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第三章
エルダーは影の権力者?
正論だと項垂れる。確かにおにぎりはリュシアンが食べられるどの料理にも似ていない。元々食事に抵抗がある人には難しいか。
「つまり、お夜食ですな」
エルダーの声に顔を上げる。
「ふむふむ。では本日の夜にでもお持ちしてみましょう」
「え、ちょ、エルダー様?」
「何事も挑戦ですぞ、ゴードン。それにここで攻め手を緩めるのはナンセンスです。さて、その為にもフィリアス様にもお手伝い願いたいのですが、よろしいですかな?」
「手伝い?」
「はい」
エルダーが微笑みながら頷いた。
俺は知っている。エルダーがこういう顔をしている時は大抵大変なことになるとわかっている。
けれど同時に逆らえないことも知っている。いつもいつの間にか流れに乗せられているのだ。そこも含め、フォークナー家は優秀だと思う。
外はまだ明るい。時間が来るまで俺たちは厨房でメニューの開発に勤しんだ。
楽しいと思っていると時間はあっという間に過ぎていく。
今日も途中からリオルが厨房にやってきて、一緒におにぎりを作ったり見慣れない干されたフルーツを食べたりした。
けれどリオルから食事会の言葉が出てこなかったことから、リュシアンがまだ伝えていないことを悟って、それがなんだかおかしかった。
あれだけ完璧だと思えるリュシアンも弟の前では格好よくありたいという普通の兄なんだなと思って、親近感すら覚える。
それを館に戻ってエルダーに伝えると、彼は笑って頷いた。
「リュシアン様は確かに器用な方ですが、不器用なところの方が多いのですよ。特に人に対しては」
「そうか? 俺にはそんな風に見えないが」
「公爵家のご嫡男であらせられますからな。隙など見せられません」
耳の痛い話だと苦笑する。
確かにリュシアンからはいつでも気迫のようなものを感じる。貴族というものは、という矜持を持っているからだろう。それに比べてかつての俺は、ただ王子であることに胡座をかいていただけだった。
「さてフィリアス様、本日の夜にまた本邸に向かいますぞ」
「え?」
「リュシアン様にお夜食をお届けに行かねば」
「待て、それはエルダーやゴードンからじゃダメなのか」
はて、とエルダーが首を傾げた。
「私共でなければならないという理由もございませんな」
「それに俺は監視対象だし、届けに行くのは執務室だろう? 俺が入っていい場所じゃない」
「お部屋のことについてはご心配には及びません。書類などは事前に私が整理しておきましょう」
俺は悟った。こうなったエルダーは話を聞かない。
たまに思うのだ。この屋敷の権力者はもしかしてエルダーなのではないかと。それくらいの暴挙をこの老人は普通にするし、なぜかリュシアンも許している。
「それではまた夜に。失礼します」
「あ、ちょっと待ってくれエルダー!」
お手本のような仕草で部屋をあとにしたエルダーを見て、がくっと肩を落とす。けれど、少し嬉しいと思っている自分がいるのも確かだった。
前はリュシアンに会うというだけで震えていたのに、今ではこの変わりようだ。自分の変化に驚きつつ、けれどやっぱり緊張もする。
それでもリュシアンの元にいかないという選択肢は選ばないのだから、やはり俺は随分と変わったのだろう。
まだリュシアンが帰ってくるまでには時間がある。その間は本でも読んで過ごそうと、俺は書斎に行くのだった。
「つまり、お夜食ですな」
エルダーの声に顔を上げる。
「ふむふむ。では本日の夜にでもお持ちしてみましょう」
「え、ちょ、エルダー様?」
「何事も挑戦ですぞ、ゴードン。それにここで攻め手を緩めるのはナンセンスです。さて、その為にもフィリアス様にもお手伝い願いたいのですが、よろしいですかな?」
「手伝い?」
「はい」
エルダーが微笑みながら頷いた。
俺は知っている。エルダーがこういう顔をしている時は大抵大変なことになるとわかっている。
けれど同時に逆らえないことも知っている。いつもいつの間にか流れに乗せられているのだ。そこも含め、フォークナー家は優秀だと思う。
外はまだ明るい。時間が来るまで俺たちは厨房でメニューの開発に勤しんだ。
楽しいと思っていると時間はあっという間に過ぎていく。
今日も途中からリオルが厨房にやってきて、一緒におにぎりを作ったり見慣れない干されたフルーツを食べたりした。
けれどリオルから食事会の言葉が出てこなかったことから、リュシアンがまだ伝えていないことを悟って、それがなんだかおかしかった。
あれだけ完璧だと思えるリュシアンも弟の前では格好よくありたいという普通の兄なんだなと思って、親近感すら覚える。
それを館に戻ってエルダーに伝えると、彼は笑って頷いた。
「リュシアン様は確かに器用な方ですが、不器用なところの方が多いのですよ。特に人に対しては」
「そうか? 俺にはそんな風に見えないが」
「公爵家のご嫡男であらせられますからな。隙など見せられません」
耳の痛い話だと苦笑する。
確かにリュシアンからはいつでも気迫のようなものを感じる。貴族というものは、という矜持を持っているからだろう。それに比べてかつての俺は、ただ王子であることに胡座をかいていただけだった。
「さてフィリアス様、本日の夜にまた本邸に向かいますぞ」
「え?」
「リュシアン様にお夜食をお届けに行かねば」
「待て、それはエルダーやゴードンからじゃダメなのか」
はて、とエルダーが首を傾げた。
「私共でなければならないという理由もございませんな」
「それに俺は監視対象だし、届けに行くのは執務室だろう? 俺が入っていい場所じゃない」
「お部屋のことについてはご心配には及びません。書類などは事前に私が整理しておきましょう」
俺は悟った。こうなったエルダーは話を聞かない。
たまに思うのだ。この屋敷の権力者はもしかしてエルダーなのではないかと。それくらいの暴挙をこの老人は普通にするし、なぜかリュシアンも許している。
「それではまた夜に。失礼します」
「あ、ちょっと待ってくれエルダー!」
お手本のような仕草で部屋をあとにしたエルダーを見て、がくっと肩を落とす。けれど、少し嬉しいと思っている自分がいるのも確かだった。
前はリュシアンに会うというだけで震えていたのに、今ではこの変わりようだ。自分の変化に驚きつつ、けれどやっぱり緊張もする。
それでもリュシアンの元にいかないという選択肢は選ばないのだから、やはり俺は随分と変わったのだろう。
まだリュシアンが帰ってくるまでには時間がある。その間は本でも読んで過ごそうと、俺は書斎に行くのだった。
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