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第三章
元王子、皿洗いをする
「ゴードン、おはよう」
「おー、おはようフィル様。それとエルダー様。もう晩飯のことは聞きましたか?」
「先程リュシアン様から。今日はどんなメニューを?」
菜園に着くともう仕事をしていたらしいゴードンが、顔に土を付けたままこちらにやってきた。
「悩んでんだよなぁ。そろそろ半分くらいは食えそうだし、やっぱここらで原点回帰ってのもいいんじゃねえかと思うんですよ」
「つまり?」
「あの揚げた料理を出すってのはどうですか? 今のリュシアン様ならもしかしたらもしかするかもしれねえし」
初めてゴードンと一緒に作った料理が脳裏に浮かぶ。確かにあの料理は初めてリュシアンに出したものだし、俺も思い入れがある。
「ふむ」
エルダーが顎に手を当てて思案する。
「問題ないでしょう。ですがいつもの食事も作っておくこと」
「そりゃもちろん」
ゴードンが笑顔で頷き、その話は一旦区切りがついた。
それから俺はいつものように腕捲りをして菜園の世話をしていたのだが、ふと小さな違和感に気が付く。
「今日はリオルがいないんだな?」
「今日はラナと勉強だと」
「勉強? リオルは十分賢いと思うが」
「そうなんだけどな。色々学ばねえと駄目なのよ」
ありがたいことにリオルは俺のことを好いてくれているらしい。暇さえあれば俺のところに来て話したり遊んだりとしていて、朝なんかはほとんど毎日菜園で過ごしている。
それなのに今日は来れないらしい。
「フィル様だって王都にいた頃は勉強ばっかだっただろ~?」
「確かにそうだが、俺は勉強が嫌いだったからな。当然の措置だった」
「はははっ、不真面目な王子様もいたもんだ」
「だから追い出されたんだけどな」
そこまで言ってゴードンと顔を見合わせ、どちらともなく笑う。
王子だった頃は考えられない言葉の応酬だが、こんな気さくなやりとりが自分らしくいられて楽しいと思う。
少し離れた場所でエルダーが額を押さえているきがしないでもないが、それは見えないことにした。
「そういえばなフィル様、今度東の方から珍しい食材が卸されるらしいんだよ」
「東、アサヒの国か」
「そうそう、そんな名前だ。で、その食材のいくつかを貰うようになっててな、また一緒にメニューを考えて欲しいんだよ」
「それは構わないが、どんな物があるんだ?」
「あー、なんて言ったっけな。コメ? とかいうやつが来るらしい。東の方ではそれが主食なんだと」
その言葉を聞いた瞬間、畑中陽一の記憶で見た光景が浮かんだ。
コメ、多分それは米だ。彼が主食としていたものに違いないと俺は確信した。それならば、行き詰まり気味だったメニューの開発も進む気がすると頷く。
「わかった、協力する」
「そう言ってくれると思ったぜ。妥当リュシアン様だな」
拳を出され、それに合わせて俺も拳を軽くぶつける。
「倒してどうするのですか」
疲労が滲んだエルダーの声が聞こえてゴードンが笑う。
「ものの例えですって」
つられて俺も笑い、また作業に戻る。
朝の作業が終わり、昼はゴードンと一緒にメニューを考える。もう厨房にも入れるようになったから、時々ゴードンは俺に料理も教えてくれていた。
けれどセンスが壊滅的らしく、優しく肩を叩かれて首を横に振られた。
「フィル様は皿洗いとかするか」
「なりません。なりませんぞフィリアス様」
「じゃあメニュー考えような」
「それならいいでしょう」
正直、畑中陽一の記憶があるなら料理も簡単にこなせると思っていたが、認識が甘かったらしい。それに若干のショックを覚えつつ、俺は大人しくリュシアンの食べられそうなメニューを考える。
そうしていたら時間はあっという間に過ぎて、気付けばリュシアンと食事をする時間になっていた。
