしては外が暗く感じる。
 少しだけ開けた窓からは雨の降る音が聞こえる。黄ばんだようなカーテンが風に揺れて、たまに窓の隙間から雨粒が入り込んで誰かの席を濡らす。
 風と一緒に入り込んでくる雨の匂いが好きだけど、肌にまとわりつくような湿気と夏の暑さは好きじゃない。だけど雨のお陰で気温は少しマシ。
 湿気はともかくとして、気温はずっとこうだったらいいのに。

「ねーちょっと雨やばいんだけど!」

 昇降口の方から雨の音に紛れて聞こえた高い声に意識が向く。
 その声には聞き覚えがあった。高すぎず低すぎない、それでいてよく響く運動部の女子の声だ。
 距離があるから声は途切れ途切れだが、それだけで誰かと会話しているのがわかる。
 友人かな、それとも部活の後輩かな。今日は雨だからきっと部活も早く終わったんだろうな。

 そんなことを思っていたら、正門に向かって一つの透明な傘が歩いてくのが見えた。
 透明の傘の下に見える人影は二つ。男女の、いわゆる相合い傘というやつ。
 髪が触れる距離なのに男子の肩は少しだけ傘からはみ出ていて、濡れているのがわかる。
 雨のせいもあるのだろうか、二人はゆっくりとした足取りで進んでいく。
 こんな雨なんだから早く帰りたいはずなのに、二人はあえてゆっくり歩くのだ。

 ──ああ、うらやましいな。

 僕もそんな風に愛されたい。誰の目も憚らず相合い傘をして歩いてみたい。そんな親密な距離で、足が濡れることも厭わずに下らない話をしながら帰ってみたい。
 そういうしあわせを、感じてみたい。
 だけどそれが無理だなんてことは僕が一番よく知っている。
 だけどたまに、どうしようもなく、欲しくなる時がある。

「……僕もああなりたい」
「好きなやついるの?」
「⁉︎」

 独り言を拾われたことに目を見開いて声のした方へと勢いよく顔を向ける。そこにいた人物に、僕は今度こそ絶句するのだった。

「あーあの子、可愛いよね。彼氏出来たってなった時失恋したやつ多かった気がする」

 なんの躊躇もなく僕の座っている席を追い越して窓際に行った男は、まだ正門を抜けてなかった二人組を見て納得したように頷いた。そのあと僕に意識を向けたその人に、喉がきゅっと狭くなるのを感じた。
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