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第三章
そして握る
「いやクソ熱いぞこれ!」
「そこをなんとか」
「手がズル剥けになっちまうよ!」
炊き立ての米を前にゴードンが苦戦していた。
俺がやりたかったもの、それはこの米を握ったものだ。どうやらそれはおにぎりと呼ぶらしい。
「紙にはなんて⁉︎」
「手を清潔にし、塩をまぶし、あとは気合いで握るべし。これおにぎりなり。……そう書かれておりますな」
「根性でこのクソ熱いの耐えてんのか。アサヒの国の料理人すげえな」
呆然と呟くゴードンを見て、好奇心が湧いてくる。
もしかしてと思いながらそろそろと鍋に近付くと、ゴードンから厳しい声が飛んできた。
「なりません」
「エルダー」
「火傷を負ってしまいます」
「ダメだったら諦めるから」
「私がリュシアン様に怒られてしまいます」
「俺も一緒に謝るから」
「……」
その数秒後、俺は腕捲りをして鍋の前に立っていた。
火傷を考慮して事前に手はしっかりと冷やしたし、諸々の準備は万端だ。
いざ、そう気合いを入れて手のひらに米を乗せて、熱さを感じる前に握り込む。畑中陽一の記憶を思い出せ、彼はどうやってこれを作っていた。
確か時々米を跳ねさせていた。きっと熱を逃がすためだ。そうやっていけばなんとかできるかもしれない。
頭の中でそう思いながら必死に手を動かす。
そして出来上がったものを皿に乗せた時、ゴードンに肩を叩かれた。
「……要領はわかった。フィル様は休んでな」
「どうして俺はこんなにも……」
そこには形を成していない米があった。固まらない。なぜだと項垂れていると、エルダーに手を洗えと促される。肩を落としたまま手を洗い、すぐさま軟膏を塗られていると、ゴードンの声がした。
「お! こりゃいいんじゃねえか⁉︎」
エルダーと一緒に皿を見に行くと、そこにはきちんと形になっているものがあった。
少し歪だが、ちゃんと三角になっている。
「すごいなゴードン」
「天才だからな」
「しかしこれはどうやって食べるのですか?」
「手だ」
「なるほど、パンと同じですか」
「そういやフィル様はどうしてこれが作りたかったんだ?」
それを聞かれ、一瞬言葉に詰まった。
ゴードンとエルダーの視線が集まり、少しだけ居心地が悪い。
けれどここで黙るのものなと思い、小さく口を開いた。
「……リュシアンに食べてほしいと思って」
「ほお」
「そりゃまあわかるけどよ、その為に集まってもらってるしな」
ごもっともだ。ゴードンの言葉に頷きつつ、言葉を続ける。
「その、リュシアンは忙しいだろう? だから仕事の合間にでも、片手で食べられるものがあればと思ったんだ。食事を疎かにしがちという話も聞いているし」
「なるほどなぁ。そりゃ確かに一理ある。でもリュシアン様が全く知らねえ食材の料理を食ってくれるかどうか」
「そこをなんとか」
「手がズル剥けになっちまうよ!」
炊き立ての米を前にゴードンが苦戦していた。
俺がやりたかったもの、それはこの米を握ったものだ。どうやらそれはおにぎりと呼ぶらしい。
「紙にはなんて⁉︎」
「手を清潔にし、塩をまぶし、あとは気合いで握るべし。これおにぎりなり。……そう書かれておりますな」
「根性でこのクソ熱いの耐えてんのか。アサヒの国の料理人すげえな」
呆然と呟くゴードンを見て、好奇心が湧いてくる。
もしかしてと思いながらそろそろと鍋に近付くと、ゴードンから厳しい声が飛んできた。
「なりません」
「エルダー」
「火傷を負ってしまいます」
「ダメだったら諦めるから」
「私がリュシアン様に怒られてしまいます」
「俺も一緒に謝るから」
「……」
その数秒後、俺は腕捲りをして鍋の前に立っていた。
火傷を考慮して事前に手はしっかりと冷やしたし、諸々の準備は万端だ。
いざ、そう気合いを入れて手のひらに米を乗せて、熱さを感じる前に握り込む。畑中陽一の記憶を思い出せ、彼はどうやってこれを作っていた。
確か時々米を跳ねさせていた。きっと熱を逃がすためだ。そうやっていけばなんとかできるかもしれない。
頭の中でそう思いながら必死に手を動かす。
そして出来上がったものを皿に乗せた時、ゴードンに肩を叩かれた。
「……要領はわかった。フィル様は休んでな」
「どうして俺はこんなにも……」
そこには形を成していない米があった。固まらない。なぜだと項垂れていると、エルダーに手を洗えと促される。肩を落としたまま手を洗い、すぐさま軟膏を塗られていると、ゴードンの声がした。
「お! こりゃいいんじゃねえか⁉︎」
エルダーと一緒に皿を見に行くと、そこにはきちんと形になっているものがあった。
少し歪だが、ちゃんと三角になっている。
「すごいなゴードン」
「天才だからな」
「しかしこれはどうやって食べるのですか?」
「手だ」
「なるほど、パンと同じですか」
「そういやフィル様はどうしてこれが作りたかったんだ?」
それを聞かれ、一瞬言葉に詰まった。
ゴードンとエルダーの視線が集まり、少しだけ居心地が悪い。
けれどここで黙るのものなと思い、小さく口を開いた。
「……リュシアンに食べてほしいと思って」
「ほお」
「そりゃまあわかるけどよ、その為に集まってもらってるしな」
ごもっともだ。ゴードンの言葉に頷きつつ、言葉を続ける。
「その、リュシアンは忙しいだろう? だから仕事の合間にでも、片手で食べられるものがあればと思ったんだ。食事を疎かにしがちという話も聞いているし」
「なるほどなぁ。そりゃ確かに一理ある。でもリュシアン様が全く知らねえ食材の料理を食ってくれるかどうか」
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