「おー、おはようフィル様。それとエルダー様。もう晩飯のことは聞きましたか?」
「先程リュシアン様から。今日はどんなメニューを?」
菜園に着くともう仕事をしていたらしいゴードンが、顔に土を付けたままこちらにやってきた。
「悩んでんだよなぁ。そろそろ半分くらいは食えそうだし、やっぱここらで原点回帰ってのもいいんじゃねえかと思うんですよ」
「つまり?」
「あの揚げた料理を出すってのはどうですか? 今のリュシアン様ならもしかしたらもしかするかもしれねえし」
初めてゴードンと一緒に作った料理が脳裏に浮かぶ。確かにあの料理は初めてリュシアンに出したものだし、俺も思い入れがある。
「ふむ」
エルダーが顎に手を当てて思案する。
「問題ないでしょう。ですがいつもの食事も作っておくこと」
「そりゃもちろん」
ゴードンが笑顔で頷き、その話は一旦区切りがついた。
それから俺はいつものように腕捲りをして菜園の世話をしていたのだが、ふと小さな違和感に気が付く。
「今日はリオルがいないんだな?」
「今日はラナと勉強だと」
「勉強? リオルは十分賢いと思うが」
「そうなんだけどな。色々学ばねえと駄目なのよ」
ありがたいことにリオルは俺のことを好いてくれているらしい。暇さえあれば俺のところに来て話したり遊んだりとしていて、朝なんかはほとんど毎日菜園で過ごしている。
それなのに今日は来れないらしい。
「フィル様だって王都にいた頃は勉強ばっかだっただろ~?」
「確かにそうだが、俺は勉強が嫌いだったからな。当然の措置だった」
「はははっ、不真面目な王子様もいたもんだ」
「だから追い出されたんだけどな」
そこまで言ってゴードンと顔を見合わせ、どちらともなく笑う。
王子だった頃は考えられない言葉の応酬だが、こんな気さくなやりとりが自分らしくいられて楽しいと思う。
少し離れた場所でエルダーが額を押さえているきがしないでもないが、それは見えないことにした。
「そういえばなフィル様、今度東の方から珍しい食材が卸されるらしいんだよ」
「東、アサヒの国か」
「そうそう、そんな名前だ。で、その食材のいくつかを貰うようになっててな、また一緒にメニューを考えて欲しいんだよ」
「それは構わないが、どんな物があるんだ?」
「あー、なんて言ったっけな。コメ? とかいうやつが来るらしい。東の方ではそれが主食なんだと」
その言葉を聞いた瞬間、畑中陽一の記憶で見た光景が浮かんだ。
コメ、多分それは米だ。彼が主食としていたものに違いないと俺は確信した。それならば、行き詰まり気味だったメニューの開発も進む気がすると頷く。
「わかった、協力する」
「そう言ってくれると思ったぜ。妥当リュシアン様だな」
拳を出され、それに合わせて俺も拳を軽くぶつける。
「倒してどうするのですか」
疲労が滲んだエルダーの声が聞こえてゴードンが笑う。
「ものの例えですって」
つられて俺も笑い、また作業に戻る。
朝の作業が終わり、昼はゴードンと一緒にメニューを考える。もう厨房にも入れるようになったから、時々ゴードンは俺に料理も教えてくれていた。
けれどセンスが壊滅的らしく、優しく肩を叩かれて首を横に振られた。
「フィル様は皿洗いとかするか」
「なりません。なりませんぞフィリアス様」
「じゃあメニュー考えような」
「それならいいでしょう」
正直、畑中陽一の記憶があるなら料理も簡単にこなせると思っていたが、認識が甘かったらしい。それに若干のショックを覚えつつ、俺は大人しくリュシアンの食べられそうなメニューを考える。
そうしていたら時間はあっという間に過ぎて、気付けばリュシアンと食事をする時間になっていた。
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